売上を追うな、削るべきは〇〇費です。
【著者プロフィール】
片岡宏明|(株)スカイダイニング代表
経歴: 飲食店長10年/経営25年/システム開発12年(導入店舗2,000店舗以上)
「飲食業界を子供たちの憧れの職業に」をテーマに、飲食店専用「ワンレジ」を開発、販売。 役に立つ現場目線の経営ノウハウを発信中✨
利益が出ないからといって、スタッフのシフトを無理に削ったり、少人数での運営を強要したりしていませんか?実はこれ、多くの経営者が陥りがちな「絶対にやってはいけない間違ったコスト削減」です。
飲食店経営において、人件費は目に見えて削りやすいため、真っ先に手をつけてしまいがちです。しかし、業務量が変わらないまま人を減らせば、サービスの質が落ち、お客様が離れ、結果としてさらに利益が減るという負のスパイラルに陥ります。
今回は、お店のファンを減らさずに、仕組みと見直しだけで利益を劇的に改善する「今すぐ削るべき無駄コスト」を3つのポイントに分けて解説します。精神論ではなく、明日からすぐに実践できる具体的なアクションプランまで落とし込んでお届けします。
1. システム化を伴わない人件費の削減は「お店の寿命」を縮める
人件費、いわゆるレイバーコストは現金流出として目に見えやすいため、経営状態が悪化すると真っ先に削減の対象になりがちです。しかし、現場の業務プロセスをそのままにして人員だけを減らすのは最悪の選択です。
人員不足になった現場では、料理の提供スピードが遅れ、テーブルの片付けが間に合わず、お店の衛生状態も悪化します。つまり、飲食店の命であるクオリティ、サービス、クレンリネスの3つが著しく低下し、お客様の満足度を根本から壊してしまうのです。
さらに深刻なのは、過重労働を強いられた従業員の疲弊と離職です。従業員が1人辞めるごとに、新たな求人広告費や面接の手間、そして新人スタッフが一人前になるまでの教育コストが発生します。目先の人件費を数万円削ろうとした結果、その数倍もの「見えない採用損失」を抱えることになるのです。
ある複数店舗を展開する飲食店では、これまで店長の経験と勘に依存していた発注業務やシフト管理を見直しました。飲食店専用の受発注・勤怠情報一元管理システムを導入し、過去の売上データや時間帯別の客数予測に基づいた計画的な自動発注とシフトの最適化を行ったのです。
その結果、必要な人員はしっかり確保しつつ、アイドルタイムの無駄な人員配置を削減することに成功し、月間30万円もの利益を新しく創出することができました。
明日からすぐに実践できるアクションプランは、スタッフの給与やシフトを闇雲に削るのをやめることです。その代わりに、スタッフが歩いている「無駄な動線」や、手書きで処理している「無駄な事務作業時間」を見つけ出してください。
それらをITツールやシステムの導入によって削減するのです。人間が行うべき心のこもった接客と、システムに任せるべき管理業務を明確に切り分けることが、利益向上の絶対条件となります。
2. グルメポータルサイトへの過度な依存による無駄な広告宣伝費
毎月高い広告費を払って大手グルメポータルサイトに掲載しているのに、なぜかリピーターが増えず、利益率が圧迫されているという現状はありませんか?
