「年金2,000万円問題」狂奏曲
連日朝も昼もどのテレビ局のワイドショーでこれでもか!というくらい長々と解説が続いている「年金2,000万円問題」。皆さんが制度の枠組みを知って年金の実態に目覚めたことは、まあ一歩前進だとは思うが、どれもこれもいくら年金が貰えるか等の技術論ばかりでいささか食傷気味。もうそろそろこういう騒ぎ方は止めましょう。
来る選挙で自民党が負けようが政権が変わろうが、この実態が大きく変わることはないのだから。ここからは具体的に自分たちでどうしていくのか、考えていくべきだろう。まあ、20~30代で60歳以降のことを考えろ、というのはなかなか難しいところもあるが、50代の筆者の私見で言うと、この辺の「生き道」は40代でほぼ決まってしまうので、早めに始めるのも良い事だとは思う。(かくいう筆者も、20~30代で実はそこまで真剣に考えてはいなかったので偉そうには言えないのではあるが......)
一生懸命働いて稼ぐことの重要性はなんら変わる事がないが、大事なのはお金をどのように使うか、そしてお金を使う優先順位であろう。(今思っても随分無駄使いしたなあ、と反省しきりです ^_^; )
老後に「2,000万円」足りなくなるからこつこつ貯金、と考えているあなた。それは株や外貨の投資などよりもリスクが高いかも……
拙著「お金のマニュアル」でも繰り返し書いたつもりだが、筆者は物価は長期的に上昇に転じた可能性が高いと見ている。根拠は大きく2つ:
1. 人手不足の顕在化により人件費の趨勢は上昇 → デフレ局面は終了。2. 日米欧など先進国で国家債務が膨張→政策として通貨価値の減価=インフレが必要。
ここ20年強はデフレが続き、現金保有が「最強の投資」だったわけだが、ここからは逆の流れになる可能性が高く、あまり有効ではないかもしれない。
優先順位が高いのは衣食住。中でも一番値が張るのが住むところだろうか。(→賃貸派の人もいるかもしれないが、50歳を超えてくるとなかなか借りられませんよ....)可能なら終の住み家をどうするのか、余ったお金の振り向け先として考えてみるといい。「10年前にあのマンション買っておけば良かった!」と言うような人がいたが、10年前もマンションは高すぎると多くのメディア媒体で言っていた。現状も同じであろう。住宅ローンも妥当な金利で返済に無理のない金額借りられるなら、それもインフレヘッジには有効だ。
例え話: 昔知り合いのドル円の為替ディーラーに、朝必ず10人の知り合いに電話をしてポジションを聞く、という人がいた。彼曰く:「ドル円ロング(買い)が6~7人ならロングにするけど、9人ならショート(売り)」にすると。つまり市場全体が買いポジションに傾けば、あとは売る人ばかりなので相場は下がるという意味。これはマーケットの真実をシンプルに示している例であり、方法論としては合っていると思う。
これを不動産に当てはめると、「高すぎる」=「安く買いたい」という意味であり、日本の個人預金が1,000兆円も積み上がっていることを考えると、殆どの日本人は十分に買えていないことになる。これは株や他の投資にも言えることだが、買いたい人ばかりの時、相場は下がらない。↑ の例え話で言えばまだロングが10人中2~3人というところだろう。今の日本人全体のポートフォリオはデフレ的に放置されたままでインフレには極めて脆弱だ。確かに現在の20代以下の世代は物価の上がる世界を殆ど経験していないわけだから、インフレ感度が低くてもまあしょうがないかな、とも思うのだが。
*よく今の東京の不動産市場はバブル、と言う人がいるが、当時を生きてきた我々に言わせれば、1990年台後半には「一般の人」も借金までして株や不動産を買い漁り、ポジションが極端に「買い」に傾いていた(↑ おそらく10人中9人以上がロング )ので、あとは売られるしかなかったのである。そういう意味合いでは今は全くバブルではない。
<注意>今日本ではETFやREITなど国(GPIF+日銀)が個人の代替行為で株、不動産をロングにしているので価格がつり上がっている要素もあるが、国策でインフレを目指しており、個人とは違って輪転機を無限に回せるので売却を迫られることはない。これが昭和バブルとの大きな違いである。
将来的にアメリカや欧州で暮らすプランがある人は米ドルやユーロにしておくのもありだと思うし、これだ、と思える企業があれば株もいいかもしれない。それはひとそれぞれ、生き方のプランによると思う。
面白い存在なのがビットコインなどの仮想通貨。いよいよFace Book が満を持して仮想通貨の発行に踏み切ったが、信用の高い巨大企業が参入してくると現在の国家通貨に取って変わる力を持つかもしれない。正に21世紀の「金(ゴールド)」。国家が既存通貨の陳腐化を目指すのであれば、国家の信用の枠外にある仮想通貨の価値は相対的に上がっていくことになる。ただ今はマーケットの創世記によくある現象で値動きが荒く、例えばビットコインの適正値が40万円なのか100万円なのか不安定な状況が続いているので、安定するまでもう少し様子をみて手掛けてもいいかもしれない。
令和は日本における投資の大きな転換期になる可能性がある。後から振り返った時、あの「年金2,000万円問題」が契機だった、と思い出すことになるかもしれませんね。
