見出し画像

【エッセイ】『堪忍の袋と地雷と、キッチンと』第19章:苦悩・不眠・そして再び~転んでもただは起きぬぞ、戦はこれからじゃ!!~

「ただいま地獄より生還…いや、未遂中!」な僕ですが、ある意味“家庭版・桶狭間の戦い”のような日々が続いておりました。
四女が生まれてから5年。
もうね、懐にカイロ入れてるレベルでベッタリ一緒に過ごしてたわけですよ。
それが、出張から帰ったら、
いない。
え?カイロ?どこ?って。
いや違う、四女がいない。部屋が静かすぎる。
凪(なぎ)。完全な凪。
僕は二度、新潟へ“奪還作戦”を決行。
誘導された先は、桶狭間ならぬ「義叔父の居間」。
能面のような義母、狸面(たぬきづら)の義叔父たちに包囲されていました。
ああ、戦国時代なら馬ごと討たれてる。
でも、彼女と四女ちゃんの姿は、そこにはなかった。
敵陣の奥の奥に、かくまわれている模様だった。
僕「家庭の中で起きていたことは、家族しか理解できないですよ。
とにかく彼女と話をさせてください。」
義叔父「それはできない。オメさんは信用できない。」
「二人はこのまま新潟に住むって言っている。」
「その方が、ここの跡目のことも心配がなくなるだろう? だから、このまま離婚しろ!!」
…なるほどな、って思った。
この人たち、みんなグルになって仕込んでたんだ。
僕「もう我慢できません。言っていませんでしたが、彼女、不倫していたんですよ。」
義母「寂しかったんだこってさ~。」
僕「はっ? 寂しかった? 僕が寂しくさせていたって言ってるんですか?」
義叔父「何つべこべ言ってるんだ。オメさんが悪いに決まってる。」
「これ以上言うんだったら、オメさんの会社つぶすくらいできるんだぞ!!」
…義叔父は政治団体の本部で定年まで勤めあげた猛者。〇派。
僕の脳内では瞬時に【熱中症警戒アラート】が作動。
「これ以上の加熱、危険!」と全神経が叫んでいました。
もう交渉は無意味、いや危険。リスクしかないと判断し、僕は戦線離脱。
帰りのレンタカーを泣きながら運転する僕。
胸に残ったのは「会社をつぶしてやる」という一言。
「この人たち、本気でやりかねない…」
弱っていた僕の心、その隙を突かれた感覚がありました。
以降しばらくのあいだ、
事務所の前を街宣車が通るんじゃないか…と、
毎朝ソワソワする自分がいたのです。
そんなある日。
彼女から一通の封書が届いた。
恐る恐る開けてみると、中には署名済みの離婚届。
しかも、親権の欄には、はっきりと「彼女」の名前が記されていた。

姉妹の逆襲(という名の愛)
返り討ちにされてから、僕の心は日に日に弱っていった。
「家の中、静かだな」
「これはこれで、いいのかもしれん」
…いやいや、父としてどうなのよ!とセルフツッコミ。
夜は眠れず、酒に頼れば翌朝に響く。
うつらうつらと朝を迎え、重い体にムチ打ちながら日々を過ごしていました。
そんなある晩。
残った娘たちが真正面からこう言ったんです。
「お父さん、このままでいいの?」
「四女ちゃん、泣いてるよ。毎日だよ!」
「ぜったい泣いてるよ。」
「お父さん、しっかりしてよ。」
痛恨の一撃。
ゲンノウ(大工道具)で後頭部ガツン!級のダメージ。
僕、白目むきそうになった。
…もう、決めた。

心療内科、そして裁判という戦
翌日、意を決して心療内科へ。
カウンセラーの「どうしましたか?」の問診に、
「実は、ねむれな、っひっく、くてえええぇ」と、号泣スタート。
嗚咽スタッカート。
この人生で一番“目から水分出た日”、
それがこの日です。
泣きながら、もう一人の僕が冷静にこう呟いていました。
「俺って、こんなに泣けるんだ~」
泣き終えたあと、カウンセラーが優しく微笑んでこう言いました。
「決まりましたね?」
「え?何が?」
「戦う準備が、です」
(うまいこと言うな、この人。泣きながらの僕の表情、しっかり見ていたんだな~)
こうして沖縄のパパ、裁判デビュー。
仕事の合間をぬって県立図書館へ通い判例集を読み漁り、
夜な夜な裁判資料を打ち込みながら策を練る日々。
男親が親権・監護権を取るのはハードルが高かった。
でも、とにかくこれは、負けられない戦(いくさ)。
「親権って、戦国の城攻めと同じやん」
そこから僕の頭の中では、“長篠の戦法”が描かれ始めたのです。

