見出し画像

【エッセイ】先取りの夏

宮古島出身の僕には、
島で果樹農家をしている従兄がいる。

毎年、忘れたころに、
マスクメロンやマンゴー、
ときどきゴーヤーなんかが、
どっさり届く。

箱を開けるたびに思う。
ああ、実にありがたい。

先日、その従兄から
マスクメロンがやってきた。

少しだけ追熟させようと思って、
台所の隅に置いておいたのに、
気づけば香りが先に夏を連れてきていた。

切った瞬間、
包丁の刃を伝って、
果汁があふれ出す。

これはもう、
「少し」どころじゃない。

皿にのせると、
果肉は重く、
種のまわりはとろりとして、
スプーンを入れただけで、
果汁がこぼれ落ちる。

一口食べる。

甘い、というより、
夏が口の中で崩れる感じ。

季節を一歩、
いや、十歩くらい先取りした果実を、
贅沢にも、静かに味わう。

思わず、ひとりごとが出る。

持つべきは、
やっぱり、従兄だ。

いいなと思ったら応援しよう!