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「0」の次は「100」ではない、「1」である

私は長年ヴァイオリンを趣味としているが、
「これは絶対に弾けない、無理だ」
と思っていた曲がある。

楽譜をぱっと見た瞬間、指番号がまったく浮かばなかった。
苦手な重音がこれでもかというほど並び、正しい音程で弾ける気がしない。
譜面を追ううちに、気持ちがすっと冷めていくのが分かった。
「ああ、これは無理だ。」
諦めに近い感覚だった。

難易度が高く、最初に譜面を見たときから、正直なところ「弾ける未来」がまったく想像できなかった。
だから、練習に取り組めなかった。

難しくて弾けない。
どうせ弾いても、上手く弾けない。
それなのに、「どうせ弾くなら、ちゃんと上手く弾きたい」という欲だけはある。

その「ちゃんと上手く弾けている自分」の姿が見えない限り、最初の一歩を踏み出せなかった。


実はこの曲、最初に憧れたのは20年も前だ。
「いつか弾きたい」と思いながら、ずっと頭の片隅に置き続けてきた。

でもその「いつか」は、来なかった。
弾けないだろうと諦め、
今じゃなくていい、と後回しにし、
気づけば20年という時間が過ぎていた。

趣味ではあるものの、ヴァイオリンを弾くという行為は、私自身を彩る大切な要素だ。
だからこそ、中途半端なクオリティで何かを出すことに、強い抵抗感がある。

「それなり」では嫌だし、「まあまあ」でも納得できない。

プライドと言えば聞こえはいいが、実際には
「上手く弾かなければならない」
「失敗してはいけない」
というプレッシャーで、自分で自分を縛っていたのだと思う。


今振り返ると、私はずっと「0か100か」で考えていた。

完璧に弾ける未来が見えないなら、始めない。
100に到達できる確信がないなら、0のままでいる。

慎重さのつもりだったけれど、実際には、ただ立ち止まっていただけだった。

あるとき、考え方を変えた。

「100」を思い描くのを、やめた。
代わりに考えるようにしたのは、
・今日は何ができるか。
・今は、どこまでできるか。
といった、とても短いスパンの問いだった。

問いの回答を探すかのように恐る恐る練習を始めてみると、現実は想像以上に厳しかった。
当然、最初は全然弾けない。
弾けないところだらけで、弾けるところを数えた方が早い。

それでも、「毎日、楽譜一段だけ」と決めた。
完成させようとはしない。
ただ、そこだけを丁寧にさらう。

すると、不思議なことが起きた。
少しずつ、指が曲に馴染んでいく感覚が生まれたのだ。

頭で理解できたフレーズは、体もスムーズに動く。
頭が追いつかないところは、指も迷う。

あれだけ「絶対に無理」と思っていた曲の完成形が、少しずつ、具体的な輪郭を持ち始めていた。

もちろん、歩みは亀のように遅い。
毎日コツコツと続けていると、確実に昨日よりは前に進んでいることが分かる。

逆に、少し間が空くと、はっきりと下手になる。
その事実も、逃げ場なく突きつけられた。

でも、今はそれを悪いことだとは思っていない。
下手になるということは、それだけ「楽器に触っていた」「積み重ねていた」という証拠だからだ。

やらなければ、下手になることすらない。
ずっと、0のままだ。


この経験から気づいたのは、とても当たり前のことだった。

0の次は、100ではない。
0の次は、1だ。

いきなり遠い理想を思い描くと、その道のりの遠さに愕然として、動けなくなる。
でも、「今日は1だけ進めばいい」と決めると、人は意外と動ける。

そしてもう一つ、大事なことがある。

実際にやってみないと、0から1までの「正確な距離」すら分からない。

難しそう、無理そう、遠そう、という感覚は、ほとんどが想像で作られたものだ。
実際に手を動かしてみて初めて、
「あ、ここまではできるんだ」
「ここからが課題なんだ」
という現実が見えてくる。

0はいきなり100にはならない。
でも、1を積み重ね続ければ、いずれ必ず100になるのだ。


この感覚は、ヴァイオリンに限った話ではないと思っている。

仕事でも、人生でも、
「ちゃんとできる状態になってから」
「失敗しない確信が持てたら」
そうやって準備を重ねるうちに、気づけば時間だけが過ぎていることがある。

でも実際には、やってみないと分からないことのほうが圧倒的に多い。
やってみて初めて、自分に足りないものや、意外とできていることが見えてくる。

完成形を思い描くこと自体が悪いわけではない。
ただ、それが遠すぎると、人は動けなくなる。

だから私は、最近はこう考えるようにしている。
今日は何ができるか。
今は、どこまでならできるか。

0から100を一気に目指すのではなく、0から1を、今日も淡々と積み重ねる。

それだけで、人生は思っているより確実に前に進むのだと思う。

もし今、
「ちゃんとできるようになってから始めたい」
「中途半端なものを出したくない」
そう思って動けなくなっている人がいたら、それは、あなたが真剣だからだと思う。

でも、だからこそ伝えたい。

まずは、やってみるのみ。
完璧じゃなくていい。
1でいい。

0から1に進めた人は、もう、確実に前に進んでいる。

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okayu 〜おかゆ〜 🌽エッセイ調でひとりごとを語る人 よろしければサポートお願いします!😄 いただいたサポートによって、自身の経験値を増やし、感性を磨くとともに、思考や気づきの幅を広げて、より豊かな表現活動に繋げていこうと考えています。

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