私は、無言でカゴを出せない
最近、スーパーも
セルフレジが増えた。
それでも、店員さんはいる。
完全セルフで
終わるレジもあれば、
店員さんが入力して、
会計だけ
機械でするパターンもある。
どちらも使うが、
私はなぜか
だまってカゴを差し出すのが
少し苦手だった。
もともと
「人に嫌われたくない」
というような、
八方美人的なところが
あるからかもしれない。
でも、自分でも
変な感覚だなと思いながら、
なんとなく
無言でカゴを出すことに
違和感があった。
それで考えた末に、
ある時
お願いしますと
言ってみた。
「お願いしま〜す」と
カゴを差し出すと、
「はーい、お預かりします」
「お会計させて頂きまーす」
そんなふうに、
心なしか
少し弾んだ言葉が返ってくる。
ただそれだけのことなのに、
私はその空気が心地いい。
いつものスーパーでは、
いつの頃からか、
レジだけじゃなく、
店内のどこで会っても
「こんにちは♪」
「今日は早いですね」
と、店員さんの方から
声をかけてくれるように
なった。
まぁ、2回ほど
財布を忘れたことがあるので、
覚えられているだけかも
しれないけど。
この前なんか、
仕事終わりだったのか、
私服のまま話しかけられて、
一瞬「誰だっけ?」と
わからなかった。
すぐに
「あ、いつものレジの人だ」と
気づいたんだが
なんだかおもしろかった。
もちろん、
こちらは「お客」で、
向こうは「店側の人」。
立場としてはそうなんだけど、
そこには、
他愛ない普通の会話がある。
別に、
しなくても困らない会話だ。
でも昔は、
道端や商店街で、
こういう何気ないやり取りが、
もっと自然にあった気がする。
私が感じていた違和感は、
“処理”だけが流れていくような
空気だったんだと思う。
セルフ化が進んでも、
結局、人が覚えているのは、
こういう小さなやり取り
なのかもしれない。
それを面倒だと思う人は、
確かにいるだろう。
ただ、
そんな会話が交わされる中では
理不尽なクレームや
声を荒らげるような光景が
入り込む隙間は
少しは減ると思うのは
私の希望的観測だろうか…
