人生ゲーム
人生には二つのゲームがある。
一つは、他人に「すごい」と思われるゲーム。
もう一つは、自分が本当に豊かになるゲーム。
あなたはどちらのゲームに参加したい?
私はアメリカサンディエゴで暮らしている、株式投資を楽しんで続けた結果いつの間にか資産形成を遂げていた日本人の主婦だ。
趣味はお金と緑を育てること。
友達は複利の効果さん。
彼女はのんびり屋さんだが、資産形成という名のマラソンに参加した時、気がつけば私と一緒にゴールまで伴走、いや、ゴールを過ぎているのに止まらず走り続けてくれているかなり優秀な友達だ。
若気の過ちで(夫にはもちろん内緒だ)、お金もないのに結婚して、結婚した相手はさらにお金がなくて、あるのは学生ローンだけという洒落にもならない生活をロサンゼルスでスタートさせた。
1995年だ。
小さなスーツケースとパスポートを手にして、よくもまぁ英語もろくに喋れないのに、夫となる彼を信じてあたかも近くの日帰り温泉旅行にでも行くように日本を後にしたものだ。
為替は1ドル80円の時代だった。
さて、私の身の上話はこのくらいにして、今日の話は冒頭で紹介した人生の中で参加できる二つのゲームの話だ。アメリカのファイナンス界ではよく言われているこの人生ゲームの話だけれども、このゲームの話は今のSNSが発達した現代っ子達には是非知っておいて欲しい話だ。
私達が人生の中で参加できるゲームには二つのゲームがあるそうだ。それは見栄をはるためのゲームと、豊かさ、富を手にいれるためのゲームだ。
見栄をはるゲームは、もうその名前の通りなのだけれども、他人と比べるゲーム。良い靴、良いバッグ、良い車に良い家を持って、自分は他の人よりも良いものを持つことで満足感を得られるゲームだ。特に今の世の中はSNS上で、実際には知らない、会ったこともない、他の誰かと比較することが簡単にできるから、満足感達成レベルも昔に比べると遥かに高くなってしまった。
人と比較することで満足をする、人と比較することで反対に満足できなくなったり、満足感が減ったりもする。この見栄をはるゲームに参加していると、終わりのない不満足のサイクルから抜け出せなくなるというトラップまで仕掛けられている。
例えば自分の持ち物として車の例をアメリカでみると、車のリースが良い例だ。信じられないかもしれないが、アメリカではお金もないのに最新の車を2〜3年毎にリースするという人もいる。例えば毎月500ドルを車のリースに支払って、3年経ってまた新しい車をリースして、いつも比較的ラグジュアリーに見える車を借りるのだ。私の友人のアメリカ人夫も若い頃はそうだったらしい。
でもそれだと自分の手元に車は残らない。それよりも普通の車を買って毎月同じ500ドルをローンで支払っていれば、支払いが終われば手元に自分の車が残る。アメリカは日本と違って厳しい車検制度もないので(車は長く乗るためにもちろん定期的な点検は必要だが)、乗ろうと思えば20年だって、いやそれ以上だって乗れるのだ。
実際、我が家は1999年に買ったトヨタのカムリをずっと乗り続け、息子は高校を卒業するまで乗っていた。20年以上所有していたが、その間、優秀なトヨタの車は一度も故障することはなかった。
通常、車は買った時が一番価値があって、その後は価値が下がる。そう考えると、たとえ車を買ってもローンの支払いをしていると、価値が下がるものに対して、利息を余分に払っていることになる。けれども、これを投資として置き換えれば、故障する事もなく毎日長く乗り続けることができたトヨタカムリの場合は、我々は配当こそもらわなかったが、元本以上のものを受け取ったと考えることもできる。ありがとう、トヨタ。
最近もう何年もの間、日本では断捨離が流行っているようだが、例えばクローゼットの中にある洋服だって靴だって、普通は買った時に一番価値があって、その後は価値がなくなる。価値がなくなるものに、高いお金を払ってその時だけの満足感を得て、その後は断捨離だ。
将来的に資産価値が増えるものに対してお金を使ったり、利息を払うのならわかるが、将来的に資産価値がなくなるものに対してお金を使い、その上ローンで支払いをするというのならローンを組む前によく考えた方がいい。というのもローン、つまり負債は見せかけの富を生み出す方法の一つでもあるからだ。
