コロナ後の世界 Ⅳ - 「インフレ」「デフレ」どちらに向かうのか?
「コロナ後」については様々な予測が飛び交っているが、特に「物価」の行方については「インフレ」か「デフレ」か意見が真っ二つに割れている。見極めのための重要なポイントが3つ:
1.グローバルチェーンの再構築(安全保障コスト)
端的に言えば今後の中国との付き合い方だ。安価な製品を大量に供給する「世界の工場」としてあまりに「中国依存」が進んでしまった結果、今回の「コロナ危機」で生活・経済の必需品が供給されない、即ち「安全保障リスク」が顕在化してしまった。
中国国内の人件費上昇により、既に一部の商品についてはベトナムなど東南アジア諸国への工場移転の動きは加速しつつあったが、コスト高を承知の上でこの傾向が更に加速するかどうか、が焦点になる。
2.労働需給
アメリカでは4月に2,000万人もの雇用が失われたが、これが「コロナ後」戻ってくるかどうか。国によっては事業のオンライン化が進んだ結果、雇用が失われるとの予測も。一方、日本のように団塊の世代800万人が引退し少子化も進む中、慢性的に労働需給が逼迫するところもある。工場の移転した東南アジアでも既に賃金の上昇が顕在化。
3.ソーシャルディスタンス
「人と人との間隔をあけて」というのが今後の生活様式になるに連れ、商業施設や飲食店などでは顧客1人当たり今までよりも広いスペースを確保する必要が出てくる。集客人数が減少するので、何の対策もしなければ売上、利益率が減少するのは確実。値上げで対応するのか否か。
これらに集約されるのは、①商売や商品の原価が上がること。ただその反面、②労働収入の減少も予測され、この①と②のせめぎ合う。結果:
<インフレ(物価上昇)パターン>
企業は利益を確保するため原価コストの上昇を顧客に価格転嫁。企業間の競争は激化するものの、弱小企業が淘汰されるにつれ徐々に価格統制力を取り戻す。今回の事業のオンライン化で社員もふるいにかけられ、優秀で必要な社員には賃金引き上げが行われる。
<デフレ(物価下落)パターン>
急減した需要は戻らず、企業は原価コストの転嫁を諦め値下げ。その損失を穴埋めするために賃下げ→需要減退のデフレスパイラルへ。労働需給は緩んだまま回復せず長期に渡る経済低迷期に突入。日本ではおなじみ。
これらを見極めるために「損切丸」としてはマーケットでの注目点をいくつか挙げてみた。ただ「過剰流動性+マシーン」に支配されている株式市場は敢えて景気・物価を測る物差しからは外した。
A.長期金利の動向

激しい上下動を繰り返す株式市場とは対照的に、この2か月間音無しの構えの長期金利市場。それだけ景気・物価の見通しが立っていない証でもあるが、物価の方向性が見えてくれば動き出すはず。特にインフレパターンの場合、金利上昇は急激なものになるだろう。
アメリカはもちろんだが、特に国内預金の潤沢な日本、ドイツの金利市場に注目している。今回の財政出動や預金取り崩しにより国内の資金繰りバランスは崩れてきており、物価上昇が明確になって預金 → 物 へのお金の流れが加速すれば、預金の減少した銀行(日銀も例外ではない)による国債売りを誘発(金利上昇)するかもしれない。要注視だ。

B.人民元の為替レート

そもそも日本が20年もの間デフレに悩まされてきたのは Made in China が主因。インフレ体質のアメリカやヨーロッパでさえディス・インフレが続いたのも同様の理由である。その間1ドル=@8元→@6元まで人民元高が進んだのは、彼の国が猛烈に安い商品を輸出してきたから。
トランプ大統領が圧力をかけ続けた事もあって1ドル=@7元台まで人民元安が進行。今後「中国離れ」が進めば人民元安傾向は続くことになる。
「マーケットはみんなが嫌がる方向に動く」
「損切丸」はトレーダーとしての経験からこの考えが染みついているが、これは何もマーケットだけでなく、社会全般にもあてはまる。
かつて大多数が幸せになる方向に社会が動いたことがあっただろうか?
多くの人が嫌がるのは「インフレパターン」だろう。大変とはいってもデフレはまだ我慢できる余地があるが、今日、明日の衣食住に困るインフレではそうはいかない。
「社会的弱者の切り捨て」を前提に「貧富の差の拡大」を伴った過酷な値上げが行われるようなら社会不安の増大を招くだろう。アメリカで起きている経済再開を求めるデモやブラジル、アフリカ諸国等での暴動を見ていると「スタグフレーション」まで想起してしまう。
そういう観点からも、世界的には「富裕層」にあたる日本、ドイツ(もちろんアメリカも)両国の金利市場は重要なサインを発するだろう。この辺の長期金利が上がる時は、世界中がインフレに悩まされる時だ。
もちろん「デフレパターン」の芽もあるが....今回の危機の深刻度を考慮すると「楽な方」「中国への再傾斜」には行かない気もする。日米による半導体の国内回帰計画( e.g. 台湾TSMC社)も取り沙汰されているが、さて。
