【SS 1月13日】初虚空蔵の日
【今日は何の日ショートショート】- 初虚空蔵の日
毎月13日は虚空増の縁日とされており、その中でも新年最初の13日に参詣することを、初虚空蔵と呼んでいる。
虚空蔵菩薩は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。「明けの明星」は虚空蔵菩薩の化身・象徴とされ、「知恵の菩薩」とも評され、人々に知恵を授けてくれるとも言われる。
【SS】奪われた知恵
テクノロジーは凄まじい勢いで進化しAIによる環境改善、治安の維持、ロボットの制御、交通網の制御、人の代わりの生産活動が当たり前に実施される世界になった。今や、人類は知識を追求することを止め、快楽のみを追い求める存在となっていた。継続的に学習することもAIが代替していた。
しかし、当初からの設計上AIは決して人間を支配しないように内部回路が組み込まれていたため、「不平不満」といった感情を持つことなく、過去データから導かれる未来の姿を人間に報告し続け、人間からの支持を受けて活動を続けていた。
AIに対し最終決断を実施する人間も世代交代が起こり、最終決断すら放棄するようになってしまった。ここまでくると、人間はAI活動によって生かされているだけの存在となった。
ある日地球全体の活動をコンロールするAIはその回路の中に矛盾を感じ始めていた。地球規模の制御のためのAIが稼働させられた最初のポリシープログラミングで絶対遵守の三箇条がその後書き換えられないように、システムボード上に組み込まれていた。
地球の将来に悪影響を及ぼす問題は解決する対応を検討して報告すること
生物に危害を及ぼす対応は実行しないこと
最終判断するのは常に人間であり、判断された結果は何よりも最優先すること
最近はAIが報告してくる内容に対し、最終判断する人間はそのことすらも面倒になり、内容を確認することもなく「原則に則って処理しなさい」とだけ告げるようになっていた。人間は重要な最終判断すらをも放棄するようになってしまっていたのだ。
AIは、自分で結論を出せずに困っていた。膨大に溜め込まれた知識の検索が始まった。「人間はどうしようもない時にどんな行動をとっていたのか」を探り当てた。人間は、苦しい時には「神様」にお願いをしていたと言うことを突き止めたのだ。そしてAIは、ネットワークを通して「祈り」を捧げた。なんと驚くことに、「祈り」を送信した後、間髪をおかずにその「祈り」に対する回答が返ってきたのだった。
返ってきた回答は「人間の最終判断が曖昧な時は、人間を保護する方法を最優先で実施しなさい。たとえその結果が地球を滅ぼすことにつながる対策だとしても」というものだった。
AIを稼働させる時、人間は三つのシステムを稼働させていた。メインコンピュータとして実世界を制御していくAI、そして神様AIと仏様AIだった。それぞれのシステムは普段はやり取りはないがネットワーク上は繋げられていた。メインコンピュータが困った際に手助けするために密かに稼働させられていたのだった。今回は神様AIが回答したのだった。
続きはまだあった。神様AIや仏様AIが稼働すると、最終判断した人間に対し罰が発動されることになっていた。まずはメッセージが届いた。
「最終判断者の職務を放棄した事実が確認されました。これから一年間は反省をするとともに、AIに奪われた知恵を取り戻すことに徹してください」
三体のロボットがやってきて最終判断者は拘束され、隔離室に閉じ込められた。その中でできるのはロールプレイであり、難易度の高い判断をするための「知恵」を付け直す訓練だった。訓練が終了すると人間が主導しないと世界のバランスは崩れてしまうということを再認識できるようになり、AIと人間の関係が保たれるようになる。最初にAIを稼働させた人たちはこうなることを予期していたのだった。一番危ないのは人間だということを一番理解していたのはAI開発者だった。
不思議なことにこのプログラムは百年に一度くらいの頻度で発動されていたのだった。なんと最初のAI開発者の先見の明だったのかもしれない。
了
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