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小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作20選⑪

皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
※この記事ではamazonアソシエイト・楽天アフェリエイトリンクを利用しています。


1.ここはすべての夜明けまえ

機能不全家族で育った主人公の話。主人公がゆう合手術を受けたことや平仮名の文章からも、主人公があたかも機械のようになって、心や感情がなくなったのではないか?という描写をうまく表現している。なので、読み手によっては、淡々と進むことが退屈に見えるかもしれない。ただ「主人公は何のためにこの人生を選び、生きているんだろう?」そう問いかけながら読み進めると、最後の家族史で全てが繋がる。そして、それはとても当たり前で、でもそれが当たり前じゃない人には、辿り着けないかもしれない。そんな「ことば」でした。
また全ての登場人物に心の偏りがあり、その偏りを誰かで埋めている視点で見ると、登場人物の葛藤や生き方が見えてくる。
心理カウンセラーでもなければ、ここまで深く感情を表現できない。本当に素晴らしい作品。

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2.ザ・ロード

生命がほぼ死滅した北米大陸を、父と息子が旅するロード・ノべルだ。
なんらかの理由で文明は完全崩壊し、空は灰色の雲に覆われ、気温は
石がひび割れるほど低い。そんな世界で、父子は暖かい南を目指し、
ボロボロの地図を手にひたすら歩いていく。食料は乏しく、野蛮人と化した者たちに襲われる危険が常につきまとうが、父は息子を必死に守りつづける。
いったい、二人の旅の終わりには何が待ち受けるのか……。

この本の何が恰好良いって、それは父と子の会話だ。本のカバーにも
引用されていたが、本を置いた後でも印象的な台詞が次々と脳裏に甦ってくる。
お互いを気遣う父子のやりとりにはついつい涙腺がゆるんだ。また、最初はなかなか
慣れなかった著者独自の文体も、だんだん身体に馴染んでくると読むのが快感になってくる。
そしてやはり、ラストの感動と衝撃が忘れがたい。
読了の翌日は、ずっと最後のシーンのことを考え続けていた。

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3.犯罪

すごいすごい。この密度の濃さ。
大昔に、ロアルド・ダールやダンセイニの短編を読んで、
なにか狐につままれたような不思議な気分になったことを思い出します。
海外文学には、時として、こういう濃密な短編集が出現しますね。
ひとつひとつは短いのに、強烈な印象を残します。
「神の視点」であるかのような語り口。
実際の設定では、すべて語り手の弁護士の回想のような形をとっているのですが、乾いた、まったく無駄のないその語り(描写)は特筆すべきものでしょう。
短いのに、ひとりの人間の一生を覗いてしまったかのような読後感。
一編一編が短いので、暇なときに少しずつ読む、という楽しみ方もできます。
個人的には、「正当防衛」の不気味さ、「エチオピアの男」の読後感のよさが印象に残っています。

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4.リーチ先生

陶芸家リーチ先生に師事する沖亀之助の半生が語られる。芸術を極めんとする人々の生きざまをぶつけてくる作品。芸術を究める姿の楽しさと哀しさが同時に読者を襲う。こう書くと、よくある芸術家の波瀾万丈の人生が描かれる小説だと思うだろう。確かに、よくある芸術家の話だ。しかし、その無垢な生きざまをを素直にぶつけることで、よりいっそう芸術家の内面をさらけ出している。身の回りにある普段使いの陶器にさえ、芸術が宿ることの驚きを再認識し、作品の裏にある人間の生きざまを感じさせる。

なんだかよくわからないけど泣いてしまった。巻末の解説で阿刀田高が最近の若い作家の作品に関して「スケールが小さい。しかも暗い」と評していたが、本作はその逆を行く作品になっている。
近代日本の芸術に関わる巨匠たちがたくさん登場してわくわくさせられるが、熱い魂をもって独自の芸術を切り開いていこうとする姿に、読んでいるほうの心も熱くなる。

