7月24日 卒業アルバムの日 【SS】アルバムにいない君
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 卒業アルバムの日
東京の文化放送の人気番組「秋元真夏 卒業アルバムに1人はいそうな人を探すラジオサンデー」と、大阪府枚方市に本社を置き、年間約100万冊もの卒業アルバムを制作するダイコロ株式会社が共同で制定。
日付は「な(7)つ(2)かし(4)い」(懐かしい)と読む語呂合わせから。
保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校・専門学校・大学などで学んだ日々を思い出に刻む「卒業アルバム」を、一年に一度見返すきっかけとなる日にとの願いが込められている。記念日は2023年(令和5年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
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【SS】アルバムにいない君
高校二年生の時、君は僕たちの学校に転校してきた。長い黒髪が印象的な君は白い肌が余計に引き立ち小さな顔が凛々しく感じられた。白鳥小雪という名前はなんとなく儚さまで感じられた。
「おはようございます。この度、父の転勤に合わせ引っ越してこの高校に通うことになりました。私にとっては、みなさんはこの土地での大切な友達となりますので、よろしくお願いします。気軽に話しかけてもらえると嬉しいです」
そんな挨拶で君はクラスの男子生徒を全員虜にしてしまった。そうなると女子生徒は面白くない。君は転校してすぐにいじめの対象となってしまう。でも男子生徒は誰も虐められているとは思ってもいなかった。虐めていた女子生徒グループは、クラスの中では仲のいい友達のフリをして、下校時に小雪が一人になる路地で毎日のように絡んだのだった。
「小雪。あんた生意気だよね。転校生のくせに、クラスの男子全員振り向かせちゃってさ」
「そんなこと、知りません。私は、引っ越してきたので友達を増やそうと思っただけです」
「そうかい。じゃあ、私たちが小雪のいちばんの友達になってやるよ」
「本当に」
「本当だよ。ねぇ、みんな。私たちのいうことをなんでも聞いてくれるなら友達になってやってもいいよね」
「そうだね〜」仲間が口々に言っている。
絡んでいるのは女子の中でもお金持ちの子で高校生らしからぬ小遣いを使って、何人もの女子を従えている、宝麗華というリーダー格の女子だ。これ以上絡まれるようだったら、助けに行こうと思ってビルの陰から僕は見ていた。
「ふーん。そうなんだ。私があなたたちの言うことを聞くんじゃなくて、あなたたちが私の言うことを聞いてくれるのなら、命だけは助けてあげてもいいよ」
「は、小雪、何言ってんの。立場わかってないんじゃないの。私たち五人もいるんだよ」
「知ってるよ。見ればわかるから。たった五人で何ができるの。まぁ、何人連れてきても同じだけど」
「あんた、めっちゃ生意気だね」
そう言って、麗華とその仲間が一斉に小雪に襲いかかった。しかし、小雪は両手を広げてひらりと空中に浮かび攻撃をかわした。そして小雪の目が緑色に変化し始めた途端、小雪は開いた両手をゆっくりと頭上で組み、体を重力に委ねるかのように麗華の頭頂部目がけて組んだ両手を振り下ろした。ズンという鈍い音ともに、麗華は鼻血を出し、白目をむいて道路に倒れこんだ。それを見ていた取り巻きは恐怖のあまり、一斉に逃げ出してしまったのだ。小雪はバッグから鋏を出して、麗華の髪の毛を五センチほど切ってしまった。そして何食わぬ顔をして立ち上がった。
「その角からこっちを見ている男子。ずっと見ていたのは知ってるんだよ。顔をだしな」
言葉まで豹変した小雪に恐れをなした僕は恐る恐る近づいた。すると小雪は何も言わずに持っていたハサミで、空中を切る動作をした。すると不思議なことに裂け目が現れ、僕は小雪に手を引っ張られ、その裂け目の中に連れて行かれた。気がつくと小雪が麗華に絡まれる直前に戻っていた。
僕は瞬間に自分の役割を悟った。小雪は今見ていた結果になる前に、僕が飛び出して止めなければと思い、走って麗華の前に行った。
「麗華。何してるんだ。大勢で絡んでんだろ。見てたぞ」
「ちぇっ、誰かと思ったら、弱虫の太郎じゃん」
「太郎じゃなくて、太陽だよ」
この日は、僕が登場したことで麗華も諦めて帰って行った。気がつくと小雪も消えていた。僕は狐に包まれたような感覚で家に帰り、自分の部屋のベッドにゴロンとした。その瞬間、目の前に小雪が忽然と現れたのだ。全く状況が理解できないでいると小雪が話し始めた。
「私はあなたの子孫。過去をずっと見ているうちに、あなたがかなり弱虫の先祖様だったので少しは強くなってもらおうと思ってやってきたのよ。今のクラスでも今日の女子たちが好き勝手やってるんでしょ。明日から、私も手伝うから過ごしやすいクラスをつくりましょう。今日はご先祖様に力を少し知ってもらうために、ちょっと手荒なことをしてしまったの」
こうして、高校二年生の時に、僕の人生は前向きな人生に変わることになった。まぁ、全ては未来の子孫のおかげなのだが、おかげで悔いのない人生を送っていけそうな気がしている。もうすぐ、高校三年生になるのだが、小雪は卒業アルバムに映るわけには行かないので、未来に帰るといっていなくなってしまった。もちろん、父親の転勤が理由ではあったが。そして、何事もなく僕は大学生になり、いつしか僕は麗華と付き合い始めている。すでに結婚の約束まで交わしている。もしかしたら、小雪は僕と麗華の子供達の子孫ということになるのだろうか。なんとも複雑な気分が僕を襲っているが、どこかに「これで良かったんだ」と思う自分もいるのは間違いない。
了
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