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7月12日 ひかわ銅剣の日 【SS】伝わった剣

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- ひかわ銅剣の日

島根県斐川町(現:出雲市)が制定。

1984年(昭和59年)のこの日、島根県斐川町の荒神谷こうじんだにから弥生時代の銅剣358本が発見された。その数は全国最多であり、後にその全てが「島根県荒神谷遺跡出土品」として国宝に指定された。この銅剣の発見は弥生時代の青銅器研究の見直しを迫る大きな発見であった。

記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。この日を中心に荒神谷博物館では特別展を開催している。


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【SS】伝わった剣

 道具を使い、稲作をして定住した生活を営むようになっていった弥生時代。時折起こる他の部族との戦いがある部族の頭を悩ませていた。

「石斧での戦いには限界があるな。何回も叩かないと相手が倒れないから、その間にこっちもやられてしまう。なんとかならないのかな。せっかく作った米を略奪されては我々の子供たちがひもじい思いをしてしまうぞ」

「そうだけど。今俺たちにある戦う道具といえば、石斧くらいしかないぞ。あとは木でも切ってくるくらいしか思いつかない」

 収穫期になると、他の部族から大勢の男たちが押し寄せて収穫した米を奪い取っていくのだ。流石に毎年取られてしまっては食料が足りなくなる。かと言って、攻めていく人数も集められない。せっかく耕した水田だったのでなんとかここに定住したいとみんな思っていた。

 そんな時、海上では台風が吹き荒れ、大陸から出発した船が流されていた。木造の船では大きな波に抗うこともできず、風と波任せで沈没しないように必死で舵をとって進んでいた。舵をとっているのは、一見大陸の人間のように見えるのだが、この時代にはふさわしく無い機器を利用して進路を確認している細い女性だった。なんとその女性は、宇宙からやって来た指導者だったのだ。身なりこそ大陸の人間のようにしてはいるものの、それは極端に細い手足を隠すためだった。この指導者は、今後の大和国の未来のためにあることを伝授しようと大陸で材料を仕入れてやって来ていた。宇宙船を使わないのは、住民に溶け込んで信頼を得、崇拝させるための手段でもあった。

 予期せぬ嵐に出会って、予定の湾ではないところに着いてしまったが、あまり気にする様子はなく、手元の小型ディスプレーを確認しながら、周りを見回している。そして、船の乗組員に指示をして、荷物を下ろし荷車を組み立てさせ、運搬する準備を整えた。そして、迷うことなく東を目指し、水田のある方角を目指して出発した。指導者はどうやら重力制御装置も持っているようで、足元が数センチ浮いて移動している。乗組員はすでにこの指導者を降臨した神様だと信じている様子だった。

 夕暮れになって水田の部落にたどり着いた。ここは、他の部族の襲撃で困っている部落だった。日暮でも見張りのものが立っている。荷車で近づいてくる怪しい集団を見つけ、みんなに声をかけた。

「襲撃かも知れないぞ。みんな出て来てくれ」

「まだ収穫もしてないから、襲撃はないだろう。なんだあれ、みたこともないものを纏っているな。我々のような革じゃないぞ。ヒラヒラしているぞ」

 指導者は絹の服を纏っていた。まるで天女のような出立ちである。よく見ると綺麗な細い顔立ちをしている。髪の毛はまっすぐで長い。その指導者が口を開いた。

「皆の者。他の部族からの襲撃を防げずに困っているのであろう。私が指導して、それを解決してあげよう」

「え、そんなことができるのか。いや、できるのですか」

 指導者は荷車の中からきらりと光る銅剣を取り出して、集まった男たちに見せた。そしてその剣で稲穂に向かって一振りして見せた。柔らかい稲穂がスパッと切れてみんなを驚かせた。

「おお、こ、これはなんですか」

「これは、銅剣という青銅といういくつかの種類の石からできた武器である。刺しても切っても使える。刺された相手は動けなくなるし、振り下ろして腕を切り落としてしまうこともできる。そうすれば相手は戦意喪失するだろう。石斧も砕け散るだろう。私がこの銅剣の作り方を伝授してやろう」

「うわー、神様じゃ。このお方は神様じゃー」

 翌日から銅剣の作り方と銅や錫、亜鉛などの探し方も教えられた。幸いにも少量ではあるが、山に行けば採取することができることを指導者は知っていた。問題なのはその途中にいつも収穫を横取りに来る部族が住んでいることだった。まず、その邪悪な部族を蹴散らして山まで領土にしなければこの先が危うくなる。最初は、指導者が持って来た材料だけで銅剣を作ることになった。鉱石を溶かすための釜などは石を掘って作り、簡易的な精錬所を完成させた。次第に米の収穫時期も近づいて来た。並行して指導者は、米の貯蔵庫も作らせた。床を高く上げて、容易に入れない高さにした。これは風通しを良くするためと獣を近づけないためにも有効だった。

 そして、部落の男たちに行き渡る数の銅剣ができた。ちょうど米の収穫時期になり、部落の住民総出で収穫をし、貯蔵庫に全てを格納した。ほんの少しだけ、それまでと同じように水田の脇に積み上げて襲撃してきた他の部族の男を誘うことにした。

 決戦の時は来た。意気揚々と襲撃してきた部族は、積み上げられた米の量の少なさに激怒し、石斧で襲いかかってきた。待ち構えていた男たちは銅剣をかざし突き進み、石斧の上から銅剣を振り下ろした。石斧を砕き、襲ってきた部族の男の頭は二つに切られてしまった。それを見て、襲ってきた男たちは怯み動きが止まった。再び宙に浮いた指導者が現れた。

「攻め込んできた者達よ。水田の民と協力して生きていくことを誓えば、これ以上の殺し合いはしなくて済む。お前達も水田を作ることに協力し、山の動物を捕まえみんなで分け合うことをすれば、お互いに生きていけるではないか」

 そういうと指導者は重力制御装置を使い、数メートル上の空中まで浮上した。それをみた襲撃者達は平伏して口々に「神様」と叫んでいた。こうして、水田を中心にした集落を統合し、外の敵に備える銅剣もつくり高い塀で集落を囲んだ。そして指導者は声高らかに叫んだ。

「我のことは卑弥呼と呼ぶがいい。お前達の指導者として導いてやろう」


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