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対談:風忍(かぜしのぶ)✖️まんだらけコンプレックス店長 竹下典宏(たけしたのりひろ)

2026年3月3日。
まんだらけと漫画家、風忍先生とのコラボレーションアパレルなどのプロダクトがリリースされました。⇩

これを記念して、風忍先生(写真左)とまんだらけコンプレックス店長の竹下典宏(写真右)との特別対談を実施しました。竹下は、風忍先生の大ファンであり、これまでに発表されてきた作品ほぼすべてをコレクションするほど。そんな風忍マニアが、まだ風忍先生のことを詳しく知らない人に向けて、代表作である『地上最強の男 竜』を軸に、これまで発表されてきた作品や影響を受けたきた事柄について触れながら、風忍先生がどのような作品を表現されているのかを聞きます。

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大塚時代に『ローン・スローン』
みたいな漫画を描きたいと思った


竹下店長の持ち込んだ風忍作品コレクションの量に驚く、風忍先生。

竹下典宏(以下、竹下):「僕が風先生の存在を知ったのは、もとを正すと永井豪先生の『デビルマン』なんですよ。もっとこういう漫画がないかなと思い、ダイナミックプロの漫画を読んでいく中で、風忍先生の『地上最強の男 竜』(1977年連載)に出会って、ものすごい衝撃を受けました。その後も、こういう漫画をもっと読みたいと思って探しているんですが、なかなか出会えなくて。そんな風に、自分が出会ったこともないような面白い漫画を読みたいと思って、<まんだらけ>に入社して今に至るんです。あの時、『地上最強の男 竜』を読んでいなかったら今の自分はなかったと思います」

風忍:「ありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて、とても嬉しいです」

3/3(火)から、まんだらけコンプレックスにて販売開始となった、地上最強の男 竜 Tシャツ カラー
3/3(火)から、まんだらけコンプレックスにて販売開始となった、地上最強の男 竜 Tシャツ モノクロ

竹下:「それこそ『デビルマン』であれば、多くの人が手に届く位置にある漫画ですが、風先生の作品は一歩踏み込んでマニアックな世界に入っていかないとなかなか出会えないと思うんです。こんなにも絶大なパワーを持った作品が存在するんだってことにビックリしてしまったんです。」

風忍:「いやいや、ありがたいです。店長さんだとお聞きしていたのでもっとご年配の方かと思っていたのですが……」

竹下:「はい、私が生まれたのが1977年で、ちょうどその時に『地上最強の男 竜』が連載されていたんですよ。実際に作品を読んだのは大学生の頃でした。だからリアルタイム世代ではないのですが心から楽しく読ませていただいています。あと、僕は映画も好きなんですが、日活っぽい雰囲気が感じられたり、風先生が影響を受けてらっしゃるものが垣間見られるのもすごく楽しいです」

風忍:「ああ、そうですか。すごく深く読み込んでいただいて」

竹下:「<まんだらけ>には海外からのお客様も多いのですが、風先生の作品は、初見であろうとなかろうと、世界中の誰にでも届くパワーがあると思っていて、このインタビューでは、そういう人へ届けたいと思っているんです。今日のインタビューに際して、改めて風先生の漫画をしっかりと読み直してきたんですけど、個人的には90年代の書き下ろしの作品『電子立国 日本の自叙伝』(1998年発表)、『雨月ものがたり』(1996年発表)が特に好きです。風先生といえば、鈴木清順監督作品のような超展開というか、場面が一気に変わっていく作風が特徴だと思うのですが、『雨月ものがたり』は毛色が違いますよね。この幽玄な世界と絵のタッチがすごくマッチしていて、改めてすごく感動しました」

風忍:「これ(『雨月ものがたり』)はね。また他の出版社から新しく出してほしいという思いはあるんですよ」

竹下:「ですよね。生意気な言い方になってしまうのですが、この作品は、風先生が描きたいものと、先生の理念である“読者を絵で驚かせたい”という、2つの思いが調和の取れた状態で表現されていると思うんです。淡い物語がドラマチックに表現されているのはすごく心を動かされるなと。対して『電子立国 日本の自叙伝』は正反対ですね。すごく硬質な世界観でドキュメンタリー的です。リアリティがあってそこが面白い。もしかしたらなんですが、風先生はもっとこういう作品を描きたいと思われていたんじゃないかなと思いました。緊張感がある空気感が風先生の作風にすごくマッチしていると感じます。この2作は異質なのかもしれないですけど、本当にすごく感動しました。もっと読まれるべき作品だと思います」