そして、禁じ手
裁判が近づいていたある日。
担当弁護士(新潟在)さんと初めて対面打ち合わせをすることになった。
…のだが。
約束の時間より早く新潟駅に着いた僕は、“やらかす”。
駅でレンタカーを調達し、向かったのは四女が通い始めた保育園。
アポなし突撃。完全に俺アウト。
駐車場で待ち伏せ。
現れた彼女と四女。思わず感情で動いてしまった。
無理やり奪還を試みる僕。
もう、絶対にやっちゃダメな禁じ手。
その時、四女が震える声で叫んだ。
「お父さん、ごめんなさい!」
…我に返る。
小さな肩が僕に語っていた。
(もう、やめて)
彼女は泣き叫びながら四女を抱きしめ園の中へ。
なぜか助手席から義母の声。
「あなた、何やってんのよ。誘拐犯!!」
僕はただ、保育園の事務所に駆け込んでいく彼女の後ろ姿を、呆然と見ているだけだった。
心の声…「俺って、人間だなぁ~」
少しずつ我に返り、保育園の事務室をノック。
園長先生が出てきて静かに言う。
「いったい何事ですか?」
もう後の祭り。園内の空気がピリッと張り詰め、
そこにいる全員が、僕を“敵”として見ていた。
白い視線が四方八方から突き刺さる。槍でグサグサ刺されるような感覚。
けれど園長先生は僕を応接室に通し、話を聴いてくれた。
信じてくれるとは思わなかったけれど、謝罪を込めて、これまでの経緯を正直に伝えた。
園長先生はこう言った。
「家庭の中で起きていたことは、私たちには分かりません。
ただ一つ言えることは、四女ちゃんを守ることが、私の仕事なんです。」
僕、撃沈。


章あとがき:悲しみにも、笑える余白はある
「人間、いちばんつらいときほど、いちばん笑っていたい」
そんな強がりを、僕はこの章で、身にしみて学びました。
涙のなかで笑うのは、芸人じゃなくてもできます。
四女の「ごめんなさい」が、
いちばん痛くて、いちばんやさしい刃でした。
だけど僕は、あの瞬間から立ち上がったんです。
武士なら、倒れたら草むらで体勢立て直す。
パパなら、倒れたら台所で米とぐ。
後悔先に立たず。って本当だとつくづく思った。
そんな僕を支えてくれた戦国武将の一言。
「一本じゃポキッといくけど、三本ならバキッとはいかない」
毛利元就(子育て中のパパモード)「三本の矢」
意味?そりゃもう、チーム戦ですよ、人生は。
ひとりで抱えてたら、とっくにポキっといってた。
でも、うちには女子矢三本。
それぞれ違う方向を向いてても、
気づいたら、バチンと構えて僕を支えてくれてる。
ありがとう、我が家の「三矢姫(みつやひめ)」たち。
(いやもう、ほんと、息子いなくても武将になれそうですわ)
たとえ、心が折れかけても、
この娘たちが折らせてくれない。
それが、しんどくて、愛おしい。
さあ、いざ、次の戦へ!
米を研ぎながら、矢を束ねながら。


巻末レシピ:冷蔵庫の残党で、簡単串焼き
~槍で刺されても立ち直る。“串”とは、すべてを貫く意志のカタチ~
【冷蔵庫一掃!なんでも串焼き】
材料例:
ウインナー・ちくわ・ピーマン・玉ねぎ・パプリカ・ししとう・厚揚げ・冷凍えび・ 
 しいたけ・ベーコン…など、冷蔵庫の“半端もの”たち
竹串(100均のでOK)
サラダ油 or ごま油、塩、こしょう、焼肉のたれ or 味噌だれ
つくり方:
1.串に刺さるサイズにカット。焼く前に軽く塩を振ると、水が出て焼きやすくなる。
2.竹串に交互に刺す。食材の色バランスも意識すると“戦場で映える”仕上がりに。
3.フライパン or グリルで焼き目がつくまで焼く。焦げ目は“戦の勲章”。
4.最後にたれ or 味噌ダレを絡めて完成。ビールがすすむ。


台所・心の一句:「折れそうな 父を支える 三本矢」

いいなと思ったら応援しよう!