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6月23日 犬を職場に連れて行く日 【SS】ご主人は働き者

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-犬を職場に連れて行く日

1996年(平成8年)にイギリスで始まった記念日で、アメリカでは「Pet Sitters International:PSI」により1999年(平成11年)から実施されている。

イギリスでは「Bring Your Dog to Work Day」、アメリカでは「Take Your Dog to Work Day:TYDTWDay」と呼ばれている。

日付は「父の日」(6月第3日曜日)の後(6月19日以降)の最初の金曜日となっている。飼い犬を職場に連れて行くことによって、犬を飼っていない人にも犬の素晴らしさを知ってもらい、保護施設や愛護団体から動物を引き取ることに関心を持ってもらうことが目的。


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【SS】ご主人は働き者

 今日はお父さんが働いている会社に僕が見学に行ける日。一年に一度のチャンスだから楽しみにしていた日だ。日本の会社としてはとっても珍しい習慣かもしれない。都会の会社ではなく、みんなが車通勤しているからできることなのかもしれない。しかも見学は自由に歩き回ってもいいらしい。外に出ると、走れる場所も準備されているようだ。

 朝食をとった後、お父さんの愛車のレガシーの助手席に飛び乗ってお父さんと二人で出勤。お母さんが部屋の中から手を振って見送っていた。会社に行くまでの途中の景色も楽しみ。川沿いの道路では水の匂いも感じるし、草の香りたつ匂いもたまらない。お父さんは毎日通っているから興味がないみたいだけど、僕にとってはとっても新鮮だ。いつもの散歩とは違うルートだから余計に興奮しちゃうよね。そう言ってる間にお父さんの会社の駐車場に到着。

「ロッキー、今日は大人しくしてないとダメだぞ。イタズラは絶対にだめだからな。そして、お昼ご飯は一緒に外で食べよう。そしてちょっとだけいつものやつをやろうな」

「ワン」

 僕はお父さんの言うことも考えていることも理解できる賢い犬なんだ。だから、今日はあんまりウロウロしないでいい子にしているつもりだ。でも、お父さんはいつもの遊びをして何かしたいんだろうな。まぁ、美味しいものを食べられるからいいけどね。

「あっ、犬飼部長。ロッキーくんですね。トイプードルは可愛いし毛並みがいいですね。我が家でも飼うならトイプードルがいいよねなんて話をしてるんですよ」

「おう、内村くんか。そうか、君の家はまだ犬飼ってないんだ。今日は色んな犬たちが来ると思うけど、よろしくな。トイプードルは毛が抜けなくて掃除も大変じゃないからお勧めだよ」

 お父さんのデスクに行くまでに色んな社員の人たちに声をかけられて、うれしかったな。とりあえずは、愛想を振りまいておけばおやつもらえるかもしれないから、シッポを全力で振りまくったんだ。お昼までは、お父さんはお仕事であっちに行ったりこっちに来たり。全然自分のデスクに座ってないんだ。僕は退屈だったけど、お父さんのデスクの下でウトウトしちゃった。気がついたら、お父さんが戻って来てやっとお昼になったんだ。

「よし、ロッキー。外の広場のベンチに行ってお昼を食べるぞ」

「ワンワン」

 ほとんどの人たちは部屋の中でお昼を食べるみたいだけど、僕たちは外の日陰に置いてあるベンチでランチだ。今日は僕のランチもいつもよりご馳走みたい。お父さんはサンドイッチだった。僕はパンも好きなんだけどなぁ。なんだか外で食べるご飯は美味しくて、パクパクッて食べちゃった。

「お、ロッキーも食べ終わったな。じゃあ、アレやるぞ」

「ワン」

 お父さんはそう言って、ベンチに深く座り、目を閉じた。外から見るとお昼寝してるみたいに見えるだろう。この時、僕の意識はお父さんの中にあった。喋ることはできないからこのまま寝たふりをしていなければ。そう、お父さんの楽しみは、僕と意識を入れ替えることだったんだ。これで色んな人の本音を聞くんだって。

(ここから、お父さんの意識に入れ替わったロッキーの目線)

 いやー、会社の中で犬になるのは緊張するけど楽しいなぁ。どれどれ、さっき可愛いって言っていた内村のところにでも行ってみるか。

「ワン」

「おっ、犬飼部長のところのロッキーじゃないか。いいなぁ、お前は。怒られることもなくて。俺たちはいつもビクビクしてんだぞ。お前の飼い主に。なぁ、みんな」

「そうよね。犬飼部長、怖すぎよね。萎縮しちゃうわ」

 なんと、そんな風に思っていたのか。ちっとも気づかなかったなぁ。自分では優しいつもりだったけど。もう、これ以上聞きたくないから戻ろうかな。そうして外のベンチに戻っていると、同じくベンチの方に向かって急いで歩いてくる女性が見えた。うわ、話しかけられたらまずいな。全速力で戻ろう。

「部長、犬飼部長、お昼休みの時間に申し訳ありません。起きてください」

「ん、どうした。山田さんじゃないか」

 間一髪で意識を元に戻せた。僕もハラハラしたなぁ。目を開けるわけにもいかないし。まぁ、間に合ってよかった。でも、お父さんは戻ってくるのが早かったな、つまらなかったのかな。

「今日は都合が悪いとお伝えしたのですが、どうしても会いたいという〇〇商事のお客様がたった今いらっしゃいまして。お声を掛けに来ました」

「なに、〇〇商事。わかった。すぐに会おう。多分、今進めているプロジェクトの件だ。そうだ、ちょっとの間、ロッキーの面倒を見ててくれるかな」

「わかりました」

 僕はそのまま山田さんと言うお姉さんとボール遊びができたからラッキーだった。そして、お父さんは仕事を無事に終わらせ、家に帰るために僕たちは車に乗った。

「なぁ、ロッキー。みんな、僕のことを怖いって言ってたんだよ。結構ショックだったよ。明日からは気をつけようかなぁ。でも、急に態度を変えると変に思われるかなぁ。あーあ、落ち込んじゃうなぁ。人気あると思ってたのに」

「ワンワン」

 こうしてお母さんの待つ家に帰って来た。心なしか、お父さんのお母さんに対する態度が優しさを増しているような感じがしたのは気のせいかな。


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