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5.看守の流儀

謎の多い敏腕刑務官火石司を中心人物とし、受刑者を社会復帰させる刑務官の視点で描かれているミステリー小説である。舞台は石川県の加賀刑務所。刑務官と受刑者たち、刑務官同士の様々な思惑と入り組んだ人間模様を描いた5つの短編で構成されている。1話ごとの完成度が高く、話が完結していてあきずに読みやすい。さらに、5つの短編はそれぞれ異なる出来事を扱っていて独立しているものの、5話全体で物語が有機的につながっていて、一つのミステリー小説となっている構成の仕方も巧みである。

ミステリーでありながら、そこには心温まる人間ドラマがある。内容がわかりやすく読み応えがあるので、最後まで楽しんで読むことができる。私は、時間が経つのを忘れついつい先へと読み進み、あっという間に1冊読み終えてしまった。最後に予想外のどんでん返しもあって面白いし驚かされもする。

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6.儚い羊たちの祝宴

5短編からなる本作。
”バベルの会”という学生サークルが、少しずつお話に絡んでいて、
最後に表題作の「儚い羊たちの晩餐」で、その会についての種明かしがされるという作りです。
どの作品の主人公も、普通に社会生活を送っているまっとうな人たちなのですが、ふとしたところでたがが外れ、あやうい場所に足を踏み入れてしまいます。
恐ろしいことですが、私にも理解ができてしまったところが、この作品の完成度を物語っていると思います。
この短編集はただの殺人や猟奇的殺人でなく、究極まで歪みきった思想による殺人が描かれています。
読み切って、最後の文章で鳥肌が立つようなそういった芸術性を感じます。

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7.アムリタ

かなり夜型。という冒頭の主人公の言葉に、読み始めかなり引き込まれました。これは中々面白そうだ、と。
案の定読み進んでいくうちに、風変わりな家族関係など淡々と描かれていて、常識的でないところが、とても面白かったです。
タバコを吸う母。弟のことをお前と呼ぶ主人公。
ばななさん作品は、下手に他人に良く思われようとしていないところが、とても好きです。
もちろんそれだけではなく、人の内面的な所を深く掘り下げている作品だと思います。
人は容器にすぎないんだと、妹の恋人だった竜一郎が主人公を抱きしめるシーンでは、記憶を取り戻した主人公の中に何かを(私は希望と解釈しました)見出したんだなと思い、読んでいて胸が熱くなりました

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8.トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇

私たち人間は、資本主義的消費社会に生きています。
人間は否応なしに、その中で生きていくしかありません。
エゴイズムで造られた社会は、「生きにくい社会」です。
思いやりは失われ、個人は社会という巨大な怪物に押し潰されます。

こんな社会のオアシスがトルストイだと思うのです。
この本には有名な「イワンのばか」他8編の短編が収められています。
どの作品も、素朴な民話的でとても読みやすいものです。
訳文もあたたかさが感じられる素晴らしいものです。

トルストイの達した、キリスト教的な世界観が滲み出し、
私たちの疲れた心を休ませてくれます。
私たちを心の病から救ってくれる、良く効く薬だと言うことも出来ます。

トルストイの作品を「単なる理想主義だ」と断罪することは簡単でしょう。
しかしだからと言って、これらの作品の普遍性を完全に否定することなど、
誰にも出来ないはずです。

人間には、「立ち止まって考える時間」が必要です。
この本は、その際に素晴らしい道しるべとなってくれるはずです。

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9.姑獲鳥の夏

妖怪の本だと思って敬遠していたが、京極堂がそれを理論で説明してくれたので怖がらずにすんだ。もっと以前に読めばよかったと思う。事件はかなりおどろおどろしい雰囲気に溢れているのだが、謎が解き明かされると、怖さだけでなくさらに奥の深い物語が味わえる。
登場人物がみんな非常に魅力的で、映画は見ていない自分にも頭の中に人物像がビジュアルで浮かんでくる。特に行動や仕草でキャラクターの性格を表す手法はさすが。例えばネタバレにならないエピソードを紹介すると、中禅寺敦子がはしごに登って屋根を調べたことを兄の京極堂がもし聞いたら心配して叱るだろうと想像する関口氏などは、そのワンシーンだけでこの三人の人間関係や性格がよくわかって秀逸だ。
戦後しばらくした頃(昭和二十七年)の雰囲気が、美しい描写で綴られている作品。
東洋思想、精神医学、心理学、脳科学の理論
色々な学問が散りばめられてるので読んでいて、勉強したなぁ、そこはまだ勉強してないってなるので面白いです。
さすが読む鈍器です!

