2月25日 親に感謝の気持ちを伝える日 【SS】親不孝
【今日は何の日】- 親に感謝の気持ちを伝える日
親への感謝の気持ちをきちんと伝えるきっかけの日として考えられたようだ。考えたのは、大阪府大阪市中央区に本社を置き、「還暦祝い本舗」「プレゼント本舗」「手元供養本舗」などのサイトでメモリアルギフトの販売を手がける株式会社ボンズコネクトという会社なので、売り上げ増加も狙いの一つだったのだろう。
日付は「2」が親と子の双方を、「25」がニコニコ笑顔を表していることから選択されたようだ。
【SS】親不孝
「おい、雄二。今日の夜、集会来るだろ」
「え、あー、どうしよっかなー。亮は張り切ってんなー、いつも」
「なんだそれ。あったりめーだろ。集会だぞ集会。気合い入れて来いよ。河口湖までぶっ飛ばすからよ」
雄二と亮は共に千葉県市川に住む専門学生の同級生だ。二人とも、輝魔愚麗(きまぐれ)という暴走族のメンバーだった。二人は同じ高校を卒業したが、二人とも大学受験に失敗した。仲がよかった他のメンバーは大学に進学し、それ依頼疎遠となってしまっていた。そんな時、うるさい両親からも逃れたいと思い、興味の無いデザイン専門学校に進んだのだ。当然授業には身が入らない。そこで知り合った輝魔愚麗のメンバーである先輩から誘われて加入してしまったのがきっかけだった。二人ともバイクの免許を持っていなかったが、バイトをしてお金を貯め、中型の免許を取って中古のバイクを買ってしまった。通称カタナといわれるバイクだ。親にバレると処分されるかもしれないので、実家が車の整備工場を経営している先輩に頼んでガレージを貸してもらっていた。
時々夜になると出かけて明け方に戻ってくる雄二に対し両親は、最初は口うるさく問いただしていた。
「学生のくせに、お前は何やってんだ。高い学費はなんのために払っていると思ってるんだ。少しは自覚しろ」
「なんだよ。結局金かよ。うっせーな。そんなに迷惑なら、こんな家、いつだって出ていってやるよ」
「雄二。お父さんに対してなんて口の聞き方なの。あなたのことを心配して言ってるのよ」
雄二はこれ以上話してると喧嘩になりそうだと思い、二階の自分の部屋に逃げるように駆け上っていった。雄二は、心配をかけていることも解っているし、大学に行けなかったことで不貞腐れている自分にも嫌気がさしていた。両親が自分のことを心配してくれればくれるほど自分が情けなくなり、反抗してしまうのだった。
その日の夜、河口湖までの集団暴走に加わった。最初は迷っていたのだが、両親と口喧嘩してしまったことが雄二を追い立てた。首都高から中央高速を抜けて河口湖に行くコースだ。首都高で捕まるわけには行かないので、東京を出るまではみんな大人しく走っている。今日は総勢二十台くらいのバイクだった。無事首都高を抜け、中央自動車道に入り相模湖付近になるとみんなは足枷を解かれたように自由に走り始めた。スピードを出して蛇行したりした。しばらくすると、前方を走っていたトラックにバイクの先頭集団が追いついて、トラックをからかい始めてしまった。雄二と亮はいつも後ろの方のポジションで走っている。今日も前方で蛇行運転しながらトラックをからかっているのをみながら走っていた。その時、走行車線を走っていたトラックが急に追い越し車線に向かってハンドルを切った。前方で工事をしていたようだ。
からかいながら蛇行運転をしていた先輩のバイクは、トラックの前方に出ようとして追い越し車線から走行車線に寄って行くところだった。先輩のバイクはトラックの前輪に接触し一瞬で跳ね飛ばされてしまった。バイクは中央分離帯に激突し大破。先輩は空中に放り出されてスローモーションを見るように、雄二たちの横の路上に叩きつけられた。スピードを落としていた雄二と亮はバイクを停車して先輩に駆け寄った。トラックはもうすでに走り去っていた。仲間のバイクたちは関わるのを恐れ、次々と走り去っていった。残ったのは雄二と亮の二人だけだった。動かなくなった先輩を中央分離帯の上まで移動して、自分たちはバイクと共になんとか路肩まで移動した。油断すると後ろから走ってくる車に跳ねられてしまうことになる。路肩まで移動した二人は、呆然としたが救急車を呼ばないとまずいと思いスマホを取り出した。手が震えてなかなか通話できない。スピーカにして二人で電話に出た。
「友達が跳ねられました。救急車をお願いします。中央自動車道の相模湖インターチェンジを過ぎたあたりの下り車線です」
「わかりました。安全を確保してハザードをつけてお待ちください。非常灯もつけておいてください」
十分もしないうちに救急車とパトカーがやってきた。二人は緊張していた。
「電話をくれたのはあなたたちですか」
「は、はい、そうです」
「跳ねられた人はどこですか」
「中央分離帯に移動しました。そのままだと跳ねられてしまうと思って」
この後、先輩は病院に搬送されたがすでに死亡していた。どうやら即死だったようだ。警察から連絡を受けた雄二の両親と亮の両親は揃って相模湖のそばの津久井警察署までやってきていた。すでに深夜になっていた。しょんぼりとしている雄二を見て母親は駆け寄り抱きしめた。
この事故が有ってから雄二は「このままではダメだ」と気づき、亮と一緒に専門学校の授業に打ち込むようになり、無事卒業しデザイナーへの第一歩を踏み出すことができた。卒業した時に、二人で先輩の家に線香をあげにいった。先輩の両親に深く頭を下げ「僕たちは卒業できました」と話した。先輩の両親は涙を流しながらも笑顔で答えてくれた。
「うちの慶太はあんなことになてしまったけど、君たちはちゃんとなってくれてよかった。慶太の分もこれからの人生を大切にするんだぞ。お父さん、お母さんも大切にな。ここにはいつでも遊びに来て良いから」
「はい。ありがとうございます」
この後、別々の会社に就職した雄二と亮は、最初の給料をもらった時にそれぞれの両親に感謝の言葉と共に記念品を買って贈っていた。
「お父さん、お母さん、ありがとう。間違った方向にいかなくて本当によかったと思っています。親不孝していたこと、本当にごめんなさい。これは心ばかりの僕からのブレゼント。ゆっくり温泉にでも行ってきてください。これからもよろしくお願いします」
そう言って雄二はペア旅行券を両親に贈った。両親は涙を流しながら喜んでいた。この後は、きっと立派なデザイナーになって世界に羽ばたいてくれることだろう。亮が良きライバルとして二人で成長することを期待したい。
了
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