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No.1481 いのちながし

在職時代、公私共に大変お世話になった元校長先生のお宅に伺ったのは、10日前のことです。

K校長先生は、70歳まで現役を務められました。部下の面倒見よく、きちんと意見をしてくださり、周りに細やかな気配りをなさる、兄貴とも父とも慕われる師でした。「サンズイに酉」と書く「水の入ったアルコール」にめっぽう強く、最後まで付き合ってくれました。あまりに強いので「鉄腕アトム」ならぬ「鉄腕K先生」と呼んでいました。

退職後は、檀家としてお寺のお仕事をよく手伝われたそうです。大病のために手術をされたこともありましたが、4年前に102歳で隠世されました。生涯にわたって、人々のお役に立てるお仕事をなさったので「寿」をいただいたのだろうと想像します。今は、奥様と娘さんが家を守り、K先生の菩提を弔っていらっしゃいます。

その奥様は、去年「白寿」を迎えられました。退職後もK校長先生を慕って多くの部下たちがお邪魔しましたが、何時間でも笑顔で付き合って下さり、もてなして下さった奥様です。正月には酒とお節を用意して、訪問客に振る舞い、客がおいとまする際には、お得意のマーマレード煮(ジャム)の瓶を持たせてくれるのですが、これがまた絶品でした。そんな方だから、「寿」にもあずかれているのでしょう。

先日お邪魔した時、奥様はご主人・K先生への感謝と賛辞を隠しませんでした。
「飲むことが本当に好きだったでしょう?12時過ぎて酔って帰ることが何度もありましたよ。でも、少しも乱れたり、嫌な思いをさせられたりしたことは無かったですね。立派な人でした。」

正月から、わざわざ「おのろけ」を聴きに伺ったような次第です。その陰には、老夫婦の精神的にも肉体的にも「杖」となる娘さんがいて下さったことが大きいと思います。いつお邪魔しても、さりげなく、スマートに応対して下さる方です。お二方の「寿」は、娘さん効果に裏打ちされてもいるようです。

「今は、毎日何をなさっていますか?」
と尋ねたら、
「暇でしょう。主人の服や余った布で買い物袋や入れ物袋を作っては、親しい人に差し上げているんですよ。時間も経ちますしね。」
とおっしゃいました。素敵な時間の過ごし方です。

孔子の『論語』(雍也第六)に「寿」(いのちながし)の言葉があります。
(本文)「子曰、知者樂水、仁者樂山。知者動、仁者靜。知者樂、仁者壽。」
(書き下し文)「子曰わく、知者は水を樂しみ、仁者は山を樂しむ。知者は動き、仁者は靜かなり。知者は樂しみ、仁者は壽(いのちなが)し。」
(口語訳)先師がおっしゃることには、
「知恵を持ち道理に通じる知者は、心から水を好み、思いやりの心を持つ仁者は、泰然自若として山を楽しむ。知者は活動的であり、仁者は静かに安んじている。知者は絶えず変化を楽しみ、仁者はあくせくせぬから長寿を保つのである。」
と。
 
孔子が生きた時代は、今から約2500年も前の「春秋戦国時代」と呼ばれる混乱の時代だったそうです。彼は、紀元前551年頃に生まれ、紀元前479年に73~74歳で没したと言います。専門家によると、古代中国人の平均寿命は30歳前後(一説には、30歳~50歳)だったと言います。それは、古代の厳しい自然環境、医療の欠如、過酷な労働、疫病、戦争などが原因だと言われています。この時代、多くの弟子に教えを授けた孔子の70代も「寿」だったのかもしれません。
 
「寿」は、「めでたきことほぎ」、「いのちながし」ですね。


※画像は、クリエイター・ribbon(リボン)さんの、「和のデザイン 寿」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。