日本軍用機の命名法〜その1 海軍機編
軍用機の名前を見てみると記号とか、色々な名前がついていますね。
実はどうやって付けているかおわかりでしょうか。
名前をつけるというのは、親から子に願いをつけるのと同じで、こう育って欲しいという願いが込められているものが多いのです。賢い子になって欲しければ「賢」とか。純粋な子に育って欲しければ「純子」とか。
「名は体を表す」とも言いますしね。今回はそんな命名の仕方をご紹介。
◆命名でその軍用機の使命が分かる
命名方法ですが、日本海軍の航空機では太平洋戦争が始まって間もなくの1942年の途中から名前による形式に変わりました。月光とか、雷電などです。なので、1942年以前に開発された零戦や九七式艦攻、九九式艦爆は記号のみで、何かにちなんだ名がないのです。
◆1942〜1945年の正式名称の付け方
その航空機の任務によって名称を変えています。
●戦闘機・甲戦 格闘戦、航続距離重視の陸軍でいうところの「軽戦」にあたる=「風」
強風、烈風、陣風など
●戦闘機・乙戦 重武装、上昇力重視。陸軍でいうところの「重戦」にあたる=「電、雷」
雷電、紫電、震電、天雷など
●戦闘機・丙戦 対爆撃機用。主に夜間戦闘機にあたる=「光」
月光、極光など
軽戦闘機はひらりと「風」の如く、重戦闘機は銃砲で「雷」の如く、夜間は「光」など、なるほど!と唸らせるセンスがありますね。

●偵察機=「雲」(彩雲、紫雲、瑞雲、景雲など)
●攻撃機=「山」(天山、連山、深山、南山、泰山など)※水平爆撃と雷撃のみ
●爆撃機=「星」(彗星、銀河、流星、明星など)※急降下爆撃が可能
●哨戒機=「海、洋」(東海、大洋など)
●輸送機=「空」(蒼空、蒼空など)
●練習機=「草・木」(紅葉、白菊など)
●特攻機=「花」(桜花、藤花、梅花など)
雲を超えて遠くまで行く偵察機、攻撃機は「山」の如く巨体である機が多いからなど連想がし易いネーミングです。特攻機は散ることを前提とした名前を付けるなど、こんな状況でも名前を上手くつけるものだと思います。

幻の大型爆撃機「富嶽」は富士山の別名で「山」に分類されるのでしょうが、日本海軍は独特の分類で、急降下爆撃を行える機体を爆撃機と呼び、水平爆撃および雷撃のみを行える機体を攻撃機(艦上攻撃機および陸上攻撃機)と分類していましたので、「富嶽」は爆撃機ではなく、攻撃機に分類されます。
そういう意味では、傑作機の「銀河」ですが、戦争末期の銀河は機体強度を増して急降下爆撃が可能だったので、爆撃機の「星」がつきます。一度命名方法が分かると、用途がパッと見て分かりやすくなっています。

また「流星」は艦上攻撃機に分類されていますが、実際には急降下爆撃も可能なので「星」の名前がついています。
特殊攻撃機である「晴嵐」は例外的命名だそうです。任務自体が特殊だからでしょうか。

◆1942年以前の付け方
制式採用された場合の名称は「皇紀年号下2桁」+式+機種名となります。これは1929年(皇紀2589年)の「八九式」から1942年(皇紀2602年)の「二式」まで用いられました。太平洋戦争が1941年12月から始まったので、戦意高揚など、色々な事情があるのかもしれませんね。
1940年は皇紀2600年であるためその年に制式採用された機体は「零式」と称しています。
ですので、この年に正式採用になった機体は「零式艦上戦闘機」「零式(三座)水上偵察機」「零式小型水上偵察機」「零式水上観測機」とすべてに「零式」がつくので、わかりづらい事態になっています。
真珠湾攻撃で有名な「九七式艦攻」は皇紀2597年、「九九式艦爆」は皇紀2599年に正式採用ということですね。
◆名称とは別の記号体系も存在。
日本海軍では、この名称とは別の記号体系があります。零戦ですとA6M3(22型)とかですね。基本的に4桁で表され、最初の記号が機種記号、次の数字が機種毎の計画番号、そして次の記号が設計会社の記号で、最後の数字が何番目の改修型を表すようになっています。
零戦のA6M3ですと
A=艦上戦闘機、
6=海軍の6番目の艦上戦闘機、
M=三菱重工製
3=A6機体の3番目の改修という意味になります。
武装などの小改造の場合は、A6M5c (52型丙)など、さらに小文字の英数字がつきます。

また、機種が変更となった場合はハイフン及び新たな機種を示す記号が末尾に付与されることになっています。例として水上戦闘機「強風」(N1K1)は局地戦闘機「紫電」となりましたが、この場合の紫電の記号は「N1K1-J」となりました。J=陸上戦闘機
機種記号は以下の通りです。
A:艦上戦闘機 B:艦上攻撃機 C:偵察機 D:艦上爆撃機
E:水上偵察機 F:観測機 G:陸上攻撃機 H:飛行艇
J:陸上戦闘機 K:練習機 L:輸送機 M:特殊攻撃機
N:水上戦闘機 P:爆撃機 Q:哨戒機 R:陸上偵察機
S:夜間戦闘機 MX:特殊機・特殊滑空機
設計会社記号
A:愛知航空機 H:広海軍工廠 K:川西航空機 M:三菱重工業
N:中島飛行機 Ni:日本飛行機(後にPに変更) W:渡辺鉄工所/九州飛行機 G:瓦斯電(日立重工業)I:石川島重工業 P:日本飛行機 S:佐世保海軍工廠(後に大村へ移転)Si:昭和飛行機 Y:横須賀海軍工廠/空技廠 Z:美津濃
(例)川西 N1K-J 紫電→水上戦闘機(N)として海軍が1番目に開発(1)。メーカーは川西製(K)後で陸上戦闘機に改修(-J)
一見、わかりづらいようですが、覚えてしまうと、整然としており、分かりやすくなっています。
記号だけでなく、山とか雲とかの名前でその飛行機の任務まで分かるので覚えやすいですね。
ちなみに海軍の軍艦の名前の付け方も決まりがありますので、興味のある方はこちらをどうぞ。→船名の命名法
次回は陸軍機です。
