沖縄の創作昔話「カタブイお化け」
創作大賞2025はいよいよ7月22日で締め切りですね。
ラスト、オールカテゴリ部門に、沖縄の創作昔話を応募します♪
「カタブイお化け」
昔、沖縄がまだ琉球だった頃のお話です。
薩摩からお侍がやってきて、琉球で暮らすことになりました。
夏の暑い日のことでした。
突然空が暗くなりザーッと雨が降りだしました。
お侍は屋敷の外を眺めました。
すると、こちら側は雨が降っているのに、あちら側は雨が降っていません。
「ややっ!? これは妖(あやかし)の仕業に違いない」
お侍はそう思って、刀を持って屋敷の外へ飛び出しました。
すると、白い着物の女が、道の向こうから歩いてきました。
よく見ると女は、身体の右半分だけ雨に濡れて、左半分は濡れていませんでした。
「怪しいやつ。おまえの仕業だな!」
お侍はそう叫ぶと、持っていた刀で女を真っ二つに切りました。
「ギャーッ!」
縦半分に切られて二つになった女は、叫び声をあげて、ぴょんぴょんと片足で逃げて行きました。
雨はぴたりと止みました。
「化け物め。成敗してやったぞ」
お侍は満足そうにいいました。
ところがその日の晩から、お侍の屋敷では、女のすすり泣く声が聞こえるようになりました。
「シクシクシク……」
女の泣き声は毎晩のように聞こえました。
お侍は耐えきれなくなって、布団の中で叫びました。
「えーい、うるさくて眠れない。泣いているやつは出てこい!」
お侍が叫ぶと、枕元に白い着物の女が姿を現しました。
身体は左半分しかありません。
「シクシクシク……」
「お前はこの前切った化け物だな?」
お侍は尋ねました。
「……はい。お侍さま、ひどいではありませんか。ただ道を歩いていただけのわたしを、いきなり刀で切るなんて……」
女は泣きながら訴えました。
「それはお前が片側だけ雨を降らす妖術を使っていたからだ。どうして人を惑わすのだ?」
お侍は女を叱りました。
「こうなってしまったのは、わたしのせいではありません……」
女は悲しそうに話しました。
「昔、村に日照りが続いたときに、わたしは雨乞いのために生贄にされることになりました。わたしは嫌で嫌でしかたなかったのですが、ついには殺されて生贄にされてしまいました。気がつくとわたしは、身体の右半分だけ雨が降る、カタブイ(片振り)お化けになっていました。雨乞いの生贄になるのを嫌がったから、こうなってしまったのでしょう。わたしの身体の右半分はいつも雨が降っていますが、わたしは決して人を惑わすつもりはありません……」
「そうだったのか……」
お侍は女の身の上話を聞いて、少し気の毒に思いました。
「お侍さまに切られたせいで、わたしの右半分の身体は雨の中どこかへ行ってしまいました。おかげで片足になって歩きづらいったらありません」
女は恨めしそうにお侍を見ました。
「わかった、わかった。悪かったよ。お前の片側をいっしょに探してやる」
お侍はそう答えました。
次の日から、お侍とカタブイお化けは、街中を歩き回って身体の右半分を探しました。
ところが一向に見つかりません。
「うーむ。街中にはいないぞ。お前の右半分の身体はどこへ行ってしまったのだ?」
お侍が聞くと、カタブイお化けはじっと考えました。
「もしかしたら……海かもしれません」
お侍とカタブイお化けは海にやってきました。
海の向こうには黒い雲が浮かんでいました。
ザーッと急に黒い雲から雨が降り始めました。
雨はだんだんと陸の方へ近づいてきます。
「あっ!いた!」
カタブイお化けが叫びました。
雨の中で、右半分の身体が片足でぴょんぴょん飛んでいました。
お侍は急いで雨の中に飛び込むと、カタブイお化けの右半分の身体をつかまえました。そして左半分の身体と合わせてくっつけてしまいました。
「あーよかった。これで両足で歩けます」
元に戻ったカタブイお化けは嬉しそうにいいました。
「良かったな」
お侍はほっとしました。
カタブイお化けは、お侍に頭を下げました。
「お侍さま、ありがとうございました。どうかお礼をさせてください」
それからというものお侍の屋敷では、雨が降って欲しいときは紙に右と書いて門に貼り、雨が降ってほしくないときは紙に左と書いて門に貼りました。
カタブイお化けは、お侍の屋敷の前を横切るときには、雨を降らせたいときは身体の右側を向けて、雨を降らせたくないときは左側を向けて歩きました。
おかげでお侍の屋敷では、雨で困ることはなくなったそうです。
沖縄では夏の暑い日に局所的なスコールが突然降ることがあり、片降り(カタブイ)と呼ばれています。
おしまい

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人と人との温かい交流を信じて、世界が平和になるように活動を続けていきたいと思います。