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月曜日に死んで、金曜日に蘇る。ー 海底のスヌーズから、羽飾りのランウェイへ ー

「抑えろ、こころ!ゆるむな、くちもと!たるむな、おなか!」

朝の通勤で電車に揺られながら、頬の内側を噛んでいる。

それでも抑えきれないこの気持ち!
だって今日は金曜日、待ち焦がれた金曜日!

明日は休みだ仕事もない、昼まで眠れる。
このフレーズをついつい口ずさんでしまうし、油断すればスキップして足グキーってなってしまう恐れがあり!

気をつけなければ。
いつもよりも眉間に皺がよらない様に目に力を込めてパソコン画面を凝視中。

しかし、土日に桜を見に行こうか。
帰りに春の新作ドーナッツでも買って帰ろうなんて余計なことばかり浮かんできてしまって仕事に支障をきたしていること間違いなし。

これはマズイ!
早く仕事に取り掛からねばと、勢いよくタイピングする音はなんでリズミカル! 

私は戦い抜いてきたのだ!!

そう…あの月曜日から。

月曜日の朝。
体は重力に負けて水底に落ち込んでいく。
抗いもせず、ただ自分の穴から出る空気の泡を眺めてるだけ、やがて息苦しくなる。
ゆっくりと四肢を動かして抵抗する。
水圧に猜疑られて思う様に動かない。
パジャマという名のウェットスーツが重くまとわりつくのもかまわず地上を目指す。
口から乱れた泡が吐き出され、ゴボゴボという音と共に目を覚ます。

耳元で鳴る音は、死刑囚が最後に聞く音楽かもしれない。それは救済のメロディではなく、今日という『労働』の刑期が始まったことを告げる冷徹な合図だ。

目覚まし時計。
スヌーズ地獄に陥っている。
地獄から這い出てくる怪物の様な声が漏れ出でいる。

ああ、月曜日。
その言葉を聞くだけで耳を塞ぎたくなったっけ。

「ああ、耳が、耳がはじまりになってしまう!!」

こんな妄想さえもうまくいかずにただ、ただ憂鬱だと嘆いていたあの日。

駅に行くまでがしんどくって。
足枷を履いてるかのように重く、一歩が進まず。駅がはるか地平線の向こう側に行ってしまったような感覚。

ドアを開けるのがしんどくって。
家のドアは鉄製なのかと疑うほどに動かず、外へ行かせまいと頑なだった。

ウキウキ化粧ですら灰色を塗りたくってる気分になるし、着替えもその辺の適当な布でも被りゃいいやと投げやりだったし、とにかく布団から一ミリたりとも出たくなかったあの月曜日。

あまりにも辛かったのか、夕方は貧血起こして途中下車してプラットホームでから笑いしたりしたっけな。

それでも私は踏ん張った!
一社会を回す人間として、この動きを止めまいと、止めてなるものかと世界情勢が騒がしくなろうが、ガス電気代の補助金がなくなるって言われようが絶対に負けてはならない何かがそこにはあるんだって…

んなこたー思うわけがあるまい!
一日、一分、これが終わったら布団、やりきれば休み。これだけを唱え続けてやって来たのさ。

そんな恋に焦がれて、命が枯れかかったころにやって来たのよ。

金!曜!日!

定時の鐘がなる。

弾けるシャンパン

ミラーボール

前方からはユニコーンを模った白馬たち

プロジェクションマッピングで着飾ったビル群からは金銀おまけにピンクの紙吹雪

今か今かと待ち構えていたサラリーマンたちがスーツを脱ぎ捨てて踊り出す

どこからともなく空中ブランコ

オフィスレディたちが煌びやかな衣装で投げキッス

そのセンターにいるのはもちろん、私

スポットライトを身体中に浴びて

私が背負うのは宝塚もびっくりの羽飾り

見て!ここに自由があるわ!!

と、意気揚々と歩いてましたら、信号が青になる前に渡ろうとしてしまった…危ない、危ない。

羽飾りが信号機に引っかかるところだったわ。

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