高止まりする米国の「雇用コスト」。ー "ベビーブーマー" 引退による「人手不足」解消には時間がかかる。
6月米雇用時計:
失業率 @3.6% 予想 @3.6% 前月 @3.7%
非農業部門雇用者数(NFP)+20.9万人 予想 +22.4万人 前月 +30.6万人 ← +33.9万人
平均時給(前年比)+4.4% 予想 +4.2% 前月 +4.3%
「やった、これで利上げが止まるかも知れない!」
6月米雇用統計は非常に悩ましい数値となった。NFPが+20.9万人と予想を下回ったことから米国債トレーダーはまず買いで飛びついた。2年債は@5%台から一気に@4.8%台まで急騰したがその後すぐ ”正気に戻った” 。
そもそもNFP+20万人台は「利上げ」を正当化できる十分強い数字。更に平均時給の伸び(前年比+4.4%)はトレーダーに "リアル" (現実)を突きつけた。7/26のFOMCでの「利上げ」は見送りどころか決定的、10年、30年債とも@4%台が続いている。
とは言え、米雇用の状況がまだら模様なのも事実。6月は医療や政府、建設といった分野での雇用の伸びが目立ったが、小売りや運輸・倉庫では4、5月に雇用者数が▼11万人下方修正されている。労働参加率は62.6%と高水準を維持し、特に25~54歳の年齢層で目立つ。経済的な理由からパートタイムでの仕事を余儀なくされている労働者の数は2020年4月以来の大幅な増加。労働需要鈍化の兆候を示している。その辺りの "気迷い" が2年債が@5%台に戻らなかった理由だろう。


興味深いのはこのところTIPS(物価連動債)が一般米国債をアウトパフォームしていること。 "リセッション" を意識して@2.1%台に低迷していた5~30年のBEI(予想物価率)は@2.21~2.27%まで戻し、今回の平均時給が示唆するアメリカの粘着質な「インフレ」を再評価している。

株式市場が待ち望んでいるFRBによる「利下げ」局面入りは大分先延ばしになりそう。 グローバル投資家の苦悩。ー 2022~2023年の成績表。|損切丸 (note.com) は続く。

面白いのはこの雇用統計を受けて対円、ユーロ、ポンド等々、FXで一斉に「ドル売り」に転じていること。2~5年米国債金利が低下した事に素直に反応したのかもしれないが、そこは常に2年先、5年先を先取りするFX。ここまではドル円が一種の "防波堤" になっていたが、そこも崩れるとなると大きなトレンド転換の気配も漂ってくる。
S&Pの「イールドスプレッド」が@▼1.1~▼1.2%と高止まりする等、今や米株価の「割高感」はウォール街でも共通認識。いわゆる "業界の都合" だけで株高を維持しているなら、「ドル売り」が「ドル安+米国債安+米株安」のトリプル安を誘発する懸念も出て来る。見逃せない兆候ではある。

悩ましいのは "我らが日銀" 。先頃発表になった5月の勤労統計で現金給与総額が4月の+0.9%から+2.5%と大幅増となり、7月の会合で物価見通しが上方修正されるのは確実。そもそも「+2%に落ち着く」という自らの見立てが低過ぎたことは自覚していたはずで、いわば ”出来レース” 。
結果「YCC修正」の可能性が意識され、5年JGBは@0.10%、10年は@0.44%まで金利が上昇している。


ただここで「ドル売り」転換が実現して「円安」が止まると日銀は「利上げ」を急ぐ必要がなくなる。本音では動きたくないはず。税収が過去最高の71兆円になったが、それも「低金利」のお陰。1,200兆円もの国債金利が+1%上昇すればそのコストは▼12兆円。実質税収は50兆円台に逆戻りで使える「お金」が激減する。まず国会議員の先生方が嫌がるだろう。
だが「団塊」▼8百万人が引退して「雇用コスト」が高止まりしているのは日本も同じ。「円安」は置いておいても「利上げ」が先行している欧米に比べ日本の「インフレ」はこれからが本番だ。理論的には金利の水準訂正は不可避。今でも「インフレ税」が重くのしかかる日本人がどこまで絶えられるか。「お給料」の動向と合わせまさに ”剣が峰” の様相を呈してくる。
改めて振り返って見ると、今の急速な「円安」の発火点は前総裁が独断で突っ走った2022年2月の「国債無制限買取オペ」。そこからドル円は▼30円近く「円安」に振れている ↓

この「狂ったオペ」を止めるにはどうするか。
もともと10年JGBを一定水準に "串刺し" にするための措置だった訳で、元に戻すためには「YCC廃止」が必須。そのための道筋としてYCCを現状の@0.50%→@0.75%→@1.00%と牛歩戦術(懐かしい!)で進め、時間をかけて元に戻すのではないか。ただあまりゆっくりしているとせっかくの日経平均の上昇基調 ↓ が終わってしまうため、この機会を上手く生かしたい。「失われた30年」はもう御免である。

