セカンドキャリアは“現役中”に始まっている③ なぜ現役中に“仕事”ではなく“思考”を教えるのか
社会人スポーツのセカンドキャリア支援というと、「現役のうちに仕事を教えるべきだ」という議論になりがちだ。
だが、実際には、現役選手に“仕事そのもの”を教えるのはほぼ不可能である。
時間がない。
季節性がある。
遠征も合宿もある。
業務の繁忙期など関係なく競技は進む。
この現実を前に、
「仕事を覚えさせる」はどうしても破綻する。
では、現役中に何を仕込むべきなのか。
その答えが “思考の型” である。
■ 仕事は教えられなくても、思考は渡すことができる
思考の型とは、
「見えないものを見るための道具」のようなものだ。
たとえば競技の世界では当たり前の問いがある。
「この練習、何のため?」
トップ選手ほど、この問いに敏感だ。
目的が腹落ちしていない練習は集中できないし、
成果も出にくい。
これは仕事の世界でもまったく同じ現象が起きる。
なぜその業務をやるのか
何を目指しているのか
どこに価値が生まれるのか
これが分からないと、人は動けない。
思考の型とはつまり、
「目的 → 手段」の順番で考える習慣
のことだ。
VE(バリューエンジニアリング)はその一例にすぎないが、
何であれ“目的から考える思考法”が身につけば、
競技にもキャリアにも横断的に効く。
■ なぜ“思考法”は現役中に入れやすいのか
仕事は部署ごとに違うが、
思考法は競技をやりながらでも共通で学べる。
しかも、競技の現場ほど
仮説
目的
検証
改善
のサイクルが高速に回る世界はない。
だから思考法教育は、
むしろ現役期間の方が吸収しやすい。
現役中に“仕事のスキル”を積むことは難しい。
しかし、
現役中に“考える型”を入れることは十分にできる。
そしてそれが競技にも仕事にも効く。
■ 思考の型は、誰が教えるべきなのか?
現場の上司ではない。
部署でもない。
人事・教育部門が集合でやるべきだ。
理由は2つある。
(1)現場に教育責任を背負わせると、必ず破綻する
受け入れ部署は日々の業務で手一杯だ。
そこに“思考法の教育”まで求めるのは酷というもの。
(2)思考法は職場ごとに教え方がブレては意味がない
教育内容が統一されないと、選手は混乱する。
人事が設計・実施した方が、
再現性のある土台がつくれる。
だからこそ、
思考法は“集合教育”で一気に入れた方が圧倒的に効率がいい。
■ 「正解を教えない」ことが、最大の教育になる
多くの思考法は、正解を教える型ではない。
問いを立てる
仮説をつくる
目的と手段を分ける
結果ではなく構造を見る
こうした“考える順番”を渡すことで、
選手は競技にも仕事にも応用できる。
これはスポーツの根本と相性がいい。
強豪チームほど、
「選手が状況を読み、自分で判断する力」
を重視する。
つまり、
思考の型は、引退後のためではなく
現役の競技力を上げるためにこそ効く。
ここが多く見過ごされている要点だ。
■ この回で伝えたいこと
セカンドキャリアは、
引退後に始まるものではない。
そして現役中に入れるべきなのは、
仕事の技能でも
部署の知識でも
業務フローでもなく
“考える筋道”という普遍的な土台である。
これは競技にも、キャリアにも、
職場にも、人生にも効く。
だからこそ、
企業スポーツの支援で最初にやるべきは
選手の“思考の型”を整える仕組みを作ることである。
次回は続く。
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https://note.com/oneforward/m/mbb2023c35b23
