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ありがとうの貸したい本ベスト3「日の名残り」(読書記録2026#6)

カズオ・イシグロさんは、ノーベル文学賞も受賞しているとっても有名な作家さんだけど、本を読んだことはなかった。『わたしを離さないで』は、書籍ではなく、映画でもなく、TBSのドラマ(綾瀬はるかと三浦春馬)で観て、なんとも衝撃を受けた。今回、プノンペンの読書好きな友人に、貸したい本ベスト3を選んで貸してもらい、その一冊がカズオ・イシグロの『日の名残り』だったので、カズオさんと対峙することとなった。お初でございます。

『日の名残り』はベストセラーで、素晴らしいレビューが山のようにあると思うから、わたしは、そのあたりは、毎度のことだけどカッツ愛させていただく。心に残ったことをのみ、書きたい。
まず、主人公が執事っていうのが、なんか新鮮だった。今の時代、今の日本で、もちろんカンボジアでも、執事をやっているなんて人にお目にかかったことがないからだ。そのそもわたしは、執事という仕事のことをよくわかっていなかった。破格のお金持ちが主人公のドラマで、漫画が原作だったりするもので、”おぼっちゃま”に”じいや”なんて呼ばれているのが、執事のイメージだ。

わたしが思うイメージなど、どうでもよくて。スティーブンスという執事の一人称によって語られているので、読み進めるうちに、いつしか自分がスティーブンスになっていて、なんだか執事然としてきてしまうのだ。本の世界の中で。

スティーブンスがかつてお仕えしたダーリントン卿は、第一次世界大戦と第二次世界大戦のハザマの時代に奔走した人物だが、尽力虚しく不遇な感じでお亡くなりになっている。というのがラストでわかる展開になっているのだけど、現在は同じお屋敷で、現在のご主人であるアメリカ人にお仕えしている。執事って、人に仕えるのかと思っていたけど、場所にお仕えしていて、主人となる人は執事や女中など、そういうヒューマンリソースを丸ごと継承できるんだ、ということも初めて知った。

というわたしのはじめて物語も、どうでもよくて。このスティーブンスの執事という仕事に対するスタンスが、心に残った。

執事の任務は、ご主人様によいサービスを提供することであって、国家の大問題に首を突っ込むことではありません。この基本を忘れてはなりますまい。(途中略)それでもこの世に自分の足跡を残そうとしたらどうすればよいか・・・・・・? 自分の領分に属する事柄に全力で集中することです。

『日の名残り』より

これは、別に執事だけのことではない。わたしも同じだ。あれもしたい、これもしたい、先の先に気になることはあれこれある。けれど、まずは、自分の領分に属すること、自分の足元の仕事に、全力投球することが大事で、それが結果的に社会に奉仕し、自分のモノとなって、経験やスキルみたいなものになったりして、ご縁を繋いだりもして、いい感じで返ってくることになるのだ。
そして、手帳に書いておきながらも、忘れてしまっていた、渡辺和子さんのとてもとても素敵な言葉を思い起こす。

置かれた場所で咲きなさい。

渡辺和子名言集より

そういうことだ。うん、そういうことなんだ。
原書を読むのは英語力の問題で難儀するし、かといって翻訳本をなんとなく避けてきていたわたしは、友人から借りなければ手を出すことがなかったであろう、カズオ・イシグロ本。読めてよかった。

Amazonを検索するのも、書店をぶらぶらするのも、本との出会いの手段ではあるけれど、この人好きだな、と思う友人のお勧め本を借りるというのは、思わぬ素敵な出会いがあるものだ、と思った読書でした。
あと2冊も楽しみだ、ふふふ。


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