No.1784 ゆかしき人
こんな邂逅いが待っていました。
先日、寝ていただけなのに、腰が痛くて起き上がれなくなる「加齢性ギックリ腰」(仮称)を発症しました。
外科病院の待合室で「今や遅し!」と時計を睨めつけながら、名前が呼ばれるのをまっていました。とにかく、腰掛けているのが辛いんです。
私は、足の不自由な老女に付き添う30代の女性介護士さんの近くの席に座っていました。
「〇〇さーん、3番診察室にお入り下さい!」
とアナウンスがありました。
「ハーイ!」
と、大きい声で元気よく応えたのは介護士さんです。
「〇〇さん、呼ばれたよ!いきましょう。」
「はい、ゆっくり立ち上がってね!」
「私につかまって、ハイ、1、2、1、2…」
「がんばれ!がんばれ!」
と励ましながら3番診察室に向かいました。
診察室の前でノックすると、
「失礼しまーす。〇〇さんです。よろしくお願いしまーす!」
驚くほど大きくて明るい声でした。お婆さんを後ろから支えてゆっくり入りながら深々とお辞儀しました。
数分したら、診察室の中から、
「ありがとうございましたー!」
とまたしても大きな声が聴こえました。にこやかな明るい笑顔で医師に一礼すると、お婆さんを支えながら、こちらに向かって歩いてきます。
「良かったねー、〇〇さん。あの椅子に座ろうか。足元に気を付けて歩きましょうね。ハイ、1、2、1、2…」
明るい大きな声、思い遣りと慈しみをもって老女に優しく接し、尊び励まし続ける姿に、見ていて心が温かくなりました。
そのお人柄が適職を得て、花のように美しく咲いて見えます。こんな人もいたのかと思いました。もう、ずっと見続けていたいような光景でした。
足をトボトボと運ぶお婆さんでしたが、安心して頼りきった表情で、介護士さんの言葉に促されながら前を向いていました。
とても心惹かれたので、
「どちらの介護士さんですか?素晴らしいお付き添いをされますね!」
と声を掛けました。
一瞬怪訝そうな顔つきをしましたが、すぐに
「T駅近くのH老人ホームにいます。」
とこたえてくれました。
一緒にいるだけで明るい気分になり元気が出てくる、病気の悪いところでさえ軽く思えてくる、そんな、今までにお目にかかったことのない、ゆかしくて魅力的な女性でした。
ひょっとしたら、神様は、この人に会わせるために、私を「加齢性ぎっくり腰」にしちゃったのかな?なんて思ったほどです。
たまさかの出逢いだったのでしょうが、無性にそう思いたくなるような、「ゆかしき人」でした。
※画像は、クリエイター・いしかわ いづみさんの、「日に透ける白いハナミズキの花」の1葉をかたじけなくしました。そんな名前の施設の介護士さんだったかと…。お礼を申し上げます。
