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夫がベランダ家庭菜園①~片づけられない人間はやってはいけないのだ

始まりはじゃがいもだった。

夫がベランダでじゃがいもを育てるのだと、麻でできたポットのような袋と土や肥料を買ってきたのが4年前。

袋栽培だそうで、袋にめーいっぱい土を詰め込み種芋を植えていた。
翌週にはその麻袋が5つにも6つにも増えていた。

この時点で既にまともな家庭菜園ではないのだが、夫はエスカレートしていく。

それから時間をあけず、宅配便でプランターや土などがわんさか届き、決して狭くない我が家のベランダの床は足の踏み場もないほど様々な形状のプランターで埋め尽くされてしまった。
数種類の種や苗を買って帰り、あっちにもこっちにも植える。
トマト、ナス、きゅうり、レタス、豆、にんじん……じゃがいも。
一度出かけたらスコップやらハサミやら鉢底石、大量の種まきポット、大量の支柱、大量のあれこれを手にして帰ってくる。

ネットで揃えましょうと推奨されているものは全部欲しい。
Youtubeで視聴しているのはプロの農家さんの動画。
ベランダ栽培Youtubeを観なさいな。


知識も経験もないのに手を拡げすぎ。
案の定、できた(できた?)じゃがいもは種芋と変わらない大きさ。
勇んで作り始めたじゃがいもの話はどこへ?
他の小さく小さく育った他の野菜を収穫しては『うまいっ!』と自慢していた。


そもそも片づけられない男。
自分の部屋が見るも無残なゴミ部屋であるというのに、ベランダをきれいに管理できるわけがない。

一方、わたしはやましたひでこさんを推しているほどの断捨離女。
夫の自室だけでもストレスなのに、ベランダという共有部分まで侵食されて窓から外を見るのも嫌になっていた。

なにより、洗濯物を干すためにまっすぐ歩ける道がない。
頼むからこの動線をあけてくれ!と涙ながらに訴えて、やっと物は右から左に動かされる。

物は増えることはあっても減ることはひとつもないのだった。


そうこうしているうちに、夫が転職し単身赴任することになった。
やっとここが片づけられる、そんな期待は打ち砕かれた。
全部放置で遠い島まで赴任していった。

冬になり、植わっていたものたちは枯れ、その葉クズたちは風に飛ばされ両隣の家のベランダにお邪魔していく。
何か起こるたびに一応夫に確認する。

ご近所のベランダに枯草などが飛び散っています。
迷惑になるので枯れたものをハサミで切ってもいいでしょうか。

かなり話を盛って許可を得る。
しかも低姿勢で。
なぜなら、何度も俺のものを勝手に捨てた件で喧嘩になっているから。


そうやって、自分を騙しだまし、見て見ぬふりをして約1年経ったころ、ベランダの一角に蜘蛛がたくさん出現しているのに気付いた。
蜘蛛の巣を処理してもまたすぐたくさん作られる。
なにか原因があるのかしら~?
見たくないけど目を凝らしてみる。

ヌオ゛ーーー ンゴゴゴゴゴー


声にならない声が喉の奥から突き上げてくる。

パンパンに詰まった米袋らしきものの周りに小さい虫がたくさんうねっている。

こ、これは! 


蛆(ウジ)と呼ばれているものではないか!

米袋の中身はどうやら米ぬか。
買っただけで一度も開けてない袋。
雨風に晒され害虫発生。
蜘蛛がそれを餌にできる格好の場所になっていた。

どうしてくれよう、離島の男。

逆境において脳みそはチャカチャカ働く。
ピンチはチャンスとばかりに夫に訴える。
話を盛らなくても相当ひどい状況ではあるが、更に盛りに盛る。

たいへんだよ!米ぬかの袋に蛆が湧いてひどいことになっている。
そこに蜘蛛がうじゃうじゃ発生して隣のベランダにも行ってるかもしれないよ!
捨てていい?

『すみません』と返事がくる。

わたしは虫の湧いている米袋を目を細めながらはっきり見えないように大きなビニール袋で密封する。
頑張ってゴミの日にゴミ捨て場まで運ぶ。
重い、重いし気持ち悪い。
なんでわたしがこんな事をやらなきゃいけないんだと夫を恨めしく思う。


ベランダ家庭菜園の続きはまだ続くのであった。



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