風忍:「そう言っていただけると嬉しいです。『電子立国 日本の自叙伝』は当時のマネージャーさんが持ってきてくれた話で、NHK出版から出たんですよ。あと、単行本になっていないものだと、稲川さんの怪談(『真説 コミック稲川淳二のすご~く恐い話』)をいくつか描いたんですよ。あれは出してほしいと思いますね。最近の話でいくと、2年ほど前にフランスとブラジルからも短編集(『バイオレンス&ピース』)が出たんです。あれはすごく嬉しかったです」

竹下:「一時期、新聞連載をやられていた時期もありますよね。『タイガーマスク ザ・スター』(1993年連載)、『六本木ソルジャー 喪服の探偵』(1994年連載)など。この辺りの仕事が自身の作風に影響を及ぼした部分ってありましたか?」

風忍:「これは必要に迫られたところも大きかったんです。『タイガーマスク ザ・スター』はアシスタントが1人だけ付いていたんですが、新聞なのでページも多いですし、とにかくスクリーントーンを使わないようにしていましたね。一方で『六本木ソルジャー 喪服の探偵』は真樹先生(作品を描く上でコンビを組んでいた真樹日佐夫氏)が、より劇画っぽくしてほしいという要望があったので、ページ数を減らしてスクリーントーンを使って、という背景があったんです」

この日のために、自宅からたくさんの風忍先生作品を持ち込んだ竹下店長。こんな機会はない!と意気込んで、対談に挑んだという。


竹下:「なるほど。改めて見ると、この辺りにも日活っぽさが感じられますね。以前、とある企業と仕事をした時に、社内に漫画の展示を行いたいという話があったんですね。デザイナーに向けたもので感性をくすぐるような展開にしてほしいというオーダーだったので、僕は風先生の作品とフィリップ・ドリュイエの『ローン・スローン』などをセレクトしたんですけど、すごく喜ばれたんです。やっぱり未見の人の感性を揺さぶるパワーが確実にあるなってことを強く感じたんです。この機会なので、改めて『地上最強の男 竜』が誕生するまでの流れについてお聞きしたいのですが、具体的にどういったものから影響を受けてきたんですか?」

風忍:「私が永井先生のアシスタントになった頃、ダイナミックプロは大塚にあって、その時代に『ローン・スローン』を見て衝撃を受けたんです。ほぼ同時期に映画『燃えよドラゴン』にすごく感激しまして。それまではギャグ漫画を描いていたんですけど、自分も『ローン・スローン』みたいな漫画を描きたいと思うようになっていったんですね。で、ブルース・リーが生きていたらどんな映画を作っていただろう? ということと、フランス語で(『ローン・スローン』は)読めないけど、だったら自分で作ってしまえばいいという考えがあってだんだんと出来上がっていったんです」

文芸坐で観た清純作品など
映画から多大な影響を受けた

竹下:「さらに、そこに映画からの影響があったんですよね。鈴木清順監督作品だったり」

風忍:「そうです。大塚時代に池袋の文芸坐で清順監督の特集がされていて、何人かで観に行ったんです。その中で1番感激したのは『東京流れ者』ですね。あの作品は今でも観ています。鈴木清順監督生誕100周年を記念してブルーレイのボックスセットが発売された時は、すぐに購入したくらいです。当時、文芸坐で観ていると、いい場面になると観客が拍手したり掛け声を上げたりしていたんですよ。それまで、黒澤明監督の作品はリアルですごくいいなと思っていたんですけど、こういう映画もあるんだと思ってすごく感動しました」

竹下:「僕も『東京流れ者』はすごく好きなんですよ。構図がカッコいいですし、オープニングがモノクロで始まって回想シーンでカラーにパッと切り替わって。あれがいいですよね」

風忍:「そうなんです。最近、朝日新聞の<ひと>というコーナーで、『侍タイムスリッパー』や『カメラを止めるな!』といった日本映画を海外に紹介している人のインタビューが掲載されていたんですね。ロンドン生まれの方だけど、アメリカに渡って10代の頃はレンタルビデオショップで仕事をしていて、その頃に『東京流れ者』を観て衝撃を受けて日本映画が好きになったそうなんですが、わかるわかる、という感じがしたんです」

竹下:「わかりますよね。あの作品も、まったく予備知識なしで観ても純粋にカッコいいと感じられる画がたくさんあります。そんな映画を風先生が好きで、漫画にも影響を与えられているのはすごく腑に落ちます」

風忍:「最初のシーンで主人公が「頼むから俺を怒らせないでくれ」って言うでしょう。あれ、カッコいいですよね。清順監督の作品ですと『刺青一代』も好きです。なかなかインタビューでこういう映画の話をする機会がないので嬉しいですね」

竹下:「すいません、映画の話ばかりしてしまって(笑)。話を戻しますが『地上最強の男 竜』を描くにあたって、フィリップ・ドリュイエみたいな作品を自分で描いてしまえばいいと思った、というお話がありましたが、実際に描くのは相当な苦労があったのではないかと思うのですが」

