6月7日 母親大会記念日 【SS】母なる王
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-母親大会記念日
1955年(昭和30年)のこの日、東京・豊島公会堂で2000人が参加して第1回母親大会が開催された。
1954年(昭和29年)、アメリカがビキニ環礁で水爆実験を行ったことをきっかけに、日本婦人団体連合会は国際民主婦人連盟に原水爆禁止を提案し、世界母親大会がスイスで開かれることになった。
これに先立ち第1回日本母親大会が開催された。「嫁をもらう、娘を片付けるなどの言い方をやめ、結婚と言おう」「主人と呼ばず夫と呼ぼう」「女だてらに、という言い方はやめよう」などと申し合わせた。この大会によって母親たちの社会活動の意欲が高まったと言われている。
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【SS】母なる王
はるか昔、人が住んでいることすら知られていない土地で文明が栄えていた。この国に通じる道はなく険しい森によって遮断されているような国だった。この国では「結婚」という習慣もなかった。男も女も何区別なく育てられるのだが、十六歳になった時に運命の宣告をされるのだ。男も女もこの国の子供であるという印を太ももに刺青される。それは森と川を表しているような刺青だった。そして、生まれた順番を記録するための番号も一緒に彫られた。その番号と連携して国の中では記録として両親の名、生年月日などが残された。それは国を出たものが再びこの国に入るときに照合するためだった。
十六歳になったとき男と女では異なった試練が課せらるのがこの国の習慣だった。男は外の世界で生きていく知識を身につけ、国の外へと出される。外の知識を身につけ十年後に戻ってくる試練だった。しかし、大半は途中で行方不明になるか不慮の事故で死亡してしまうことがあるため、国に戻って来れる男は出ていった時のほぼ三割程度だった。その間、女は国を守るために兵士としての訓練を受ける。もとより、男よりも筋肉は劣るのだが、それを補うための道具の使い方を叩き込まれるのだ。ナイフ、弓矢、火薬、ロープ、罠などありとあらゆる訓練を受け、最終的には、最も適した武器を扱うグループへと編入される。国境の警備などの要職に就くことになるのだった。
こうして十六歳を境に人生を大きく分けられ、二十六歳で無事戻ってきた男たちは、外の世界で揉まれて生き抜いてきたことで成長して帰ってくる。そして国で待っている女たちと十年の時を経て向かい合い、自分のパートナーを見つけるのだった。パートナーを見つける期限は一年間のみ。もし、見つけることができなかった男は国から永久追放される。その逆に女はその後の生涯を国境警備に捧げることなるのだった。そのため、偽りのパートナーとして名乗りを上げるものも少なくなかった。そんなことを牽制するため、四年以内に三人以上の子を儲けることができれば階級が上げられ昇進となり、そうでない場合は逆に降格となり厳しい仕事の担当とされるのだった。
この国を収めている王は女性だった。代々女性が王の称号を受け継いでいる国だったのだ。しかも血筋ではなく、多くの子を産んだものの中で且つ女子を多く産んだものが王の候補となり、王に挑戦し勝てば交代するという制度だった。その理由は明確だった。命を育めるのは女性だけだからだ。そして王を助けるためにパートナーとしての男が支えていた。男の役割は王を守ることもさることながら、国の外で得た知識を活かし、国を発展させる施策を実施することだったのだ。ある時、現在の王であるカーラ王に対し、パールという母親が挑戦する権利を得ていた。
「カーラ王、私はパールと申します。この度、王の椅子への挑戦権を得ました。どうか、私との勝負をお受けください」
「パール。よくここまで上り詰めてきたわね。嬉しく思うわ。喜んであなたの挑戦を受けてたつわ。この椅子にかけて不正なき戦いを約束します」
こうして王様との戦いが始まった。戦いは四週間休みなしで続けられるルールだ。一週間は、剣の腕前、素手の戦い、ロープ技、チェス、法律の知識、毒の知識、国民に対するスピーチをそれぞれ日を変えて実施する。つまり七種類の競技を一日一種目ずつ行い、それを四回繰り返して得点を競うのだ。結果は毎日公表され早ければ三週目に確定することもある。
カーラとパールは実は先輩と後輩に当たる間柄だった。年齢差は十歳。肉体的な戦いはカーラに不利だと思われたが、互角に渡り合い国民を驚かせていた。戦いは四週目に突入した。どちらが勝ってもおかしくない試合運びだった。万が一ドローの場合は王座は動かない決まりだ。得点は同点のまま、最後のスピーチの日がやってきた。ここで国民の気持ちを惹きつけた方が勝者となるだろう。カーラは「これまで通り過去からの習慣を守り、国を安定した状態に保つ」という趣旨の内容でスピーチし拍手喝采で終了した。そしていよいよパールのスピーチが始まった。
「私は、この国の慣習を根こそぎ変えたいのです。時間はかかるかもしれませんが挑戦したいのです。そのために私を王にしてください。私は、男女が離れて生活する十六歳からの十年間で苦しむ人たちを多く見てきました。また男の多くは国に戻れないまま死亡するものも多くいました。これでは、多くの子を作り国を大きく発展させることはできません。我々の国に穀物や動物が不足しているわけではありません。どちらかといえば余り過ぎているくらいです。それらを若い男女に回して生活向上が図れるようにしたいと思っているのです。そうすれば男女共に文武を学び、人それぞれの得意分野で国に寄与できるようになるでしょう。みんなが幸せを感じるそんな王国を作りたいのです」
結果はこのスピーチで決まった。カーラも心の中では望んでいたことだった。カーラはパールの手をとり、王座に座らせ、王冠を渡した。新しい国王パールが誕生したのだ。
了
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