7月8日 七転八起の日 【SS】彼女の元へ
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 七転八起の日
熊本県阿蘇市でキクイモ商品をはじめ、縁起を担ぐ「くまモンの起き上がりこぼし」などを販売する阿蘇壱番屋が制定。
日付は「七(7)転八(8)起」の数字にちなんで。2016年(平成28年)4月14日および16日に発生した熊本地震からの復興の気持ちを込めて、何度でも起き上がる心意気を表す「くまモンの起き上がりこぼし」で多くの人に勇気と励ましを送ることが目的。記念日は2017年(平成29年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】彼女の元へ
僕は一則、国の機関で仕事をしている二十六歳。僕と付き合っている彼女は、宇宙での出来事を記事にしている宇宙ライターで、志織という二十五歳。今は遠く離れて暮らしている。僕はまだこの荒れ果てた地球に一人で住んでいるのだが、彼女はすでに家族と共に火星に移住してしまった。今は、ほとんどの地球人が火星への移住を完了した。もちろん、僕の両親や弟も先に移住してしまった。僕には、地球上の日本が安全に放置できる状態になっているのかを点検する仕事が残っているのだ。もちろん、一人で仕事をしているわけではない。同じプロジェクトにいる人たちは各県に数人ずつアサインされ、連携して実施している。僕の担当は東京都の江戸川区だ。東京都の場合は密集しているので区単位で担当が別れている。江戸川区は町工場から住宅地まで幅広いので点検も大変だ。特に町工場での残った化学薬品などの点検は、危険だし大変な作業になっている。しかし、放置するわけにはいかない。
ある町工場では、大量の硫化水素が放置されていて危うくそのまま下水に流しそうになったことがあった。幸いにも流す直前に気がついてヒヤッとしたことも経験した。かと思えば、空になったマンションを点検していると、置き去りにされたペットを発見したこともあった。これが結構問題なのである。放置すると野生化してしまうので、殺処分ということになるのだが、ペット用の宇宙船も準備されており、受け取る人間が特定できる場合は火星まで運んであげることができる。しかし、今回見つけたワンちゃんの持ち主とは連絡が取れなかった。そのまま見殺しにもできないので、僕はワンちゃんの写真をネットに上げて引き取ってくれる人を探した。ネットといっても地球上のことではなく火星で整備されているネット環境のことだ。そんな活動まで実施しているので、なかなか担当区域の点検が終了しないでいた。
そんなとき、隣の葛飾区担当の友達の純也から朗報が入ってきた。最新のAI搭載ドローンロボットの支給が開始され、順番に担当者のところに届けられているという。数日すれば僕のところにも届くらしい。もちろん宅急便などはないので、事前に支給されている連絡用のGPSウォッチの位置情報を頼りに自らドローンが飛んでやってくるはずだ。半径一キロに近づいたらアラームが鳴るのでできるだけ場所を動かないで待つことにする。そのとき、僕のGPSウォッチのアラームがなった。なんだか信号が弱い。もう五百メートルのところまで近づいているようだ。しかしあまりにもアラームが弱々しい。はっとした。今僕はビルの地下にいるということに気がついた。慌てて階段を駆け上り、地上に出る。元気のいいアラーム音に変わり、上空からドローンが降りてきた。
やれやれと思い、取説を確認しペット探索と化学薬品探索の機能をオンにしてドローンを放った。これで充電が必要になる三日後までは勝手に探索してくれて都度連絡が入ることになる。一気に作業は捗りそうだ。こんな地道な後片付けの作業を開始してからすでに一年近くが経過しようとしている。予定では一年の作業だったが僕の担当エリアはまだ残りがある。彼女にも早く会いたいと思いながら作業をしていると点検が雑になることもありやり直し作業が増え、スケジュールを圧迫することになっていたのだ。まぁ、自分のせいなのだが。
そんな時、持つべきものは友である。純也からまたまた連絡が入った。なんと、純也は自分の担当区画の点検が終わったから、僕を手伝ってくれるという。これでなんとかスケジュールを守れそうだ。
「おーい、一則。きたぞ。お前のことだから、もたついてるんだろうなと思ってさ。手伝ってやるよ」
「純也〜。助かる〜。お前がいないと俺は生きていけないかも」
「バカ言ってんじゃないよ。お前には、しっかり者の志織ちゃんがいるじゃないか。まぁ、今は火星だから、地球で頼れるのは俺だけかもしれないけどな」
「そうそう、神様、仏様、純也様〜。よし、これで俄然やる気が出た。さっさと終わらせて火星に行こう」
こうして力強い味方を得た僕は、純也とともに点検を無事終わらせ、火星行きの宇宙船に乗り込んだ。途端に疲れがどっと出て心地よく眠った。目が覚めた時には、火星基地のドッグに着陸している最中だった。志織が迎えにきているかなぁと期待で胸をいっぱいにして純也といっしよにタラップを降りて手続きを済ませ、到着ロビーにでた。しおりが駆け寄ってきて抱きついてきた。横では純也にも抱きついている女性がいる。純也の彼女の出海だ。
純也とはここで別れて志織とともに住居地区に行った。そこには、僕の両親と志織の両親がたくさんの犬を引き連れて待っていた。
「うわー、どうしたの。このたくさんの犬たち。えっ、もしかして」
「おかえりー。これからこの子達の里親を見つける作業が残ってるよ。一則」
なんと、地球での点検結果の後始末が終わってはいなかった。でも、みんなといっしよにできるからハッピーかな。何度失敗してもやり直せばいいのさ。
了
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
いつも読んでいただきありがとうございます。
コメントも気軽に入れていただけるとうれしいです。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。