2月22日 忍者の日 【SS】もう一つの組織
【今日は何の日】- 忍者の日
店舗デザイン、空間デザイン、忍者をテーマとしたレストランのプロデュースなどを手がける株式会社グラフィクスアンドデザイニングが2015年(平成27年)に制定した。日付は忍者の忍、忍術の忍など、忍を重ねた「ニン(2)ニン(2)ニン(2)」と読む語呂合わせからきている。
元々同社はレストラン「NINJA KYOTO」からの委託を受けて忍者ショーの運営を行っており、そのプロモーションが目的だったが、NINJYA KYOTOは、2018年いっぱいで閉店したようです。残念!!
【SS】もう一つの組織
忍者はもともとはごろつきのような悪党が伊賀衆、甲賀衆となっていった経緯もあるようだ。もちろん、これ以外にもいわゆる忍者という存在は各地にいた。情報収集や奇襲をしたりと現代で言えば傭兵にも似た活動も数多く実施していたり、足軽となり戦場に出向くものもいたようだ。
そんな歴史の背景にある忍者とは全くことなる組織も存在していた。ただ、その記録は一切残っていないため、実在したかどうかを証明する手立てはない。もう一つの組織とは貧しいものたちの味方となって暗躍する義賊の集団だった。この集団は、考えが合わず甲賀衆と伊賀衆を抜け出した、いわゆる「抜け忍」と呼ばれたものたちの集まりだった。女性忍者である「くノ一」も入れば、忍法で目眩しをすることが得意な忍者や高い身体能力で屋根から屋根に音もなく飛び移ることが得意な忍者もいる。それぞれが得意な分野を持っている忍者が集まり組織を形成していた。この組織は「幻組」と呼ばれその神出鬼没さにお上は振り回され続けていた。
幻組の頭領は、くノ一だったお京という女性だ。他の誰よりも賢く、世の中の情勢を冷静にみて判断できる能力を備えていた。そしてそのお京を側近として支えるのは、龍と呼ばれるさまざまな忍法の使い手だった。お京を逃さなければならない時は龍が必ずその役割を担っていたのである。
干ばつにより農民の生活が苦しくなった年があった。誰しもが幻組の活躍を期待していた。あくどく儲けた金持ちから金を巻き上げ、秘密裏に農民にばら撒いてくれることを。そして、幻組もその期待に応えるかのように計画を練っていた。まずお京自らが女中となって油問屋に潜り込んだ。人の出入りが激しい油問屋は汚い商いで稼いでおり、女中もしょっちゅう交代させられていた。それも、お奉行の相手を務めさせるために綺麗な女中を取っ替え引っ替え雇っていたのである。使い物にならなくなると小遣い程度のお金を持たせて暇を出していたようだ。
忍法で顔を変えて女中として潜入したお京はお花と名乗り、その美貌が気に入られ、主人の側に付くようになるまでそんなに時間は掛からなかった。お花は金蔵の鍵の隠し場所を探し当てると、外にいる仲間に連絡をした。決行は今夜丑の刻。
龍を先頭に屋根伝いに黒装束に身を包んだ幻組の面々が音も立てずに油問屋に忍び寄ってきた。今日は月も出ていない暗闇で完全に姿を消すことができた。すでに夜回りも終わり、シンと静まり返っている。通りは風に舞う葉っぱの音しかしていない。幻組は油問屋の中庭に降り立った。軽く雨戸を叩く。中からお花ことお京が顔を出した。手には金蔵の鍵を持っている。
「奥から二つ目の蔵が金蔵よ。千両箱が積んであるはずだから三つばかり持って行っておくれ。あとは残しとくんだよ」
お京の指示通り、奥から二つ目の蔵の鍵を開け幻組は忍び込んだ。千両箱の重さはかなりなものだ。三つ運び出すだけでも大変だった。一旦屋根の上に上げるために滑車を使い引っ張り上げる。そして屋根の上を滑らせるように千両箱を移動し、油問屋の敷地内から離れた。龍はお京に蔵の鍵を返したあと縁の下に潜んだ。お京は何食わぬ顔で蔵の鍵を油問屋の主人の寝所の隠し扉を開けてもとに戻した時だった。主人は布団から飛び起きてお京に飛びかかってきた。
「お花、何をしている。お前の方からわしの寝所に来るとはのう。そんなにわしと一夜を共にしたかったのかい。女の方から夜這いをかけるとは男冥利に尽きるというもんだ」
「もう、旦那様が呼んでくれないからですよ。このいけず」
二人は絡み合うように主人の布団の上に倒れ込んで行った。主人が下になりお京が上になった瞬間にお京は畳を足の先で二回叩いた。すると、床下に潜んでいた龍が主人の背中を目掛けて薬を塗った針を絶妙な位置で突き上げた。見事に針先は心臓に刺さり、薬はあっという間に主人の血液の流れと共に全身に回った。眠り薬だった。幻組は絶対に殺生をしない。有事の際は眠らせるだけだ。こうして心地よく眠りについた主人を確認すると、お京は一枚の文を主人の露わになった着物の上にそっと置いた。
『幻組参上 油問屋が儲けすぎた分として三千両を頂いた。真っ当な商売に戻ることを切に祈る。二重帳簿の写しも持っているので届出たりすれば、ばら撒いてしまうぞ。くれぐれも行動には注意をしろ』
薬が切れて朝目覚めた油問屋の主人は、文を見て地団駄を踏んだ。奉行所に届け出ることもままならない。せっかく儲けた三千両だったが主人は諦めざるを得なかった。
「くそう。あのお花の奴め。盗賊とつるんでおったのか。今度あったら八つ裂きにしてくれる。お前の顔は絶対に忘れんぞ」
最もお花の顔は偽物だったので、お京は捕まる心配はなかった。そして、一週間がすぎた頃、油問屋に不穏な動きが起きていないことを確認して、いただいた三千両のうち二千両は闇の両替商のところに運ばれ、小判を全て一朱金に両替してもらった。手数料で五百両取られたが仕方がない。農民たちがお金を使うときに小判では怪しまれるためである。こんな細かい配慮も幻組は欠かすことがなかった。農民一人当たり三両分ほどの一朱金を順番に配布して回った。それも、油問屋から三千両をいただいてからすでに一ヶ月がすぎた頃である。
お京は残っている千両を幻組の十人で仲良く分配した。命をかけて働いた報酬である。この辺りがお京が信頼されているところでもあった。お京はどんなに崇高な志を持っていたとしても生活もできないようでは離反が起こるということを学んでいたのだった。分前は常に均等がお京の方針だった。組織を長続きさせるコツでもあった。
了
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SS
いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。