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3月16日 ミドルの日 【SS】ダンディな恋

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- ミドルの日

大阪府大阪市中央区に本社を置き、男性用化粧品のトップメーカーとして知られる株式会社マンダムが2011年(平成23年)に制定した記念日で、日付は「ミ(3)ドル(16)」と読む語呂合わせから。

自社製品の無香料の整髪料「ルシード」(LUCIDO)のリニューアルを記念したもの。日本を支えるミドル世代の男性の活き活きとした若々しい生き方を応援することが目的だそうだ。


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【SS】ダンディな恋

「営業一課の雪ノ下課長ってダンディで素敵よね」
「そうね、いつもスーツをビシッと着こなして、カルティエの時計だものね」
「私さ、雪ノ下課長が朝ランニングしているのを目撃したんだー。かっこよかったなー。筋肉質でトレーニングウェアも似合ってたのよ」
「へー、すごーい」

 これは、会社での私こと営業一課課長である雪の下光一の女性社員の評価というか社内ゴシップである。私は今年で四十三歳になる押しも押されぬミドルエイジの親父だ。親父と言ってもまだ結婚はしていない。バツも付いてはいない。別に結婚願望がないわけではないが、気づいたらこの年になっていた。それに、周りが作り上げた雪ノ下光一のイメージが一人歩きしているらしく、付き合う女性はみんな結婚を望まない。私と何度かデートして抱かれること自体が女性たちの格付けに影響しているようで、社内の女性たちとは真剣な恋愛には発展しないのだ。

 私自身は平凡な男だと思っているのだが、周りはそんなふうに見てはくれない。普段住んでいるところはお台場の高層マンションだが、六本木と麻布にもマンションを持っていて気分次第で帰る家を決めたり、週末には、三浦か伊豆の別荘に行ってマリンスポーツを楽しんでいる。ちょっと連続した休暇が取れた時はオーストラリアのコンドミニアムに気分転換に行ったりしているだけなのだ。どうもそんな暮らし自体が普通では出来ないらしく、羨ましがれる要因の一つのようだ。これらの資産は全て父親が築いたものであり、私の力ではないのだが、私の周りでは投資に成功しているらしいという噂まで流れている。もちろん投資はしてはいるが、それ自体は日々の食費や飲み代に消えてしまっている。

 なんとかしなければと毎日思ってはいるのだが、どうしても生活スタイルを変えられないでいる。朝、六時に起きてランニング。その後シャワーを浴びバスローブのまま髪の毛をセットし、近くの喫茶店から届けられるスペシャルモーニングセットを食べてから、新しいシャツを着てスーツを着る。八時半に家を出て出勤だ。会社での営業成績は、常に三番以内には入っている。部下の指導をしなければならない分が営業成績に響いているがそれは仕方ない。そして、残業はしないで夕方からは社員とのコミュニケーションの時間に充てる。問題なのはここでやたらと女性社員からの予約依頼が多いということだ。私としては、男性社員とも話をしたいのだが、なかなか予定が合わせられないでいる。

 こんな毎日を過ごしていると、なかなか結婚までのレールを敷くことが難しくなり、いまだに独身のままになってしまった。何か考えないといけないなと最近思い始めているがいいアイデアは特になく、充実した毎日が過ぎているだけだった。

 遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。いや、遠くないな。頭の上からのようだ。

「あなた。いつまで寝てるの。遅刻するわよ。もう、早く起きて朝ごはん食べて会社に行ってよ。邪魔なんだから。いい加減に子供の手本になってよ、もう」

「ん、あー、なんだよ。いい夢を見てたのになぁ」

「どうせ碌でもない夢でしょ。周りからかっこいいとか褒められる夢とか」

「え、いや。良くわかるな、お前」

「だって、にやけた顔して涎が出てるもの。分かり過ぎるくらいわかるわよ」

「あ〜あぁ、現実はダンディとは程遠いなぁ」

 目が覚めていきなり現実に引き戻された。私は、雪ノ下光一。万年主任の営業だ。営業成績はビリから数えた方が早い位置だ。結婚して十五年になる。子供は小学四年生、五年生の二人だ。妻は体格が良く私より体重がありそうな体型をしている。まぁ、そういう私も、お腹周りはいつも健康診断で肥満指定され、血圧も高い。最近は頭のてっぺんも薄くなり始めている。そう、夢で見ていた雪ノ下光一とは全く逆なのだ。

「あーあ、夢の中だけでもかっこよく振る舞ってダンディと言われ続けたいなぁ。それとも、頑張ってジムにでも通ってみようかな。お前はどう思う」

「全くもう。ジムに行くお金なんてありませんよ。子供達にお金がかかるんだから。それにこの小さな家のローンだってまだまだ長いのよ。リストラされないようにちゃんと仕事してよ」

「まぁ、そうだよね。俺もそう思ってたよ」

 そしていつものように、卵かけご飯と納豆の朝食を掻き込むように食べ、ネクタイをカバンに放り込み、自転車を漕いで最寄駅の駐輪場まで急ぐ朝だった。



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