武士道 第16章 #22 今日三つの別々の日本が相並んで存在している ・旧日本 ・新日本 ・過度的日本
#22 Mr. Ransome says that "there are three distinct Japans in existence side by side today, — the old, which has not wholly died out; the new, hardly yet born except in spirit; and the transition, passing now through its most critical throes.


私の訳:ランサム氏は言う、「今日三つの別々の日本が相並んで存在している、--- 旧日本は未だ全く死滅せず、新日本は漸く精神において誕生したに過ぎず、そして過渡的日本は現在その最も危機的な苦悶を経過しつつある」と
hardly yet born except in spirit:精神において意外、まだほとんど産まれていない = 漸く精神において誕生したに過ぎず
Hardly:ほとんど~ない












ご質問の英文(新渡戸稲造の『武士道』第16章などで引用されている一節)において、passing now through its most critical throes は分詞構文として扱うのが最も自然かつ文法的に適しています。
具体的な構造と訳し方は以下の通りです。
1. 構造の解説
この一節の後半部分は、関係代名詞節が連続して並列(パラレリズム)されているのが大きな特徴です。
the old :whichhasnotwhollydiedout
the new:hardlyyetbornexceptinspirit
the transition:hardlyyetbornexceptinspirit
このように、3つの名詞( the old, the new, the transition )それぞれに対して、直後に修飾語句が置かれている並列構造です。the transition(移行期)の後に続く passing は現在分詞であり、「(移行期が)~を経ている」という主語と述語の関係(意味上の主語 = the transition)を持った「付帯状況の分詞構文」と見るのが文脈に合致します。
2. なぜ「分詞構文」と判断できるのか
もしこれを「関係代名詞節の省略」とみなして which is passing now... の which is が省略された形と解釈しても、結局のところ分詞を用いた修飾(分詞句)という着地点は同じになります。
文法的には、直前の the transition を先行詞とする関係代名詞節の省略、あるいは純粋な分詞構文のどちらで解釈しても意味は全く変わりません。
3. 日本語訳の目安
この部分は「移行期」の現状を説明しているため、以下のように訳すのが一般的でスムーズです。
「移行期は、現在、最も危機的な苦難(産みの苦しみ)のただ中を通過している」
(意訳:そして移行期にある今は、まさに最も苦難のただ中にある)

この文章の「Ransome」とは、19世紀末に日本を訪れたイギリスのジャーナリスト兼エンジニアであるスタッフォード・ランサム(Stafford Ransome、1860~1931年)のことです。
この言葉は、新渡戸稲造の名著『武士道(Bushido: The Soul of Japan)』の第16章で引用されたことで非常によく知られています。
彼がどのような人物であったか、詳細を以下にまとめました。

スタッフォード・ランサムの人物像
肩書と経歴: イギリス出身の機械技術者(エンジニア)でありジャーナリストです。イギリスの主要紙の特派員として世界各地を巡りました。
日本との関わり: 明治中期から後期にあたる1890年代後半(日清戦争の後、日露戦争の前)に特派員として日本に滞在しました。
著書: 1899年に、日本での見聞をまとめた『Japan in Transition(過渡期の日本)』という書籍をロンドンとニューヨークで出版しました。ご提示いただいた英文は、まさにこの本の冒頭(序文)に登場する有名な一節です。
視点の特徴: 当時、多くの西洋人が日本を「ゲイシャやフジヤマの国」というオリエンタリズム的な目、あるいは「西洋の単なる模倣国」として見ていました。しかしランサムは、技術者ならではの客観的な視点から、日本が急速に工業化・近代化し、独自の力強い国へと生まれ変わろうとする「激動のエネルギー(陣痛)」を正確に見抜いていました。 [1, 2, 3]
新渡戸稲造は『武士道』の中で、このランサムの「日本は激しい変化の過渡期(移行期)にある」という観察眼を評価し、引用の土台としました。







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