風忍:「連載が決まった当時、ああいった絵をなかなか素早く描くことができなかったんですよね。それで何話か描き溜めて順々に雑誌に掲載するという形を取っていたんですけど、だんだんと追いついてしまって」

竹下:「そうなりますよね」

風忍:「背景も含めてアシスタントに任せっきりにせず自分で描いていた部分はけっこう多いですね。自分で描いていました」

竹下:「いや、他の人に描けるものではないですよね。にしても、僕は知らなかったんですが、編集部から終わりにしてほしいという話があって『地上最強の男 竜』を終わらせた、という話を知ってすごく驚いたんです。全体として物語がまとまっているので、終わらせてくれって言われて無理に終わらせたようにはとても思えなくて。そもそも、もし連載を続けることができたなら他の展開や構想があったりしたんでしょうか?」

風忍:「あの当時、編集部としてはとにかく終わらせてほしいということだったので。何かやり残したことがあったというわけではありませんでした。とにかく集中して描いていたので、連載中はダンボールでピラミッドタワーを作って、その中で作業していたんですよ」

一同:「(笑)」

竹下:「僕、ちょっと感動しちゃった話があるんですけど、時代的にミュージシャンにしてもそうだったと思うんですが、ドラッグからパワーを得ていた人も多いんじゃないかと思うんです。そんな中、風先生はインタビューでナチュラルパワーだってことを仰っていて本当にすごいなと。そのダンボールピラミッドタワーって全身が入り込めるようなサイズ感だったんですか?」

風忍:「いや、こんくらいのやつ(頭に被る程度のもの)」

竹下:「あはは!」



風忍:「あの頃は、ノストラダムスとか流行っていたじゃないですか。あとはオカルトが好きだったりしたので、そういうのを詰め込んだ感じですかね。『地上最強の男 竜』を作った時は」

竹下:「その辺りが物語に反映されているように感じますね。宮本武蔵を蘇らせるという展開も奇想天外というか。ブルース・リーは好きだったからというのはわかるんですけど」

風忍:「あれはね。なんか強いやつに出てきてもらおうかなって。全然深くは考えていなかったんです。例えるなら紙芝居みたいなものじゃないかなって思います。そんなに話はまともじゃないかな(笑)」

鈴木清順監督作品の話で盛り上がる風忍先生と竹下店長


海外の漫画雑誌を見て
その緻密さに感動した

竹下:「でも、『地上最強の男 竜』発表後は方々から反響があったんじゃないかと思うのですが、どうでしたか?」

風忍:「それ以降、短編を描いてほしいという依頼がくるようになって、短編集(バイオレンス&ピース)まで出せるまでになりました。短編と言えば、映画と結びつけたエピソードだと『ガバメントを持った少年』(1977年発表)は『タクシードライバー』を観た時の衝撃からなんですよ。全然ストーリーは違うんですが、ああいった感じのものを描きたいと思ったんです。今でも時々見ますよ。マーティン・スコセッシ監督もすごく好きで影響を受けています」

竹下:「そうでしたか! 他はどんな映画作品がお好きですか?」

風忍:「最近ではデンゼル・ワシントンが主演の『イコライザー』はすごく好きですね。3作品、発表されているんですけど、1作目から順番に観るのをおすすめします。あとは『ワンダーウーマン』も好きです」

竹下:「たしか『ワンダーウーマン』については、好き過ぎてコスプレ用の衣装も購入されたんですよね。『タクシードライバー』と聞くと、 クリストファー・ウォーケンの『デッドゾーン』も思い出されます。僕もああいう作風の映画は大好きです。そう言えば、『地上最強の男 竜』を描かれた後に、とあるパーティ会場で梶原一騎先生がすごくほめられていたんだとか」

風忍:「そのようです。直接聞いたわけではないのですが、演出が面白いって仰っていたという話を聞いてすごく嬉しかったです」

竹下:「その話を聞いて、もしかしたら<梶原先生:原作、風先生:作画>っていうタッグもあったのかな? なんてことを想像してしまいました。いやぁ、読みたかったなぁ……。ちなみに、今まで描かれてきた作品の中で、特に気に入っていたり、思い入れがある画や漫画があったら教えていただけますか?」

風忍:「やはり、1番は先ほど申し上げた『ガバメントを持った少年』になりますかね。あと、『ヘビーメタル(HEAVY METAL)』(アメリカのSFファンタジー雑誌)に掲載された『男は度胸』(1980年発表)はしっかりと時間をかけて描き込んでいきました」

