4月19日 地図の日 【SS】見えない場所
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 地図の日
1800年(寛政12年)のこの日、伊能忠敬(いのう ただたか、1745~1818年)が蝦夷地の測量に出発した。
その後、16年にわたって測量をして歩き、本格的な日本全土の実測地図である『大日本沿海輿地全図』を完成させ、国土の正確な姿を明らかにした。「輿地(よち)」とは大地や地球、全世界のことを意味する。この地図は、江戸幕府の事業として測量・作成が行われたもので、その中心となって製作した彼の名前から「伊能図(いのうず)」とも称される。
実際に地図が完成したのは伊能の死後、1821年(文政4年)のことである。縮尺36,000分の1の大図、216,000分の1の中図、432,000分の1の小図があり、大図は214枚、中図は8枚、小図は3枚で測量範囲をカバーしている。この他に特別大図や特別小図、特別地域図などといった特殊な地図も存在する。すべて手書きの彩色地図である。
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【SS】見えない場所
今や地図に載っていない場所はないほど地図は詳細になっている。ナビゲーション・システムが一般的になってからというもの細い裏道に至るまで正確に作られた地図だけではなく、衛星写真との融合や人の目線でまるでその場所にいるかのように周辺の写真を確認できるところまで進化してきた。カーナビ自体も発展したが、いまではスマホの地図アプリへと主役の座も交代しそうな勢いである。カーナビの場合は地図の更新サービスが期限つきだったり、追加料金が必要になったりするが、スマホやタブレットの地図は常に最新状態で利用可能だ。しかも追加課金されることもない。そして現在ではカーナビもスマホ連携のナビが利用できるようにもなってきてしまった。まだ機能的には差もあるかもしれないが、ナビ専用の地図の時代はそろそろ終わりになるのかもしれない。
地上の地図に至っては、人々が生活する場でもあり先進国を中心に充実してきている。今ではそれが当たり前のサービスとして人々は利用するようになった。以前のように印刷された地図帳を持ち歩くことも無くなった。ある意味、懐かしくもあるのだが、必要性は無くなってしまった。また、登山家のための山の地図もアプリとして登場している。一方、海の地図も充実してきた。船の安全運行のためには、深さなどの情報が不可欠だからだ。ただ、地上の地図がスマホアプリとして発展したようなスピードで改善は進んではいない。広く一般に必要とされているわけではないからだろう。ただし釣り人のニーズによってアプリ化は進んでいる。
地上を中心に地図は進化しているのだが、地下の地図はどうなっているのだろうか。地下鉄の乗換案内などはあるが、地図ではない。おそらく人が歩いたり車で通ったりすることが無いため地図の必要性がないのだろう。しかし、未来を考えてみると、物流網の道路の地下化や鉄道の地下化の推進などが進むことにより、地下における立体交差などの情報も必要となり、そのうちにドライバーに必要な情報となっていくことは容易に予想されていた。そして月日は流れた。
2050年、学生を中心に、いろんな構想が立ち上がってきた。そのうちの一つは、地下を掘削するマシーンに位置情報の計測装置をつけてしまい、掘り進んだ情報を記録してしまおうというものだ。そうすれば完成後に車で走って情報を集めるまで地図に反映できないということは無くなると考えた学生が現れた。実に合理的な考え方であるが、残念ながらまだそこまでのニーズに育っていないため、実現はできていない。もっとも掘削する際に位置情報などをパラメータとして掘り進むので、実現は比較的簡単な話かもしれない。
道路以外の地下の状態を把握するという観点ではどうだろうか。現在でも鍾乳洞のように地下には空洞の場所がたくさんある。地下水が流れている層もその一つと考えてもいいかもしれない。メジャーな部分はすでに情報として取得されてはいるが、まだまだ人が行かない場所は多数存在している。ある学生はこれらの地図を整備するにはどうしたらいいのかということを考えていた。センサーを利用することで計測が可能だろうとは考えたが、どうやって効率よく計測するかということを考えていた。そして最近頻繁に使われるようになったドローンの利用に行き着いた。時間はかかるかもしれないがドローンにセンサーを取り付け、空洞の位置情報を取得して地図化してしまおうというものだった。
このように、地下に対しても一部の学生が興味を持ち実現する手段を考え始め、試験的に実施する段階の前まで時代は変わってきた。しかも既存技術の組み合わせで実現できそうなものばかりである。地下の情報もそのうちつぶさに把握され、地図化される時代もそう遠くはないだろう。
そうなることは人間に気づかれていない地底国家でも薄々気がついていた。いずれは地上の文明が進み、地下や海底の詮索が細かくなってくるだろうと考えていたのである。そこで地底国家では、最初から天井に工夫を施して解らないようにしてきていたのだった。地底国家の天井は全ての部分で掘削マシーンでは穴を開けることはできないくらいの硬さで固められていたのだったが、地上の掘削マシーンの性能が思ったよりも高くなり、硬い岩盤も粉砕して穴を開けてしまうことが最近わかってきた。エジプトに始まった地底国家の存在が地上の文明の発展に伴い、白日のもとに晒されるかもしれないというリスクが浮上してきたのだ。
地底国家における地図は、地底の道を作ると同時に地図を作成してきており、現在は全てがデジタル化されている。そこで彼らは「先回り対策」というプロジェクトを発足させた。地上で地下を掘って道路拡張や線路拡張をする動きを察知した場合は、影響を受ける地底国家の街をそっくり移転させ、街の痕跡を消してしまおうという壮大な対応方法だった。もともと、都市圏の下には街を作ってはいなかったが、街と街を繋ぐ道路が問題になりそうだったのだ。こうして地上の文明の発展による地図の整備は、地底国家にとって思わぬ方向へと進む可能性を秘めていたのだった。
地上の人間は作った道や街を地図という見える形で管理し把握していこうとし、地底国家は地上の人間に発見されないために、自分たちが作った街や道路の痕跡を消して対応しようとすることになりそうな気配だ。
了
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