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2月26日 脱出の日 【SS】脱走

【今日は何の日】- 脱出の日

 1815年のこの日、エルバ島に流刑されていたナポレオン・ボナパルト(Napoléon Bonaparte、1769~1821年)が島を脱出してパリに向かった。
1814年、フランスの北東にはオーストリア・プロイセン軍、北西にはスウェーデン軍、南方にはイギリス軍の大軍がフランス国境を固め、大包囲網によりフランス帝国の首都パリは陥落したのだった。ナポレオンは外交によって退位と終戦を目指したが、マルモン元帥らの裏切りによって無条件に退位させられ、フォンテーヌブロー条約の締結の後、地中海コルシカ島とイタリア本土の間にあるエルバ島の小領主として追放されていた。1815年、ナポレオンはエルバ島を脱出し、パリに戻って復位を成し遂げた。


【SS】脱走

「悲しそうな顔をしてるけど、どうしたの」

「え、今喋ったの、もしかして君かい。君、、、鳥じゃないのかい」

「私は鳥だけどお話ができるのよ。あなたがあまりにも悲しそうな顔をしているからつい、話しかけちゃったわ」

 クリスは冤罪で捕まり、小さな無人島に作られている収容所に入れられていた。街を目指して旅をしている途中、たまたま鍛冶屋の主人が殺害されている現場を通りかかった。ふと倒れている主人を発見し駆け寄った時に、偶然にも軍隊が駆けつけ囚われてしまったのだった。有無を言わさず犯人に仕立て上げられ、弁明する余地すら無いままこの収容所に入れられてしまった。刑期は六十年といわれ抗うことも出来なかった。入所して一週間が過ぎ、鉄格子のはめられた窓から悲しそうに透き通るような青い空を眺めていたら、どこからともなく虹色の鳥が飛んできて鉄格子越しに話しかけてきたのだった。

「僕はね。人なんて殺してないのに捕まってしまったんだよ。それどころか助けようとしただけなのにさ。よそ者だからって信用してもらえなくて、結局ここに入れられてしまったんだ。僕の人生はここで終わるんだと思ったら悲しくなっちゃったんだ」

「あなたが罪を犯してないっていうことは私も知っているわ。ほら、この時のことでしょう」

 虹色の鳥がそういうとクリスが入れられている部屋の石の壁に映像が映し出された。それは、クリスが街に向かう道を歩いてきて鍛冶屋に近づいてくるところだった。そして、鍛冶屋での異変に気づいたクリスが、思わず駆け寄って主人を抱き起こしている場面が鮮明に写し出されていたのだ。その一部始終を見守るように軍隊の中の一人が草むらに隠れてじっと見ている光景も映っていた。クリスは驚いた。

「えっ、軍隊にはめられてしまったってこと。もしかして」

「そのようね。おそらく殺したのはこの軍隊だと思うわ。確認するまでもなくね。この鍛冶屋は武器を作ることだけは決して承諾しなかった鍛冶屋だったのよ。農民のための農具しか作らなかったのよ。だから、軍隊の恨みを買ってしまったということ。その時にあなたが都合よく通りかかってしまったのね」

「そんな。正義の部隊じゃないのか軍隊は」

「あなたはとても正直な人ね。もしあなたがここから出たいというのなら出してあげるけど。条件があるわ」

「条件?でも牢破りなんてしたらまた罪が重くなってしまうよ」

「だから、ここを出たら私たちの国に行って一緒に生活するのよ。それが条件。私たちの国は、妖精がたくさん暮らしているところ。人間と仲良く暮らしたいと思っていても人間はずる賢いから私たちの土地を奪いにくるのよ。そんな時にあなたが代理人となって交渉してくれる役を担ってくれると助かるの」

「僕にできるかなぁ。でもこの狭い石の部屋で一生を終わるのはいやだし、いいことをすることになりそうだから、君の提案受けることにするよ」

「わかったわ。じゃあ、少し待っててね。救出担当者を連れてくるから」

 そういうと虹色の鳥は青い空へと消えていった。やがて青い空が消えるくらい雲に覆われ、日が沈みそうになっても何も起きなかった。クリスは「やっぱりおしゃべりができるだけの鳥だったのかなぁ」と思い始めた時、吠えるようなものすごい音が響き渡った。鉄格子の窓に近づくといきなり怒鳴られた。

「窓に近づくな、青年よ。部屋の後ろに行け。壁を破壊するぞ」

 怒鳴ったのは、なんと羽ばたいている体長十メートルはあろうかというドラゴンだった。雲間から時々顔を出す月明かりから逃れるように、水面スレスレに飛んできて、クリスのいるところに来たのだ。ドラゴンはその鋭い爪を持った足で鉄格子の窓をガシッと掴むと羽を思いっきり羽ばたき、後退りした。すると見事に海側の壁一面が剥がれ、月明かりの綺麗な海が切り取った絵のように現れた。当然、看守たちも気づいた。応戦しようと武器を手に取り始めていた。

 ドラゴンはそんな光景を確認すると、口を大きく開き、唸り声と共に火炎放射器さながらの炎を浴びせかけた。もちろん直接ではなく威嚇だ。看守たちが怯んだ隙に、再びクリスのところにやってきて足を伸ばしながら大声で叫んだ。

「俺の足にしっかりしがみつけ。死んでも手を離すんじゃないぞ」

 クリスは言われる通りに、ドラゴンの足に飛び移り必死に抱きついた。ドラゴンは、口から炎を吐き散らしながら、天高く舞い上がり雲の中へと消えた。隠れるように雲の中をしばらく飛んでいると急に降下し始め、綺麗な草原へと着地した。草の香りがなんとも清々しい場所だった。まだ、夜中だったが、淡く光る女の子が近づいてくるのを感じた。

「ようこそ。妖精の国へ。私たちはあなたを歓迎します。これからその命が尽きるまでここで暮らしてください」

 女の子と思っていたのは、妖精の国の王女だった。どおりでドラゴンまでも傅いているわけだと思った。クリスは、この日起こったことがまだ整理できないでいたが、一夜明け、美しい太陽を見て、目の前に広がる波のような草原の中に立ち、自由というものを手に入れたのだという実感を感じていた。そして誓った。

「仕返しを考えても得られるものは何もない。これからはこの土地で僕ができることを探して恩返しをしていこう」



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