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2月17日 天使のささやきの日 【SS】氷の中の幸せ

【今日は何の日】- 天使のささやきの日

 今日は、ネーミングが素敵な記念日です。

「天使の囁き(てんしのささやき)」とは、マイナス20℃以下になると空気中の水蒸気が凍ってできる氷の結晶「ダイヤモンドダスト」のことなんだそうです。寒いのが苦手な私はまだみたことがありません。

1978年(昭和53年)のこの日、北海道幌加内町母子里(ほろかないちょうもしり)に「天使の囁き実行委員会」というのがあるそうで、気象庁の公式記録にはならなかったものの、国内最低気温のマイナス41.2℃を記録した日である、1994年に制定された日だそうです。

記念日は「天使のささやきの日」の名称で、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。漢字表記の「天使の囁きの日」ともされる。


【SS】氷の中の幸せ

 北の寒い地域に氷の王国があった。平均気温はマイナス三十度の極寒の地だ。あまりの寒さゆえ、動物さえも近づくものはほとんどいない静かな国だった。この国では、毎日のようにダイヤモンドダストが空中を彩っていた。蝋燭や松明の明かりが氷の結晶に反射して幻想的な景色にしてくれる。一日として同じ景色にはならない自然の素晴らしい情景を毎日見ながら暮らしている王女サーラが今日も窓越しに美しい景色を眺めていた。

「こんなに美しいのに、寒さは冷酷よね。全てのものを凍て付かせてしまうわ。この窓の向こう側とこちら側では全く違う世界ね。でも、私は静かなこの国が好きだわ。素敵な人が訪ねて来てくれないかしら。だつて私は外の世界には行けないのだから」

 そんな独り言を毎日のようにダイヤモンドダストのキラキラ輝く景色と音を楽しみながら呟きため息をついていた。ある日、窓ガラスの向こう側に氷の妖精がやって来て、窓ガラスを叩いた。

「あら、氷の妖精さん。お久しぶりね。今日はどうしたのかしら」

「王女様。あまりにも悲しいため息をつかれているので気になってやってきました。王女様が悲しんでいると国中が悲しさに包まれてしまいますよ」

「ああ、そうだったわね。明るく振る舞わないとね。でもね、私ももう十八歳になるのよ。素敵な殿方に出会いたいわ。それが王子様でなくても構わないの。だって、ここにいてもそんなチャンスは巡って来ないもの。もう何年もダイヤモンド王子も来てくれないし」

「それでため息をついていらしたのですね。お可哀想に。私の羽を差し上げて世界中好きなところに行って欲しいくらいですわ。でもそれは叶いませんが、今日はいいお話を持って来ました」

「まぁ、何かしら。ドキドキするわね」

「実はこの国の裏の海を渡ったところの魔女の国のことなのです。以前勇敢な王子様が魔女に対決を挑んで、魔女の不意打ちに合って氷の中に閉じ込められてしまったそうなのです」

「まぁ、なんて可哀想に。でもいいお話には聞こえないけど。むしろ可哀想なお話に聞こえるわ」

「いいえ、ここからです。我が国の王様は王女様の婿としてこの王子様をどうしても迎えたくて、王女様が十八歳になるまでになんとか救出しようと何度も何度も王子様を取り返すため、秘密裏に騎士を派遣されていたのです。それが今回見事に奪還に成功され、王子様は我が国に連れて来られたのです」

「まぁ、それは良かったわ。素敵な方なのかしら」

「それはそれは、素敵な方でございます。ただ一つ、解決しなければならないことがあります」

「何かしら」

「王子様はまだ氷の中に閉じ込められたままなのです。その氷を溶かすには、王子様を一目見て恋に落ちる乙女の涙が必要なのです」

「まぁ、なんてことでしょう。私には自信がありませんわ。だって一度もお会いしたことがありませんもの」

「いいえ、王女様。幼い頃に氷の上を滑って一緒に滑って遊んだ隣の国の王子様を覚えておられませんか」

「えっ、もしかしてダイヤモンド王子のことかしら。もう会えなくなって五年は経ってるんじゃないかしら。当時から私はお慕いしていた方よ」

「そう、そのダイヤモンド王子様なのです。それが今は氷の中に閉じ込められているのです」

 王女は閉じ込められているのがダイヤモンド王子だと聞かされて、居ても立ってもいられなくなるのと同時に、幼き日に一緒に遊んだ思い出が一瞬にしてよみがえり、懐かしさのあまり涙が止まらなくなった。すかさず氷の妖精は王女の涙を氷にして小さな瓶に入れ王女の首にかけた。

「王女様、私がこれから王子様のところにご案内します。王女様の凍らせた涙をいれたこの小瓶を持ってついて来てください。さぁ、出発しましょう」

 こうして王女と氷の妖精は、氷のお城を出てダイヤモンドダストで光る中をソリに乗って南下した。そこには幼い時によく遊んだ氷の小屋があった。その小屋の扉を開けると、真ん中に大きな氷に閉じ込められて、目を閉じている王子様の姿があった。王女は脇目をふらず駆け寄って、すっかり凛々しい端正な顔の青年に成長した王子を氷越しに見てすがりついた。

「ああ、ダイヤモンド王子様。氷の中でさぞ冷たいことでしょう。私の愛で温めてあげましょう」

 王女は小瓶に入った自分の涙の氷を王子様の唇のところにポトリと落とした。すると、氷の涙が落ちたところから徐々に氷が溶け出した。王子を覆っていた氷はたちまち水蒸気となって小屋じゅうに広がり、瞬く間にダイヤモンドダストとなり、小屋の中の蝋燭の光を受けて輝いていた。魔女がかけた魔法が解かれ、王子様は静かに目を開け、目の前にいる王女を見つめた。

「サーラ。サーラだね。会いたかったよ。ずっと」

「ダイヤモンド王子様。私もです」

 こうして再開した二人は氷の国で末永く幸せに暮らしたそうだ。


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