見せかけの富ではなく、人生の中で本物の富や豊かさを得るゲームに参加するなら、自分が何に価値をおいているのか、本当に必要なものは何か、必要でないものは何かを考えておくことが大事になる。でないと臨時収入やボーナスが入るたびに自分が必要でないものを購入して、買った時は嬉しいけど、しばらくするとその嬉しさも減って、また何か別のものが欲しくなってしまうからだ。
これは、アメリカではよくランニングマシーンの例をだして紹介される。ランニングマシーンは最初のレベルに慣れると少しずつ物足りなくなって、レベルを上げていきずっと走り続けることになる。速度5くらいに慣れると、次の速度に上げてしまう。
何処かでストップサインを押して、自分が本当に望むものは何かを考える。運動をする人が自分の身体をよく知っておくことが大事なように、豊かさを得るゲームの中では自分が何に価値を置いているのか知っておくことが大前提になる。
私達にはランニングマシーンのスイッチを切ることができる、立ち止まり、考えることができる意志があるのだ。
私のおすすめの本の一冊でThe Millionaire Next Door 日本語のタイトルではとなりの億万長者という本があるのだが、この本は資産形成をする上で参考になることが多い。実際の億万長者と呼ばれる人たちが、どうやって億万長者になっていったかなどの例なども取り上げられているので、かなり面白い。
もう随分古い本で、これによく似た本も最近では次々と出版されている。
この本の中で
“Wealth is not the same as income. If you make a good income each year and spend it all, you are not getting wealthier. You are just living high. Wealth is what you accumulate, not what you spend.”
という文章がある。
富を表すのは収入ではない、あなたが毎年高い収入を得ていても、それを使ってしまっていたら、あなたは豊かになっているのではなく、贅沢な暮らしをしているだけだ。富は蓄積されていくものであり、使うものではありませんというような意味なのだけど、日本語本を持っていないから、私の拙い翻訳では満足できない方は、是非日本語翻訳本を手に取って欲しい。
地に足着いた主婦の私が実行してきたことは、まさにこれだ。
いや、待てよ。忠告しておきたいのだが、上の本の一文のように我が家では取り立てて高い収入がずっとあったわけではない(許せ、夫よ)。アメリカでは4人家族で、普通の収入レベルだった。
だが、私は富を築くために、計画を立て、家計収支を把握して、収入の中で暮らし、コツコツと投資をしてきた。そうすることで学生ローンの貧乏生活から始まった我が家でも、それ相当の資産を築くことに成功した。
私は主婦だが、投資もするので、家計も企業の財務諸表もレベルこそ違うが、底の部分は同じだと考えている。家庭という小さな仕組みも、資本主義経済の中では企業の仕組みとほぼ同じだと思っている。
出ていくお金が入ってくるお金より多いことが続くと、いずれは赤字経営となって傾いていくし、投資なしではどちらも成長しない。企業に至っては企業価値の向上もない。
こんな生活、もしかしたら人によっては楽しいことじゃないかもしれない。でもこれが本当に一番シンプルに豊かになる、富を築ける方法だと思うし、私も実際にしてきたことで、豊かになった。
先ほどの本の話に戻るが、本の中で調査に加わった億万長者達には共通する7つの事実がある。この7つを知るだけでも本を開く価値があるのだが、この著者は立ち読みだけされることを恐れていないのか、本を開けば最初の方にすぐでてくる。
もう一つ、この本の中で私が好きな文章で、調査に協力していた億万長者の1人の父親が言った言葉が紹介されているのだが
Dad used to say seeds are a lot like dollars. You can eat the seeds or sow them. But when you would see what seeds turned into…ten-foot-high corn…you don't want to waste them. Consume them or plant them, I always get a kick out of watching things grow.
