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台湾への武力行使が最悪のシナリオではない

戦わずして台湾を奪うのが中国の狙い


 多くの人が台湾の最悪のシナリオついて考えている。ある人は中国による武力行使が現実に行われるという前提で、考えているし、実際にそれを想定して国際政治も、軍事も動いている。しかし、古来『孫氏の兵法』にある通り、戦わずして勝つのが理想と言える。

 武力行使は現代の国際社会においてかなりリスクが高い。自国のなかには外国企業も多く存在しており、それらが自国の企業にはない雇用を生み出している。安易に対立をしてしまうと、その企業の存在自体が消え、自国民は解雇され、失業者となり、反体制分子へと転換しかねない。できれば、武力行使を伴わずに台湾を手に入れたいのが中国の狙いである。

飽きられている民進党と国民党 


 台湾の二大政党制は陰りが見えている。垂秀夫前駐中国特命全権大使は述べている。


台湾の政界はダイナミックに変動する。突然登場して旋風を巻き起こす政治家が多い。民進党の陳水扁政権が二〇〇〇年と四年の総統選で連続勝利した時には、二度と国民党政権は生まれないと言われたほどの勢いだった。ところが二〇〇八年、国民党の馬英九政権があっさりと誕生した。 そして今や、民進党や国民党といった既存政党が求心力を失い、第三勢力が人気を集めている。次の二〇二八年の総統選がどうなるか、予想はできない。
先の総統選で頼清徳の得票率は四割にとどまった。これは蔡英文の二回の総統選挙の得票率が六割近くだったことからすれば、とても深刻な事態である。しかも国会に当たる立法院で民進党は過半数割れし、少数与党になってしまった。立法院院長 (国会議長)には、親中派で前出の韓国瑜が選ばれ、実際に政権に対する立法院の監督権限を強化する法改正を可決するなど、頼清徳は厳しい政権運営を迫られている。」

『日中外交秘録垂秀夫駐中国大使の闘い』(文藝春秋)以下も同じ

 日本の保守派は民進党が対中国独立勢力なので、好意的に見ている人も多いが、LGBTに最も寛容であり、同政権は二〇一九年に同性による結婚も認めている。エネルギー政策も原発反対である。はっきり言ってかなりリベラル政党である。しかし多くの国民は親中派の国民党じゃいやなので、やむなく支持しているという状況にあるのではないだろうか。この二つの政党がもう飽きられているのは十分に理解できることであり、第三極が求められている現状である。

「台湾政界の第三勢力である民衆党の柯文哲主席は汚職疑惑がくすぶるが、二〇二四年の総統選では、既存の二大政党に不満を持つ若者の絶大な支持を集めた。民衆党は民進党に比べれば中国に融和的であり、蔣介石のひ孫で国民党のホープである蒋万安も中国との対話重視を掲げている。」

同上
蒋万安

 エリートで毛並みの良い蒋万安は将来的には、大陸の支援も受けて総統になる可能性が高い。馬英九総統が受け入れていた「一つの中国を前提」とする92年合意に回帰し(独立志向の強い民進党政権は否定)、両岸政策である「3つのノー」(統一しない、独立しない、武力を用いない)に回帰するだろう。

最悪のシナリオが中台平和的話し合いの意味


垂前大使は警鐘を鳴らす。

「台湾の民意は流動的だ。既存政党に対する反発は一段と強まっており、有権者の間では、自分の生活さえ向上すれば、総統選で争点となる「独立」か「統一」かには関心を持たない層が着実に増えている。
 確実なのは、習近平が「平和的統一」に向けてさらに攻勢を強めてくることだ。中国当局は、偽情報などを台湾側に流して自分たちに有利な世論環境をつくろうと認知戦を仕掛けている。中国から見て、民意が揺れ動いている状況であれば、攻め込みやすいのは事実である。
先に、ポピュリスト政治家が一時的な追い風に乗って台湾総統に当選し、「平和的アグリーメント」にサインしてしまうというシナリオを紹介したが、もしその悪夢が現実になった時、日本はどうすればよいのか?」

同上

 民主主義社会というのは反面非常に脆弱なものでもある。ポピュリズムに陥ったら、最悪の政体になろう。それはタレント議員や無能で知名度だけある2世議員がウヨウヨ徘徊している日本の現状を見ればわかることだ。そうした民主主義の欠陥をよく知っているのは中国なのである。
 そのような状況につけ込み、武力でやるぞやるぞぶん殴ってやるとこぶしを振り上げて、台湾国民が恐れおののいて参った降参だ、殴らないでください、じゃあ話し合いをしようか。これが狙いである。しかしその可能性は十分にある。
 世界の最先端半導体を7割も作っている国台湾と、その半導体製造装置のシェア世界3割を誇る日本。補完関係にあり、もし中国が台湾を飲み込んだとしたら、世界経済の覇権は完全に彼らの手の中にということになる。アメリカも無関心でいられるはずがないが、基本的にアメリカは国内志向である。

Make America Great Again

 ここには、色濃く自分たちの国内問題の関心に集中したい意思が現れている。もめごとには極力関わりたくはない。しかし、世界最先端の半導体技術を奪われたらそうも言えなくなるだろう。問題なのはすでに巻き込まれているのに、当事者意識のないアメリカである。台湾有事で動かなかったら、沖縄の極東最大の空軍基地の嘉手納もなにも要らないということになる。アメリカのメンツも丸つぶれ、中国が事実上の覇者となる。

 そうさせないためには、日本の台湾への関与の姿勢を示し、アメリカを道連れにする姿勢で、台湾を孤児にさせないこと、中国に圧力をかけ続けることしかないだろう。



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