武士道 第15章 #30 社会の進歩は、凡庸な大衆の努力ではなく、傑出した少数の偉人の力によるものだ (マーロック)
#30 Mr. Mallock, in his exceedingly suggestive book, Aristocracy and Evolution, has eloquently told us that "social evolution, in so far as it is other than biological , may be defined as the unintended result of the intentions of great men” ;


私の訳:マロック氏は、その非常に示唆に富む書『貴族政治と進化』の中で、雄弁にこう語っている。『生物学的なものを除外した社会進化は、偉人たちの意図がもたらした意図せざる結果として定義できる』








英単語の意味を考える


日本語を英語にする



ワンポイント解説
この文章の肝は、「unintended result(意図せざる結果)」 と 「intentions(意図)」 の対比です。「偉人が『こうしよう』と思って行動したことそのものよりも、その行動が連鎖して、結果的に本人が予想もしなかった形で社会が変わっていくことこそが、社会の進化である」というマロックの洞察を表現しています。
解説・文脈
この引用のポイントは、**「社会の進歩(進化)は、凡庸な大衆の努力ではなく、傑出した少数の偉人(偉大なリーダーや発明家など)が自身の目的のために行動した結果、偶発的に社会全体が良くなったものである」**というマロックの考え方を示している点です。
"in so far as it is other than biological":
人類の身体的な進化(生物学的進化)は自然淘汰によりますが、ここではそれとは別の「文化や社会構造の進化」に焦点を当てています。"unintended result of the intentions":
偉人たちは「社会を良くしよう」と意図したのではなく、単に「自分の富、名声、技術」を追求しました。その追求の結果が、結果として社会を発展させた(意図せざる結果)というパラドックス(逆説)を表現しています。
ウィリアム・ハレル・マロック(William Hurrell Mallock, 1849–1923)は、19世紀末から20世紀初頭のイギリスで活動した、保守主義・貴族主義的な思想家、経済評論家、および小説家である。彼の思想の主な特徴は以下の通りである。
1 徹底したエリート主義(偉人説)
提示された引用にある通り、マロックは文明の進歩を「大衆の総和」ではなく、「少数の卓越した能力を持つ個人(偉大な人間)」による功績と捉えた。社会の進化は、これら一握りの天才たちの創意工夫や意図が、意図せぬ形で社会全体に波及した結果であると論じている。
2 社会主義・平等主義への批判
当時台頭していた社会主義に対して、極めて批判的な立場を取った。彼は「人間は能力において根本的に不平等である」という前提に立ち、もし富や権力を強制的に平等化すれば、進歩の源泉である個人の創意欲求が削がれ、文明は衰退すると警告した。
3 伝統的価値と宗教の擁護
科学的合理主義や実証主義が広まる中で、それらが道徳や社会の安定を支える宗教的信仰を破壊していると危惧した。保守的な立場から、社会の秩序を維持するための伝統や信仰の重要性を説き続けた。
結論として、マロックは「社会の進歩は少数の能動的なエリートによって牽引されるものであり、平等主義は文明を停滞させる」と説いた、当時の反民主主義的・反社会主義的論客の代表格であるといえる。







いいなと思ったら応援しよう!
このたびはご評価をいただきありがとございます。また、チップまで下さるとは私にとって大変な喜びです。さらに英文訓読の役を進め、アップさせていきたいと思います。