日本の「インフレ」の正体。
加藤直美(かとう・なおみ)さんという方が書かれた記事 ↓ で示されていたデータ・グラフが興味深かったのでご紹介しておこう。
〈節約で生き残れる?〉値上げラッシュはこれからが本番 物価高はSDGsで乗り切れ! - 特選街web (tokusengai.com)
まずは生鮮食品を除くCPIの推移。グラフで見ると2016年以降、きれいな上昇チャートを描いている事が判る。筆者の意見ともほぼ一致。

2020年の「コロナ危機」で一度中断したかに見えたが、流れの根底にあるのは「人件費」の上昇。「インフレ」は最近始まった現象ではない。

それでも「インフレ」が顕現化しなかったのは、企業が「スティルス値上げ」など企業努力を重ねてきたから。それが今回①「コロナ危機」からの正常化による需給の逆転②「円安」による輸入コストの増加、などで「限界」に達した。その結果が最近の "目に見える"「値上げ」だ。
↓ グラフは企業の価格転嫁の状況を示しているが、平均転嫁率は@+44%程だそうだ。つまり残り@+56%はこれからになる。

ちなみに食品では加工食品の「値上げ」商品数が圧倒的に多い。

「価格転嫁」が始まった2021年央以降から「実質賃金」が大幅に低下し、一気に「生活実感」が悪化しているのが良く判る ↓ 。「賃上げ」が「物価上昇」に遅れてくるのは「インフレ」初期の典型的現象なので「生活が苦しい」のは当然。実は1990年台の "バブル" 期もこの点は同じで、決して ”バラ色” だったわけではない。

これを「年代別」で比較すると興味深い傾向の違いが見えてくる。
「経済志向」=「安いモノ」を選んで消費する

「食」に関しては20代が突出して「安いモノ」に走っている。その次が会社から出向などで転籍・リストラ+「賃下げ」を迫られている60代。30~50代と70代は比較的安定=食生活を変えていない。
この傾向は日銀総裁も発言した「値上げ許容度」にくっきり現れている。

「苦しさ」の度合いは「収入」の低さに比例しているようだが、定年・リストラ対象になりがちな60代が ”節約” に走っているのが印象的。年金支給まで5年程の「タイムラグ」を埋めるのが大変なのだろう。
20代に関しては違う印象を持つ。「お給料」が低いのもそうだが、重要なのは彼らは生まれてから一度も「物価上昇」を経験していない事。「待てば値段が下がる」が体の芯に染みついてしまい、 ”節約” して "我慢" しているのだろう。だがそういう「デフレ対処方」では「インフレ」は乗り切れない。待てば待つほど「モノの値段」が上がっていってしまうからだ。
せっかく ”節約” してせっせと「貯金」をしても時間の経過と共に「お金」の価値はドンドン下がる。だから "我慢" するのではなく、*前倒しで「お金」を必要な「モノ」、特に値の張る「高いモノ」に変えていく生活習慣が必要。経験がない故仕方がないが、グラフのような「経済志向」=「安いモノ」への傾斜を見ていると心配になる。そろそろ気付いてきているだろうが、いくら「貯金」を溜め込んでも生活は楽にならない。
*今なら「中古車」が一番分かり易い。「10万㎞も走った車が何でこんなに高いの?」と渋々買ったら、1年後には+30%も値上がりしたりする。「デフレ」では考えなくて済んだが「インフレ」ではリセールバリュー(再販価値)を考えて消費する "発想の転換" が必要。幸い今はネットオークションのアプリも充実している。「生活が苦しい」=デフレと決め込んで文句を言うよりも、 "他人任せ" を止めて自ら行動を起こす事が求められる。
幸い小麦、トウモロコシなどの食糧や原油価格はピークを越えて落ち着いてきた( ↓ チャートご参照)。身の回りの生活消費への圧迫は減ってくるだろう。やっとFRBによる「利上げ」「QT」(量的引締)の効果が出て、ファンドやエネルギー会社が買占めで不当に儲かっていた状況が是正されてきた(「戦争」の影響は実はそれ程でもない)。



だが「インフレの壁」はなくならない。
2016年以降の物価上昇は「労働力不足」による「人件費上昇」に起因する長期の循環周期であり「人口動態」の変化が根源にある。e.g. 日本なら▼8百万人の「団塊」、アメリカなら▼4,000万人の「ベビーブーマー」
加えて「米中対立」による「反グローバリゼーション」が「サプライチェーン再構築」を引き起こし、安い製品の供給を困難にする。食糧やエネルギー等の1次産品は一過性だが、耐久消費財や自動車、不動産の価格は5~6年前の値段には戻らない、いや、むしろ上がっていくと考える方が合理的だ。
「お給料」の上昇が後追いになるのは辛いが、特に「デフレ」で育った世代はぜひマインドを "能動的" かつ "前倒し" にリセットしてみて欲しい。少しはマシになるはず。 "バブル" の再現などというつもりはないが「インフレ」経験者の一人として。ちょっと説教臭かったかな(苦笑)。