「父はよく種はお金のようだと言っていた。種を今食べることもできるけど、植えることもできる。種を植えたら、それが10フィートのとうもろこしになるんだ、そして実がつくんだよ、それを無駄になんてできないよね、食べてしまうのか、それとも植えるのか、私はいつも育つのを見るのを楽しむね」
私はガーデニングをするので、この一文の意味が本当によくわかる。種を食べてしまえば、それで終わりだが、植えて育てることによって、それ以上のものを受け取ることができるからだ。もちろん植えた後には手入れも必要だし、管理も必要だ。でもちゃんと育てばより多くの収穫を望める。そしてある日突然収穫の多さに驚く。ここでも複利の効果さんの登場だ。
ガーデニングは育てる喜びと、待つ喜びが同時に味わえるわけだが、これは長期投資とかなり似ている。
富を築くゲームに参加するためには、富を蓄積していく。
家計の計画を立てる時、自分がバケツを持っていることを想像してみる。家計収支をみる時にはまず一番に絶対に必要なものがバケツの底にくる。例えば家賃、食費、光熱費、車の支払いがあれば車の支払い、そして車の保険、これは大体一年契約だから12で割って、ひと月いくらかかるかを知っておく。そういった生活に絶対必要なものがバケツの底にくる。これは毎月自分が実際に支払わなければならない部分だ。
ここでもアメリカの例をだしてしまうが、アメリカでは基本何でも交渉可能だ。アパートの家賃、家の保険、車の保険、携帯代、恥ずかしらがらずに交渉すれば、値段を下げてくれることもあるし、結構お得な情報を教えてくれることもある。もちろん、交渉しても無理な時もある。それでも交渉することによって、この値段が払うべき値段なのか、払わなくてもよい部分が含まれている値段なのかを知ることはできる。アメリカでは基本、何でも交渉だ。車を買う時にだって、店頭にある値段で買う人はまずいない。その値段からどれだけ割安にさせるかもアメリカで習った交渉術だ。聖書にだって書かれている。門は叩けば開かれる、でも叩かないと門は閉まったままだ。求めることを恥じてはいけない。
何故なら「求めるものは受け、探すものは見つけ、そして門を叩くものには門は開かれる」からだ。
さて、交渉した後に実際自分が毎月支払わなければならない経費、この部分はできるだけ60%を出ないようにするというのがアメリカのファイナンス界隈では基本だ。
次にバケツを埋めるのが将来のための支出、これは投資などになるが、ここの部分が10〜20%と言われている。頑張れば増やすこともできる。我が家の場合は結婚して夫がすぐに「大学院に行きたい」と勝手に宣言した。私はこの時はこれが将来のための支出(投資)という思考も持ち合わせていなかったために、「あ、いいんじゃない?」とまるで朝マックのメニューでも相談されたかのように軽く返事をしてしまった。
今思えば、10〜20%どころか飛び抜けて高い将来への投資だったし、人生最大の投資判断だったとも言える。しかも、現実的にいえば「未来のキャピタルゲインを期待して大きく使う」という、なかなか危ない話でもある。
そして最後まだバケツに入れる余地があるならそこには、楽しみの支出を入れても構わない。これは娯楽に使ってもいいし、自分自身へ投資をするために使っても良い。でもここの部分がバケツから溢れ出ないようにしておくことが重要だ。でないと毎月赤字決算になってしまう。
こうして自分の支出が収入から出ないように気をつけることが富を築くゲームの第一歩になる。自分の収入が増えていけば、バケツのサイズを変えることもできるし、変えずに投資の部分を増やしていくこともできる。この辺りは個人の生活スタイルの好みにもよるが、自分が持っているバケツから支出が出ないようにすることは変わらず同じだ。
そしてこのバケツルールと同じくらい大切で、富を形成するためにも持ち続けなければならないキーアイテムが、知性と好奇心だ。
