【随筆】ひらりはらり散る花びらに
散る花びら、と聞けば、
ほとんどの人が桜を思い浮かべるのだろう。
ひらり。
はらり。
風に舞う花びら。
だけど、僕が知る限り、
花はそんな散り方ばかりじゃない。
ぽとり。
花ごと落ちる花も、
この世界にはたくさんある。
春が過ぎるころ、
僕は見上げることをやめる。
その代わり、
足元を見るようになる。
舗道の隅や公園の芝生に、
昨日まで枝先で咲いていた花が、
ぽとり、ぽとりと横たわっている。
誰かに惜しまれることもなく。
誰かに写真を撮られることもなく。
静かに、
次の季節へ場所を譲っている。
届きそうで届かない思いは、
風に乗って舞う花びらだけじゃない。
言葉にならなかった想いも、
伝えられなかった「ありがとう」も、
案外こんなふうに、
ぽとりと胸の中へ落ちていくのかもしれない。
夏になると、
沖縄の海岸線ではユウナの花が咲く。
朝の光を浴びた花は、
鮮やかな黄色をしている。
それが夕方になるにつれて、
少しずつ橙色へと染まっていく。
まるで、
一日の終わりを知っているかのように。
そして、
その色をまとったまま、
ぽとり、と落ちる。
僕には、
あの橙色が夕陽の色に見える。
