4月16日 SWEET SIXTEEN文化の日 【SS】大人の仲間入り
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- SWEET SIXTEEN文化の日
愛知県豊橋市でフォトスタジオの運営などを手がけるACreation合同会社と、大阪府大阪市でレンタルドレス事業などを手がける株式会社micia luxury。そして、大阪府大阪市に事務局を置くSWEET16委員会が制定。
日付はSweetが英語の発音で「シー(4)」と聞こえることと、若者のお祝いの記念日であることから草木が芽吹く季節がふさわしいとの想いから4月で、16歳の16を合わせて4月16日としたもの。
SWEEET SIXTEENは、主に欧米で行われている「大人としての自覚と責任を持つ16歳の誕生日を盛大に祝う」ための特別な誕生日イベント。家族や友達と盛大にお祝いをする。日本にもSWEET SIXTEENの文化を広く普及させて、16歳の誕生日を祝われる人、祝う人の双方にとって特別な楽しい思い出づくりのきっかけを作ることが目的。
本来のSWEET SIXTEENは各々の16歳の誕生日であることから特定の日付は設定されていないが、日本で広めるためにその象徴になるような日を作りたいとの思いから制定された。
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【SS】大人の仲間入り
現代日本において、成人年齢は十八歳に引き下げられ、成人式のイベントなどがまだ混乱している感じを受ける。しかし、過去はどうだったのだろうか。厳しい躾を受けていた武家の子供たち、特に男子は元服と称し、わずか十五歳で十六歳になる年に大人の仲間入りをしていた。もちろん平均寿命も今とは異なり短かった時代ではあるが、当時の武家の子供たちは幼い頃から厳しく育てられていたのだろう。
「恋丸、お前も今年は元服の年じゃ。心得ておるか」
「はい、父上。恋丸の名も明日限り。立派な武士となるべく精進いたします」
「うむ、良くぞ申した。お前は松照家の跡取りである。そのことを心に刻みしっかり精進するのだぞ」
「はい、父上。しっかりと父上のお仕事を覚えてまいります」
「うむ、剣の腕前もだいぶ上がったそうだのう。剣は人を傷つけるためにあるのではない。己と己の大切な人を守らなければならぬ時に使うのじゃぞ。くれぐれも、慢心せぬようにな」
「かしこまりました。肝に銘じておきます」
家を守ることが必定の時代、武家の子に生まれた男子、特に嫡男にとっては家を継ぐという責務が生まれた時から背負わされていた。そして、十六歳を迎える年には、大人としての儀式、元服を終え、子供時代に別れを告げるのであった。幼少の頃に呼ばれていた幼名も元服の日を境に新たな名前を与えられた。男子は一生のうちに幾度となく名前を変える機会があったということもすごいことである。
恋丸は小さい頃から利発であった。人の話すことをしっかり聞き、誤解されるような発言は慎んでいた。周りには口数が少なく寡黙な男の子として映っていた。幼い頃はよく話をしていたのだが、いつからか寡黙になっていた。おそらくは父親から「男子たるものやたらに話をするな」と言われ続けて来たことが身体に染み付いているのだろう。言いつけは守っているうちに無意識の行動に転化されるようだ。恋丸は自分自身を表に出すことはなく、寡黙な人間を演じ続け、周りの評判を自分なりに評価して成長して行った。決して驕ることなく決して昂ることなく、常に冷静で優しい人間として振る舞っていた。
恋丸は五歳になると同時に武家としての作法や算盤、書道などを習い始めた。松照家の家来の一人、平松正右衛門という武士が指南してくれていた。もちろん剣道も教えられていた。恋丸は涙を見せることなく厳しい稽古でも文句一つ言わずに毎日こなしていた。そのせいもあり、書道も剣道もメキメキと上達し、十二歳を迎えるころには大人顔負けになっていた。その頃になると顔つきも凛々しくなり始めており、出入りの業者の呼び方も坊ちゃまから若様にいつしか変わっていた。自分が置かれている境遇を恋丸はわかっていた。自分が父の後をついでこの家を守らなければならないのだと。そうしなければ家族はもとより家来衆までが明日の生活が見えなくなってしまうと言うことを感じとっていた。そのためには、勘定奉行である父の役を引き継がなければならないのだった。
恋丸は剃髪をする元服の時に、名前が恋丸から利彦に変えられた。利発な子であったことと、父親の利之介から利の文字をもらい付けられた新しい名前だ。こうして若干十六歳で大人として扱われ始め、父親の仕事を学び世襲してお家を守っていったのである。自分を殺さないと生きていけない時代だったのかもしれない。世代交代を実現して子に自分の役割を渡すことで、初めて父親は安らぎの時間を持てたことだろう。しかし、そんな時代も終わりを告げ、明治維新が始まるとこの利彦の子孫も影響を受け、武士という特権階級はなくなり、一様に就職ということになっていった。そうは言っても育った家柄の影響は大きく、子孫は大蔵省で働くようになり、その子孫もまた親を見て同じ仕事につくかのように、大正、昭和へと引き継がれて行った。もちろん、すでに世襲制は無くなっており、それぞれの代で努力し勝ち取って来た仕事である。そして、時代は平成から令和へと移り、人生百年時代と言われる時代に入った。
人生百年時代に突入し、世間一般的には就職をした後、会社をいくつか渡り歩くことが当たり前の時代において、十六歳という節目はすでに習慣としても無くなった。今では成人を十八歳として再定義されてはいるが、高校三年生の年であると言うこともあり、元服をしていた頃の十六歳と比べても頼りなさを感じてしまう。今では「家を守る」という考え方自体がなくなり、子供は子供自らが選択した人生を歩んでいくことが推奨される時代になっている。最も、本人たちはそれぞれの環境の中で精一杯考え、大人たちとは違う感性や大人たちが忘れてしまった夢に向かって突き進む心は持っているのだと信じたい。これからの日本の未来のために。
了
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