今の世の中、見栄を張るゲームに参加したとしても、高級ブランドバッグでは、もう誰もさほど驚かない。高級ブランドのバッグや靴やジュエリー。 かつては「成功の証」だったものが、今や誰でも中古で手に入れられる、そして借りられる時代なのだ。
豪華な邸宅だってレンタルできるし、ヨットだって、高級車だってレンタルできる。SNSの中でも見られるお金持ちっぽく見せることは誰にでもできる。
でも、人生ゲームの中で絶対に偽れないものがある。それが知性と好奇心。
自分の中に積み上げてきた知性、「賢さ」はレンタルできない。頭が良いふりをしても長くは続かない。ここで言う「賢さ」はテストで良い点を取ったり、有名大学を卒業したりといった学校で習うような教科書的なものではなく、幅広い領域への関心とでも言ったらいいのか。
例えば
アートや歴史、本から学べる世界の多様な価値観。図書館、美術館、博物館、色々なところへ足を伸ばしてみてもいい。他には自分が普段は選ばない料理や音楽、そういったものを新しく試してみる姿勢。この先の未来で何が流行していくのかを知ること、健康で豊かに生きるための知識。
こうした知性は、一朝一夕では身につかない。好奇心と時間が育ててくれるものだから。
色々なことを知ることは、自分の頭脳に筋肉をつけることにも似ている。そして筋肉は使えば使うほど強くなる。
でも、こうした筋肉を鍛えるには「時間」が必要。ここにも複利の効果さんがあなたの横にいることを思い出して欲しい。
ポイントは、時間の自由こそが、富の新しい指標になるのではないか、ということ。経済的に自立している人は、自分の時間を自分でコントロールすることができる。
そうでないと、自分の時間を自分ではない誰かのために働くことによって貸し出している状態、しかも貸し出しているのにその対価に見合わないというか、戻ってこないという状態にもなりうる。
本当の富とは、高級ブランドのロゴに現れるものではなく、平日の昼間にワインでも飲みながら(いや、私の趣味なだけで珈琲や紅茶でもOKなんだけど)本を読めること。
それこそが、本物の贅沢。
誰かに許可をもらわなくてもいい、自分の時間、自分のペースで、自分の好奇心のために使える時間。
必要なのは、自己投資。ここで私が言う自己投資は、単にお金を使うことではない。ましてや高額セミナーに参加することでも決してない。
手取り早いのは読書。格安の値段で、自分の知らない世界を見せてくれる、自分の経験からは思いつかないような知識を与えてくれる。
バフェットさん、マンガーさん、ゲイツさん、マスクさん、ベゾスさん、ザッカーバーグさん、ウィンフリーさん、キューバンさん、今思い浮かべるだけでも大の読書好きで知られるアメリカの富豪達の名前がスラスラでてくる。
バフェットさんに至っては、いつぞやのインタビューで「私はずっと投資を続けてきたからね」と自分の頭を指さしてたのが印象的だった。
大事なのは、SNS映えするライフスタイルや高級ブランドではなく、人間の中身なのだ。
晴耕雨読なんて、最高の贅沢ではなかろうか?
さて、今日は二つのゲームを紹介したけど、あなたはどちらのゲームに参加したい?
富を築く、豊かさを手にいれるゲームに参加したいと思われた方は是非今日読んだことを思いだして、今から何かたったひとつのことでもいいので見つけて動いてみてください。
最後に、私は長く投資をし続けて気がついたことが一つある。
投資家は基本みんなポジティブ思考だということだ。
何故なら、自分が(我が家は夫だ、ありがとう夫よ)稼いできたお金を、上がるだろうという前向きな気持ちで、架空の、実際には持つこともできないセキュリティ(証券)、へ託すわけだから。
下がるかもなどと後ろ向きな姿勢で投資をしているという人は見たことも聞いたこともないが、どうだろう?
種を植えて、水をやり、明るい気持ちで育つのを待つ。すぐには何も起こらない、何も見えない。でも土の中で、種は確実に成長へと動き出している。
だから私は今日も種を植えて、育てる。お金も植物も育つ楽しさはよく似ているからだ。
