【SS 1月3日】駆け落ちの日
【今日は何の日ショートショート】- 駆け落ちの日
今日は実にすごい記念日である。駆け落ちに対する記念日があるとは知らなかった。1938年(昭和13年)1月3日、女優の岡田嘉子(おかだ よしこ、1902~1992年)と日本共産党員で新協劇団の演出家であった杉本良吉(すぎもと りょうきち、1907~1939年)が、当時日本領土であった樺太の国境を越えてソ連へ亡命してしまった。それを記念して駆け落ちの日とされたのだが、杉本はその後スパイ容疑で銃殺刑になってしまった。ひとりになった女優岡田は、モスクワ放送局で働くようになり日本人の年下の同僚と一緒になり生涯を穏やかに暮らしたそうだ。
【SS】恋の行方
人は恋に落ちると周りが見えなくなり一途に相手のことだけを思ってしまう。これは人間としての本能なのだろうか。どんなに理性を働かせようとしてもブレーキの役割には程遠く、どちらかといえば脇目も振らず走ってしまうのかもしれない。
しかし、すべての人間がそうかというとそうではない。打算的に考える人もいるし、その逆で相手が幸せなら自分は我慢するという人も少なからずいるものである。そして、相手のために我慢する人は心が美しい人だと称賛されることもしばしば。それは本当だろうか。たった一度の人生を他人のために犠牲にすることは美しいのだろうか。
そんなことを考えている一人の女性がいた。彼女の心の中は「絶対に自分自身が幸せになりたい」と思ってはいても周りを気にしてすべてのことを一歩譲って考え話をしてしまう。そのため、周りの人からは天使のような人だと言われていた。本人も自分はいい人なんだと思っていた。
しかし、事件は起きた。たまらなく胸がときめく相手と出会ってしまったのだ。だが、その相手には家庭があった。それでも一旦火がつき燃え上がった心は自分でも止められなくなってしまっていた。そして、相手の男性も同じように思ってしまっていた。二人はそれまでの人生をとても真面目な生き方をして来た男女だったが、お互いが命をかけてもこの人以外にはいないと考えてしまったのだ。男性には妻がいた。しかし、その時はそのこと自体、つまり結婚したことが間違いだったんだと男性は自分に言い聞かせていた。
多くの人が予想するように男性の妻は何も悪くはない。そうすると不倫をしてしまった男性が100%悪いという判定を世間は下してしまう。仕方ないことである。しかし、当の二人にとってはどうでもいいことであった。法律的に夫婦であるとか、婚姻届を出しているとか全く関係がなかった。お互いに惹かれてしまったのである。それだけが事実だった。
二人は旅に出た。誰も知らないところで二人だけで生活しようと考えた。しかし、そんな甘い考えは一週間とは持たない。「生きていく」ということは何らかの犠牲の上でなりたっているのだと改めて気づいてしまったのだ。二人に残された選択は「手を取り合っての死」しかなかった。
二人は凍えそうな冬の山中に入って行こうとしていた。そこに、男性の妻は現れた。
「あなたが死を選ぶのなら私は止めない。その代わり私と私のお腹の子もいっしょに連れていってください。あなたの傍にいる女性と共に」
男性は本能的に自分が行なっている行為をやめなければならないと考えてしまった。論理的な理由などない。本能的に判断したのだ。これから生まれてくる命を優先しなければいけないと。一緒にいた女性は何も言えなかった。
雪の山中から連れ戻された二人はそれぞれの家族のもとに帰っていった。男性は自宅に帰ってから、妻から一枚の紙を渡された。離婚届だった。一方、一緒にいた女性は帰ったあと、両親からの強引な勧めで見合いをして結婚することになった。
はたして、二人にとって幸せの道は何だったのだろうか。もっと違った選択肢があったような気がしてならない。
了
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SS
🌿【照葉の小説】ショートショート集 ← SSマガジンへのリンク
🌿【照葉の小説】短編以上の小説集 ← 電子出版を含めた小説集
🌿【照葉の日常】日々の出来事 ← 日々の出来事、エッセイ
☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。
🌿松浦照葉の販売中の電子書籍一覧
🌿松浦照葉のプロフィール
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。