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10.密やかな結晶

鳥、香水、フェリー、薔薇…など、少しずつ、いろいろなものが消失していく島。ものは「消失」し、人々はそれを持っていたら捨てたり燃やしたり川に流したりし、次第に記憶からも消えていく。しかし時々、記憶を持ったままの人たちもいて、その人達は秘密警察に連れ去られてしまう。
小説家である「わたし」の担当であるR氏は記憶保持者。「わたし」と「おじいさん」は、R氏を隠し部屋に匿うことになる。

ものが消失していくことへの不安、暗く長い冬。食料も日用品も不足がちな閉鎖された島。威圧的で恐ろしい秘密警察。全体的に暗いトーンなのだけれど、主人公やおじいさん、R氏とのやり取りは明るく、心がこもっていて、希望が持てた。あまりにも不思議な設定なので「これは誰かの脳内世界なのか」と思っていたけれど、そういうオチではなく、謎は謎のまま結末を迎える。
描写がていねいで、また迫力があった。作中小説の、タイプライターの話もとても意味深だった。
なにかとても象徴的な、不思議な雰囲気をまとった小説だった。

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11.地球の長い午後

未知の世界と化した未来の地球。
人類が常に死と隣り合わせの世界で細々と暮らしています。
この世界での王者は動物のように進化した植物。
植物が人類の敵となったのです。

アミガサダケがグレンに寄生してからが、がぜんおもしろくなります。
知性をもつキノコが少年の脳内に寄生し、知識を分け合いながら、宿主の意識を操り、脳内で会話をしながら、生き延びる手助けをする。
アミガサダケいわく、はるかな祖先の時代、猿人の頭蓋に寄生したアミガサダケは、次第に宿主の能力を頭蓋の中で改良することに努めるようになった。こうしてはじめて、人間は進化したのだ。
えっ、我々の進化は寄生生物によるものだったの!しかもキノコが!たかがキノコが。
ミッシングリンクは寄生生物だった。
寄生虫のトキソプラズマは人の脳を操るようだし、キノコでなくても何らかの寄生生物は人類に影響を及ぼしているかもしれないですね。

このアミガサダケ、グレンの脳内の記憶を遺伝子レベルまでくまなく探ることができるようで、記憶や知識を共有できる。
科学者が脳にチップを埋め込む技術を開発実践している昨今、データそのものを直接脳に書き込む技術の開発も行われているようで(受験勉強がいらなくなる)、この知識の共有も不可能とは言えない。1961年の作品なのですが。

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12.オン・ザ・ロード

"やつこそ、ビートだ。ビーティフィク(至福)の根っこであり、魂だ。"人類初の人工衛星がソ連で打ち上げられ、日本初の原子の火が灯った年にアメリカで発刊され、ビートジェネレーションの聖典として話題になった本書は"みんなひとりだと思っている。(中略)でも。ワインをかこむと、みんな、楽しかったな"と著者が述べている様に、仲間との旅という非日常の普遍的な魅力を伝えてくれる。

中でも著者が若い時に亡くした兄を投影しているとも言われる"ペテン師だが、ひとをペテンにかけるのも思いっきり生きたいからで"【興奮しすぎのオカシイやつ】ディーンの奔放さが、このどこから読んでもいい物語にリズムを与えてくれていて、読み進むにつれて何とも不思議な愛おしさを感じさせてくれます。

大量消費時代の繁栄しつつ、冷戦下において画一化、順応を求められた時代のアメリカの空気を感じたい誰か。あるいは"お前の道はなんだい?聖人の道か、狂人の道か、虹の道か、グッピーの道か"カウンターカルチャー好き、ボブ・デュラン好きな誰かにオススメ。