竹下:「仰る通り、すごく緻密に描かれていますよね。本当にカッコいいです。そこでいくと、どのような漫画から影響を受けてきましたか?」

風忍:「最初に『ヘビーメタル』を見た時に、日本の漫画と全然違うと思ったんですよ。すごく描き込んでいて素晴らしいと思います。他にも『ヴァンピレラ(VAMPIRELLA)』、『イーリィ(EERIE)』、『1984』といった雑誌があって読んでいました。あと、アメコミにすごく詳しいアスカ蘭さんという方がアレックス・ニーニョ(Alex Niño)さんのことを紹介されていて、買いに行きました。この辺りからの影響も強いと思います。そういった流れがあり、周りのいる人がすごく苦労して『ヘビーメタル』へ掲載できることになったんです」

竹下:「当時ですと、日本の漫画が『ヘビーメタル』に掲載されているイメージがまったくないですよね」

風忍:「そうなんです。以前だったらアメコミ雑誌と言えば、もっと子供向けの『スーパーマン』などのヒーローものだったんですが、もっと大人が読めるような雑誌を作りたいという思いから『ヘビーメタル』や『ヴァンピレラ』が出来たそうです」

竹下:「今、お話いただいた『男は度胸』、『ガバメントを持った少年』も収録されている短編集『バイオレンス&ピース』(1980年刊行)ですが、この単行本が発表された時はどんな反響があったんですか?」

風忍:「具体的な話ですと、石井聰互(現:石井岳龍)監督からLPのジャケットアートワークを描いてほしいというオファーをいただきましたね」

竹下:「1983年に発表された『アジアの逆襲』のアートワークですね。あの“サイバー仏像”みたいなジャケット、カッコいいですよね。大好きです。あれは映画にもなっていますが物語はすごいぶっ飛んでいるんですよね。そこに風先生のアートワークが加わることで、さらに強烈な印象を与えられます」

今回のコラボグッズ 男は度胸 ポスター。
おれはヤクザだ だれにもまけない強い男だ!


物として好きな少女漫画
原点にある漫画の実写

風忍:「あと、自分が好きな漫画でいくと、大塚時代に古本屋で買っていた貸本屋向けの少女漫画がすごく好きです」

竹下:「その、貸本屋向けの少女漫画というのは悲劇的なストーリーの少女漫画のことですよね」

風忍:「そうです! まだ戦後の雰囲気がちょっと残っているようなものですね。物として好きなんですよ。表紙にも裏表紙にも女の子が描かれていてすごく可愛らしい感じがしますから。特定の漫画家さんの作品を追いかけているわけではないのですが、例えば、中原淳一先生の絵が好きです。ただ数冊しか持っていなくてもっと読みたいと思っているんですけど」

竹下:「たしかに貸本屋時代の少女漫画は復刻が進んでいるわけでもないので数が少ないんですよね。ホラー作品はたくさん出てくるのですが」

風忍:「ああ、ホラーと言えば、楳図(かずお)先生の『へび少女』がすごく好きですね」

竹下:「幼少期ではどうでしょう?」

風忍:「子供の頃は『少年』という漫画雑誌をよく見ていました。当時の漫画は今と違って実写になることが多かったんです。アトムや鉄人28号だとか。その中で特に好きだったのは『少年ジェット』です。数年前にDVDでリリースされて、ほとんど全部揃えました(笑)。そのくらい、当時の漫画の実写が好きです」

竹下:「では、風先生が漫画家として活動され始めた時期、連載などを持つようになるに至る時期に意識されていた漫画はありますか?」

風忍:「好きだったのは『カムイ外伝』や『ワイルド7』ですね。飛葉ちゃん(『ワイルド7』の主人公)が作中で持っていた銃のモデルガンは今でも出たりしますもんね」

竹下:「そうですね。『ワイルド7』は復刻版が出たりと、今も人気があります。いや、貴重なお話ばかりですごく楽しい時間でした。最後に、風先生が今注力されていることや、今後やっていきたいことを教えていただければ幸いです」

風忍:「絵本を出したいと思って2作作ったんですよ。ただ、それがどうなるかはまだ未定なんです」

竹下:「その絵本はどういった内容なんでしょうか?」

風忍:「怪獣が出てくるような内容なんですが、少しアクションっぽくしたいという思いがあって1つの絵で見せるのではなく、細かく(コマを)割っているんです。これがどうなるかというところと、猫の絵を描いているので何らかの形になればいいなと考えているところです」

竹下:「その絵本も含め、今後の風先生の活動を引き続き楽しみにしております。ありがとうございました」

風忍:「今回のまんだらけとの取組みは、自分にとって、とてもありがたいお話です。こちらこそ、本当にありがとうございました」

対談終了後も、漫画や映画の話で盛り上がっていた。

ライター:田島諒
撮影:内藤啓介

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