減っていく "使えるお金" - 邦銀の金利政策の「変化」
1月マネーストック(速報値):
M2 1,279.1兆円(年率+1.6%) 残高は過去最高を更新
M3 1,627.2兆円(+1.0%) 残高は歴代2位
・預金通貨 979.7兆円(▼0.4%)
・定期預金等 512.1兆円(+4.4%) 利上げを背景に資金シフト
・現金通貨(▼1.1%) 前年比マイナスが継続
広義流動性 2,240.4兆円(+2.0%) 前月比マイナスは11カ月ぶり
・国債41.2兆円(+20.8%) 家計の購入増で高い伸びが続いている
「マネーストック」「マネーサプライ」に詳しい方はいるだろうか。毎月統計が出ているが「お金」全体の動きとして結構興味深い。 ↑ は1月の速報値だが色々と「ヒント」が潜んでいる
1,000~2,000兆円単位の巨額の数字が並ぶが、これがいわゆる日本の「金余り」の度合いを示す。「円キャリートレード」の原資でもあり、相変わらず「金余り」が続いているようにも見える。だが「変化」も垣間見える
「利上げ」の影響は徐々に現れており、例えば「定期預金」への移し替え。1年程前からネット銀行を中心に@1%を超えるような「特別定期預金」の募集が相次いだが、この動きは地銀や信金・信組のような中小の金融機関に波及。実際「預金」確保に奔走する銀行も出て来ており邪魔者扱いだった「預金」も獲得競争に激変。今や@1%はそれ程魅力的に見えない
この動きに拍車をかけたのが国債金利の上昇。巷で話題になりつつあるが2025年は「個人国債」が5兆円も売れた。2月募集の3年債は@1.39%、5年債は@1.66%と銀行預金より遙かに「高金利」。日本の「国」の信用が邦銀を下回るなんて事はないから、これより低い金利提示をしている銀行は相手にならない。結果「預金」から「個人国債」への移し替えも進み、銀行の預金が減って「資金繰り」を圧迫。2026年はこの動きに拍車がかかるだろう


これが邦銀の金利政策に「変化」をもたらしている
住宅ローン金利(2/27発表):
<変動型>新規借入最優遇金利、3月から
三菱UFJ銀行 @0.945% ← 0.670%(+0.275%)
三井住友銀行 @1.175% ← 0.925%(+0.25%)
・他行は3月は据置いたが4月以降に引き上げる可能性。三菱UFJ銀行は一部の既存契約者の変動型の基準金利を0.25%引上げ(5月返済分から適用)
<固定型>10年固定最優遇金利
三菱UFJ銀 @2.92% ← @2.75%(+0.17%)
三井住友銀 @2.95% ← @2.85%(+0.1%)
みずほ銀行 @2.85% ← @2.75%(+0.1%)
三井住友信託銀行 @3.195% ← @3.175%(+0.02%)
りそな銀行 @3.255% ← @3.165%(+0.09%)
・大手5行平均 @3.034% ← @2.938%(+0.096%) 8カ月連続上昇
端的に表れたのが「住宅ローン」の金利引き上げ。結構ショックを受けている人が多いかもしれないが、8割が使っている「変動型」が3月からいきなり@1%近辺にまで上がる。これは3/19ないし4/28の政策決定会合で+0.25%追加利上げ濃厚という状況も影響しているが、それより「マネーストック」の「変化」で銀行の調達コストが跳ね上がっている影響が大きい。つまり「インフレ」の影響が「お金」にも出て来て「仕入値」が上がっている。「金余り」で預金の新規開設を断っていた銀行もあった時代からは様変わりだ。ここからは段々金利引上げに容赦がなくなってくる
この「マネーストック」「マネーサプライ」の「変化」が顕れるのが、銀行の「資金繰り」最終尻が反映する「日銀バランスシート」↓

↑ は2月末の数字だが120兆円を超えていた「日本銀行券」は116兆円へ(≓タンス預金、現金)、600兆円近くまで膨張していた「当座預金」は461兆円まで減っている。「国債」保有残高を減らした影響は▼50兆円ほどだからそれ以外は個人の「新NISA」「個人国債」への預け替え、あるいは銀行の「貸出」増加などが影響している。「資金繰り」がタイトになった日銀自身も国債の「売現先」で▼36兆円も資金調達しており、マーケットに出回る「お金」はかなりのスピードで減っている
(参考)2023年3月末の「日銀バランスシート」

「戦争」の勃発でドル円は@158円を伺う展開だが、これはこれまでの「ドル安・円安」の反動で特に「ドル」の急速な買い戻しが主因。ユーロ円やポンド円などクロス円でみると「円」はむしろ買い戻されており純粋な「円安」とまでは言えない

邦銀の金利政策の「変更」に鑑みると、FXで「円キャリートレード」を行う際の「円借り」のコストは間違いなく上がっており、冷や水のように徐々に効いてくるはず。そして "使えるお金" が減る影響は甚大で日経平均の暴落もビットコインや金(Gold)の下落、そして韓国KOSPI指数の急落なども直接・間接的に影響を受けている。特に市場流動性の乏しい中規模市場は値動きが荒くなる。アラームは鳴り続けている

