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三菱VS中島 零戦と隼はどちらが強かったか?〜優秀戦闘機の定義とは。

 ミリタリーマニアなら一度は夢想するでしょう、戦闘機強さランキング。
戦闘機同士を戦わせて優劣を決したいという思いは、昔も今もそう変わりません。

◆零戦と隼の模擬空戦の記録が存在していた

 数年前に産経新聞に興味深い記事がありましたのでご紹介。
零戦と隼がどちらが優秀だったか、実際に空戦をさせてみたという記事です。

 強烈なライバル意識が介在する帝国海軍と帝国陸軍は、面子は賭けるが記録には残さない、非公式な“手合わせ”(模擬空戦)を実施した。その結果、全般的に零戦の方がやや優勢だったと伝えられているとのこと。

産経新聞「零戦」と「隼」、どちらが優秀な戦闘機だったか? 実際に戦わせてみた

 勝敗はやや零戦有利といったところでしょうか。どういう条件で戦わせたのかが気になるところではあります。
 両者は外見も非常に似ており、エンジンも呼称が違うだけで同じ。搭載武装が大きな違いでしょうか(一式戦7.7mm機銃✕2門 零戦20mm機銃✕2門、7.7mm機銃✕2門)。

 航続距離は零戦の方が長いのに比べ、重量が軽いのは、いかに軽量化に苦労したのかが伺いしれますね。しかし、その半面、構造・工作が複雑になってしまったため、生産性の悪さが足かせとなったことも事実です。欧米戦闘機たちと比較して、製造に4倍も手間がかかるとも。
 かたや隼は、割り切った設計を導入することで、戦時下の必須条件である生産性を高めてました。

 あくまで性能を追求して、理想を達成するか? あるいは多少妥協しても、現実的な生産性を優先するのか? 設計思想の違いはこういうところで現れてきますね。

零戦(左)と隼(右)共に大戦を戦いきった良きライバルでした

◆生産性では中島が優位

 生産性という点からも両者の違いが見えます。新鋭ですが規模は小さい三菱と、すでに大企業の風格の中島飛行機という背景。

 当時の中島飛行機は、東洋最大の航空機メーカーでした。創業者は中島知久平氏。手がけている航空機の開発の種類も多く、製造・生産のノウハウも蓄積されていたと思います。
 見事に採用された零戦ですが、自分たちの名古屋工場では生産が間に合わなくなり、ライバルにあたる中島飛行機にも生産を担当してもらうことになります。
 その数、実際に生産された零戦の総生産機数10,430機の2/3にもなる7,000機近くが中島製零戦になります。ちなみに隼の総生産数は5,751機。
 もし、零戦が最初から中島の開発陣によって設計されていたら、生産機数も生産工程も、もっと上がっていたかもしれませんね。

三菱製零戦と中島製零戦の違いまでプラモ化されてます。スゴイ!
ファインモールド 1/48 帝国海軍 零式艦上戦闘機 五二型 (中島製)

◆クライアント(軍部)の満足度という評価基準

 どっちが強いかという定義は、なかなか難しく、低空で戦闘するのか、高高度での戦闘なのか?搭載する武器の破壊力なのか、加速性や機動力なのか?実際の戦果で比較するのか?大きな違いが出ます。ライターや評論家の意見も様々です。
 なのでひとつの基準として、私からは「その機体は、クライアントの期待にどれだけ応えられたか」も提案させて頂きたいと思います。要は「ニーズにどれだけ応えられて成果を出したか」を評価基準にするということですね。
 モノを開発するにはその製作目的が必ず存在します。戦闘機という兵器であれば、軍がクライアントとなり「こういう要求の性能のモノを作ってくれ」という注文をしてきます。
 例えば「格闘戦重視にしたい」とか「長距離飛行ができるものが欲しい」とか「とにかくすぐに迎撃に上がれる火力の大きいものが欲しい」とか。クライアントの要求通りの機体だと完成した時点で評価がまず優位になります。あとは実績を積んでいけば優秀な機体といえるのではないでしょうか。
 しかし、クライアントに時代を読む先見の明がないと駄作機が生まれてしまうこともありますね。
 結局の所、どちらが最強より、どちらが用途に最適か?という基準が大事なのかなと思います。まぁ、これはどの工業製品にも言える事ですが。

◆優秀機と呼ばれるには実際に活躍できたかという運もある

 日本海軍にはメーカーではなく、軍の空技廠というところで開発された「銀河」という双発高速爆撃機があるのですが、あまりにも凝りすぎてしまい、一般の工場の技術水準を上回ってしまいました。その結果、生産工程が複雑すぎて苦労した割に全然活躍ができなくて「国破れて銀河あり」とまで皮肉られれもいます・・。優秀な機体を作っても生産が追いつかないで負けてしまえば元も子もないですよね・・・・。
 性能が良くても実際に戦局に影響を与えなければは無用の長物ですし、生産に時間やコストがかかっても優秀とは言い難いです。

空技廠「銀河’高速爆撃機 優秀だけど製作が大変

 また人間と同じく、その飛行機にも「時の運」が作用することも。
 クライアントが双発戦闘機を要求して完成しても時代の流れでそれが必要なくなり、駄作機として終わりかけた機体も、夜間戦闘機というクライアントも予期しない状況になると、とたんに能力を発揮して、優秀機と称された機体もあります。なので、優秀とか最強とかという称号はなかなか難しいものがありますね。

夜戦戦闘機としては超優秀 メッサーシュミットBf110G-4

◆零戦vs隼は、三菱vsスバルに受け継がれている

 零戦vs隼の構図は、三菱の堀越二郎氏vs 中島の小山悌氏という形にもなり、その後の後継機開発は、三菱が零戦→雷電→烈風という流れに対し、中島は隼→鍾馗→疾風ともなります。
 中島が陸軍機を毎年順調に開発していったのに比べ、海軍は後継機に苦労したのは両技師の会社のバックボーンによるものも大きいといえます。
 中島は陸軍機以外にも、海軍機で、月光、彩雲、天山なども手がけていますので、人材や開発力などの総合力では中島の圧勝といえましょう。
 戦後は、その規模の大きさからGHQに徹底的に解体されて、三菱よりも弱体化してしまったのは歴史の皮肉ともいえそうです。
 両社は戦後は富士重工(現SUBARU)と三菱自動車工業に生まれ変わり、SUBARUレガシーや三菱パジェロなどの名車を生み出し、ライバルになります。
 無茶なクライアントはいなくなりましたが、今度は目に見えない購買層が相手となる訳です。
 平和な時代での競争は、顧客にしてみれば望ましいことですね。ちなみに私はスバル派です(^^)


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