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13.夜中に犬に起こった奇妙な事件

お隣の犬が殺された。クリストファーは、犯人探しに乗り出す。ミステリー調で始まるこの物語は、アスペルガー症候群で、養護学校に通う彼が書いた日記という設定です。だから、クリストファーの目から見た風景や考え方や世界観で構成されています。読者はそれを追体験するのです。
数学や物理の知識は驚異的で、一五歳で数学上級試験を受ける才能がある彼ですが、黄色と茶色は大嫌いで、食べ物の中にその色が入っていると食べられません。赤なら大丈夫。「嘘も方便」的なコミュニケーションは出来ず、本当のことしか言えません。触れられると親であっても怖がります。それでも抱こうとすると暴力をふるいます。記憶力は抜群で、DVDのように、知りたい記憶へ一挙に飛べます。目に映った風景を、カメラのように情報としてすべてインプット出来ます。便利そうですが、取捨選択なく入ってきますから情報過多で混乱し、パニックになる。
世界の見え方が多くの人と違うクリストファーを、この物語はとてもリアルに描いています。と同時に、私たちの見え方もまた一面的なのを教えてくれます。そして彼の見え方を受け入れていけば、こちらが豊かになることも。

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14.アメリカン・ブッダ

表題作「アメリカン・ブッダ」が特に面白かったです。
あらゆる物質に満たされ人々は永遠に近い寿命を持てる仮想世界「Mアメリカ」という人類が切望し続けてきた「天国」そのものに行ける世界のお話。
しかし、天国に行っても人間は苦しみ争い続ける。
例え愛する人がいて、可愛いペットがいて、理想の家族が側にいたとしても
例え宇宙の創造神になったとしても、人が人である限り苦しみの輪廻からは逃れられない。
なぜなら人間が救われる唯一の道とは天使になることでも神になることでもなく人で居続けることだから。 
仏陀の教えをとくインディアン。何でやねんという話だが、そういう話である。聞いたことあるなぁという仏陀のエピソードをインディアンテイストで味付けする不思議なSF。

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15.熱帯

「1982年に出た『熱帯』という謎に満ち魔術的な小説の探索」ということで最初は森見氏の視点で始まり、続いて白石嬢の話すお話になり、その中で池内氏のノートの内容になり、・・・と、読者は何重もの入れ子構造で深まっていく物語を必死に追いかけることになります。
お行儀よく元のところに戻ってくるとは限らず、辻褄が完全に合っているわけでもなく、特に今回新たに書かれた第四章「不可視の群島」以降は、語り手が誰だか最後近くまで分かりません。読者はしばしば“えーっ”と驚愕するに違いありません。
物語世界に没入した読者はアクロバティックな構成に翻弄されながら、物語を読む、物語に浸る喜びを味わえるでしょう。千一夜物語がベースにあって、人が物語ること、物語を読むことの意味を次第に考えていくことになります。
そして「物語の終わりは新しい物語の始まり」となって円環的に続きます。本作ではこの“物語”は“自分”とか“人生”とかに置き換え可能です。「物語を読み終わり、新しい自分が始まる」とか「旧来の自分が終わり、新しい物語を編み始める」とか。作家でなくとも常に人生のターニングポイントに物語があるし、経験したことが書籍になっていなくてもそれは物語です。
人は生きることを物語を通じて学ぶものだし、人が生きた軌跡は次の人にとって物語だし、そんなことを感じさせてくれる「熱帯」でした。
だからこそ「汝にかかわりなきことを語るなかれ。しからずんば汝は好まざることを聞くならん」というキーフレーズが重いのでしょう。
森見氏の数々の作品に現れたイメージがふんだんに現れるのも楽しいですよ。

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16.ミミズクと夜の王

幼い頃に村に攻めて来た盗賊に家族を殺され、盗賊の村で奴隷として暮らして来た少女が、魔物に自分を食べて貰おうと夜の王が居る森に行く事から物語が始まる。
夜の王はミミズクに対し決して優しい言葉を掛ける訳ではないが、二人の間には少しずつ絆が出来る。しかし、森に迷い入ってきた人間にミミズクが森からの出口を教えてあげた事から夜の王とミミズクの穏やかな生活が終わる事になってしまう。

少女は作中において、初めて自分のことについて葛藤する機会に賜れ、真に自分が望む未来を選択します。
夜の闇のように静かで幸福に満ちた読後感は、それが答えであったことを何より示してくれるものでした。

