3月13日 青函トンネル開業記念日 【SS】島を結ぶトンネル
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 青函トンネル開業記念日
1988年(昭和63年)のこの日、本州・青森と北海道・函館を結ぶ北海道旅客鉄道(JR北海道)の海底トンネル「青函トンネル」が開通した。
正確には本州の青森県東津軽郡今別町浜名と北海道上磯郡知内町湯の里を結ぶトンネルである。用途は鉄道トンネルで、青森県の中小国駅と北海道の木古内駅を結ぶJR海峡線(当時の愛称:津軽海峡線)が同日に開業した。
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【SS】島を結ぶトンネル
日本列島のはるか南の方に三つの島がきれいな正三角形の形に点在していた。人々はこの島々は無人島というか岩礁だと認識していたため、近寄るものは誰一人としていなかった。上から見ても横から見ても岩にしか見えないのである。ところが三つの島の中央に降り立つと岩礁の中に緑の大きな空間が見えるのだ。最も三つの島の中央に降り立つことが不可能な形状になっているのであくまでも仮定の話だが。
島と島を結ぶ交通手段は船以外にない。しかし、この辺りの海域はいつも風が強く船を出せない日が多い。そこで、なんとかして海底にトンネルを作ろうという計画が持ち上がっていた。この島々の住人は実は人間ではなかった。宇宙から飛来し遭難した宇宙船が、ちょうど島々の間に墜落してしまったのだ。墜落の際に岩場を削りとってしまい穴が出来、そこに植物が生えはじめ、緑の空間ができていったのだった。したがって、この島と島の間には彼らが乗ってきた宇宙船が沈んでいるのである。すでに長い年月が経過してしまっているので、上から見ただけでは宇宙船は見えない。それに破損した箇所から海水が流れ込み宇宙船内も魚たちの憩いの場になってしまっていた。
不時着した宇宙船に乗っていたのは、五十人の宇宙人だった。身長はだいたい一メートル程度で人間で言えば、幼稚園児ほどの体系である。髪の毛というか体毛はなく、皮膚自体が防寒の役割もするようになっており、人間でいう男女という性別もない。子孫が必要な場合には細胞からクローンを作るのだ。彼らにとってラッキーだったのは、食料に困らないということだった。塩とミネラルさえ摂取すれば二百年は生きていられる体を持っているので、海の中に墜落したのはある意味不幸中の幸いだったのだ。
三つに分かれている島ではそれぞれ、海水を処理してミネラルと塩に分離する工場のようなものを作る工場島、知識を保つために研究や学習をする研究島、全員が交代で体を休める宿泊島というように目的別に島を利用していた。そのため、島と島の間を往来する必要があったのだが、波が高い時が多くなんとかしたいと方法を考えていたのだった。墜落した際に、いろいろな道具を作り出す装置などは宇宙船から引き上げてあったが、何を作ればいいかという考えが浮かばなかったのだ。空を飛ぶことは簡単なのだが、発見されやすい。海の上の移動も発見されやすいが空中よりは目立たない。できれば海中の移動が最も目だたないのだが海流が激しいので難しい、結局地下が一番だという結論に達したのだった。
目標は決まった。次は方法だ。どうやって島と島の間に地下道を作るか、しかも安全に通れる通路でなければならない。島と島の間は三十メートル程度なのでそれほど距離かがあるわけではない。ある若い宇宙人がアイデアを思いついた。
「宇宙船の底の倉庫部分は浸水していないので、そこから三つの島への通路を特殊なレーザーを使って土を溶かせば作れそうだ。やってみませんか」
全員賛成だった。宇宙船の倉庫部分に入り込み、三方向に分かれて海底を掘り進んだ。方向と距離と深さ、そして強度の計算は彼らの脳内で瞬時に処理され、共有されていた。掘削作業を続けること五日間。二つの島への通路が開通した。だが、研究島への通路は硬い岩盤に阻まれ作業が難航していた。土を溶かすレーザーではなかなか岩盤に穴を開けることができない。代わりの道具を宇宙船の中で懸命に探した。結果、物質を炭素化して脆くさせる装置があることに気がついた。この装置を使って岩盤に穴を開け、レーザーで穴の周りを焼いてしまうことで強度を保つことが可能だと考えた。
試みは成功だった。三日遅れたが、研究島への通路もついに貫通した。これでいつでも自由に三つの島が往来できるようになった。人間に発見されることなく三つの島を行き来できるようになったことで、次の目標はなんとか母星と連絡をとる手段の研究開発へと移行していった。研究島に連絡をとるための無線設備の建設に着手し始めたのだ。
彼らは海底トンネルが開通した記念日を忘れないように三つの島からの通路が交わる宇宙船の倉庫部分に開通した宇宙年月日と時間を刻印して祝った。考えてみれば、緊急避難先として宇宙船の倉庫部分が利用できることにもなったのだ。宇宙人は表情のない顔ではあったが、みんな喜んでいた。
この後、人間に見つかることなく彼らは母星に帰れるのだろうか。そうなった場合、彼らの生活したこの場所はどうなるのだろうか。現代において人間には発見されていないこの島々はこの時彼らが掘った海底トンネルが原因で島が沈んでしまうことになろうとは彼らも予想すらしていなかった。強度計算も問題なかったはずだった。ただ一つ忘れていたことは、彼らの宇宙船の重さだった。トンネルの強度を計算する際、宇宙船の重さの考慮が抜けていたのだった。宇宙船は海底トンネルの上に鎮座している。そして微妙ではあるが、激しい海流のせいで常に揺れていたのだった。
宇宙船の重さでトンネルが潰れその振動で島が中央に向かって倒れ込んでしまうまでにはまだ時間はある。それまでに彼らは母星と連絡をとり、無事地球を脱出できるのだろうか。人間の知られざるところで生死をかけた挑戦は繰り広げられている。
了
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