飲食店の販促費は、売上高に対して一定の相場があるとされていますが、集客の大半を大手グルメポータルサイトの有料上位表示プランや予約ごとの課金システムに依存しているお店では、この比率が適正水準の倍近くまで跳ね上がっているケースが非常に多いのです。
ポータルサイトを経由して来店するお客様の多くは、「お店のファン」というよりも「割引クーポンのファン」、あるいは「立地と価格の条件がたまたま合っただけのお客様」になりがちです。そのため、お店への愛着や忠誠心が低く、再来店に繋がりにくいという構造を持っています。莫大な広告費を払い続けて、常に新規集客を買い続けなければならない状態は、利益率を恒常的に押し下げる最大の元凶です。
ある地域密着型の個室居酒屋チェーンでは、勇気を持ってグルメサイトのプランを無料または低額のプランにダウングレードしました。そして、浮いた予算と労力をGoogleビジネスプロフィールの最適化、いわゆるマップ検索対策と、お客様からいただいた口コミへの返信にすべて投入したのです。
質の高い料理の写真を定期的に更新し、お店の強みを明確にした結果、クーポン目当てではない高粗利の新規予約数が大幅に増加し、毎月の販促費用を半減させることに成功しました。
明日から実践できる具体的なアクションプランは、Googleマップの店舗情報を常に最新の状態に保ち、いただいたすべての口コミに対して誠実で丁寧な返信を行うことです。
さらに、公式LINEなどを導入し、一度来店いただいたお客様にデジタルスタンプや誕生日クーポンを適切な頻度で配信する仕組みを作ってください。一人の顧客が生涯を通じてお店にもたらす利益の総額を最大化させる仕組みを作ることこそが、脱ポータルサイトの第一歩です。
3. 思い込みで放置されたままのインフラ固定費の罠
「家賃や水道光熱費は絶対にかかる固定費だから、これ以上削ることはできない」と思い込んでいませんか?この思い込みこそが、利益を静かに食い潰している大きな罠です。
飲食店の経営において、食材費と人件費の合計バランスを抑えることは基本ですが、そこに家賃を加えたトータルの店舗コスト構造で俯瞰することが必須になります。もし食材費と人件費が適正であっても、家賃の負担が大きければ、利益を残すことは極めて困難になります。
さらに、売上が順調な時ほど、電気代やガス代、POSレジのシステム利用料、クレジットカードの支払手数料といった固定費の見直しは後回しにされがちです。しかし、これらは毎月確実にお店のキャッシュを奪っていくものです。
あるインバウンド人気の博多とんこつラーメン店では、スープを長時間煮込むための膨大な光熱費が大きな負担となっていました。そこで、長年放置していた古い電力契約を見直し、複数の電力会社で比較・切り替えを行いました。
その結果、初期投資ゼロで月額の電気代から20パーセントものコスト削減に成功したのです。これは毎月数万円の純利益を生み出したことと同じです。一般的な営業利益率のお店でこれだけの利益を出そうとすれば、年間で数百万円規模の追加売上が必要になります。売上を増やすのは大変ですが、固定費を削るだけでこれと同じ価値が生まれるのです。
明日からすぐに実践できるアクションプランは、今すぐお店の電気料金の明細書と各種手数料の契約書を引っ張り出し、専門業者に見直しや相見積もりを依頼することです。
固定費の削減は、一度見直せばその効果が半永久的に続きます。これを放置すること自体が経営の怠慢であると強く認識し、すぐに行動に移してください。
4. テクノロジーを味方につけて温かいお店を作る
今回は「今すぐ削るべき無駄コスト」として、システム化を伴わない無駄な人件費の排除、グルメポータルサイトへの無駄な広告宣伝費の排除、そして放置されたままのインフラ固定費の排除について解説しました。どれも知っているだけで終わらせてはいけない、お店の未来に直結する重要なポイントです。
先日、ある大手イタリアンチェーンに視察に行った際、店内を最新の配膳ロボットが非常にスムーズに動き回っていました。そのおかげで、ホールのスタッフたちはロボットに運搬を任せ、お客様のテーブルで笑顔でメニューの説明をしたり、お子様に手を振ったりと、本当に温かい接客に集中できていたのです。
それを見た時に、ITやシステムは人間の仕事を奪うものではなく、人間らしい温かいサービスを提供するための最高のパートナーなのだと改めて確信しました。
皆様のお店でも、テクノロジーを上手に味方につけて、お客様にとってもスタッフにとっても、より良い空間を作っていきましょう。まずは電気代の明細を確認するだけでも構いません。ぜひ今日から一つでも行動に移してください。
💡動画でもっと分かりやすく!(YouTube:ワンゼミ)
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