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17.火星年代記

西暦2030年に最初のロケットが地球の季節を変えてから2050年まで、20年間にわたる地球人による火星侵略を描いた物語。
途中ちらっとアメリカ先住民が登場するが、火星人に共感するようなこともなくすぐに殺されてしまう。火星人と共感するのは何か特別な才能が必要なようだ。
火星人に共感することのない人々がいろいろな物や想いを持ち込んで火星はどんどん変わって、ちょっと歪んだ「地球の鏡」みたいになってゆく。
が。
侵略者はその特性にふさわしい末路を辿る。

今やありがちになった現代文明と人間の業の風刺ものながらも、全編に渡る美しくもユーモラスなイメージと静かな諦念が作品の品格を落とさない。
年代別に並べられた短編集としても読めるけれど、互いに密接に連関しているのでやはり長編として読み通すのが正しいかもしれない。
火星の火球に信仰を説く章、アッシャー邸、スペンダーの離脱、斬新で美しく、しかしどこか寂しく悲しいエピソードの数々は新規読者である僕にも充分に心に食い込むものだった

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18.スローターハウス5

時間旅行と様々な体験。戦争の中で行われる虐殺があるかと思えば、異星で動物園に収容されたり、はたまた結婚生活を送ってみたり、それらが過去と未来の時空でこんがらがって生きている状態。
ビリーさんは語ります。ただ与えられた役目を果たすために時空を超えて現れるのだと。
生き地獄を見た経験があれば美しい世界に居合わせることもあります。
生きるという作業は自覚的な作業ではなくて、その場に居合わせる人が演じることだと捉えることで、心の中の蟠りがすっと落ち着いていきます。
痛みや悲しみ、喜びや驚き、それぞれは淡々と行われる「行事」の中で、時には漣のように、時にはオオシケの海のように心の中に渦巻いていくのだと。
達観ではなくて、非常にプラグマティックな人生観に溢れています。

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19.エンダーのゲーム

二等兵がブートキャンプから一人前の兵士になるまでを描く小説は世の中にあふれていますが、良き指揮官になるにはと士官学校を描いたのは「愛と青春の旅立ち」くらいいしか知らないなぁ。
主人公はゲーム形式の訓練で実力を発揮していくわけですが、常に不利な状態でゲームははじまります。現実の戦い(生活)もそうで、常に情報は非対称、戦力は少なく他の問題も不利なことが多い。それらの条件を覆してこそ指揮官であり、人の上に立つものであるということがよくわかります。
物語は少年の不利な日常生活と重なるように、訓練も不利な形で進められます。それをエンダーの卓越した才能で乗り切っていくわけですが、兄弟、親子、教師と生徒、上司と部下など多くのシチュエーションで対立と理解、協働が描かれます。「これは見逃してたなぁ」というのが正直な感想です。
ちなみに映画より小説のほうが細部が描かれていて楽しめると思います。原作の雰囲気を味わうために読んだ後、映画も見てください。逆だと面白さが半減すると思います。

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20.たったひとつの冴えたやりかた

SFというものにあまり馴染みのない方へ。
あなたがまず目にするのは、星の海に浮かぶ船、まっすぐな眼差しの女の子。
川原由美子の描く表紙イラストです。
本を開き頁をめくれば、デネブ大学の図書館での微笑ましいシーン。
そして表題作の第一話「たったひとつの冴えたやりかた」が始まります。
「リフト」、「超C通信」、「GO型太陽」・・・・・・。いかにもSFっぽい用語が、しかも説明なしにでてきます。
でも、川原由美子の挿絵と、何より元気いっぱいの主人公、コーティがあなたを引っ張ってくれるはず。
気がつけば、見たこともない果てしない宇宙が目に浮かぶようになっています。

読み終えた方へ。
第二話、第三話の印象はどうでしたか?
第一話の衝撃で、もしかしたら印象に残っていないかもしれません。
私もそうでした。初読の際は、活字を目で追ってはいましたが、内容は全く頭に残りませんでした。
ですが、ティプトリーの凄みはこの中編集の随所に潜んでいます。
また、この本を手に取り、じっくりと読み込んでみたとき、きっと読み取れると思います。

いつの日か、ティプトリー自身のように、自分の「たったひとつの冴えたやりかた」を選ばなければならなくなるのでしょうね。

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おわりに

いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。

その他書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。


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