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【SS】 空から君へ #シロクマ文芸部

 透明な手紙の香り。
 それは一瞬で消えていく空からのメッセージの香り。

 夏まで待てなかった僕は、君へのメッセージを晴れた日の夜空に託した。君を海辺に誘い出しプロポーズしたかった。でもやっぱり照れくさい。いざという時に、言葉にできない僕は、花火に気持ちを託した。

 気持ちいい風が吹き寄せる海辺。僕は花火師に依頼していた。気持ちが伝わる花火を午後八時きっかりに打ち上げてほしいと。結構な料金を取られたけれど仕方ない。今がお金を使う時だと思い依頼した。

「ねぇ、輝月きづき、今日は、天気もいいし涼しい風を感じに食後は海辺の散歩でもしようか」

「あら、珍しいわね。星矢せいやが夜の散歩に誘うなんて。もしかして、私に特別な話でもしたいのかなぁ、なんてね」

「そんなに茶化すなよ。僕だってたまにはロマンティックな雰囲気を大切にするんだよ」

「ふーん」

 輝月の気のない返事がちょっと気にはなったが、海辺のおしゃれなレストランで夕食を楽しんだ後、そのまま砂浜の散歩に二人で出かけた。もうすぐ夜八時。月明かりで浜辺に打ち寄せる波もいい感じでBGMになってくれている。

「ねぇ、輝月。もうすぐ八時だね。でも月が出てるから明るくていい感じだね」

「あぁ、そうね。こうやってみると夜の海って素敵ね」

ドーン、ドーン、ドーン

「あっ、花火があがった。なんで、今頃、ねぇ、星矢。凄くない、このタイミング」

「えへへ、あれ、僕が依頼したんだよ。輝月のために」

「えー、どういうこと。あっ、ハートに矢が刺さってる花火だー、あ〜、そういうことだったのね。でも崩れたね〜。花火も私の心を解ってくれたみたいね。ねっ、星矢」

「えっ、そ、そんな〜」

 僕の渾身のメッセージは届かずじまい。風に乗って流れてきた花火の香りだけが僕の鼻に残った。この後、夏が来る前に輝月から「結婚しました」のハガキが届いた。ハガキからは、ほんのり花火の香りがして、綴られているメッセージが、皮肉にもあの時の花火を思い出させてくれた。

『私、堅実な人と結婚しました。無駄遣いする人が一番嫌いだから 輝月』

 花火代二十万円も払ったのに、メッセージに隠れていた見えない言葉からは花火の香りがした。


今回はなんとか間に合いました😊
昨日我が家の近くで花火大会がありました。それで思いついたストーリーでした。

以下の小牧幸助さんの企画への参加です。


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#シロクマ文芸部 #創作 #小説 #ショートショート #掌編 #企画

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