6月22日 かにの日 【SS】想定外
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-かにの日
大阪府大阪市中央区に本社を置き、かに料理の専門店を運営する株式会社「かに道楽」が1990年(平成2年)に制定。
日付は星占いにおいて「かに座」の最初の日が6月22日であることと、50音で「か」が6番目、「に」が22番目で当たることから。
かに料理の美味しさを広めることが目的。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。この日には食事券のプレゼントキャンペーンなどが行われる。
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【SS】想定外
今日も惑星の平和を守るためにスペース・パトロールを実施しているグループがいる。不審なエイリアンの侵入を防ぐために、時空の裂け目などを発見し、塞ぐことも実施している。また、ワープしなければならない時のために、極力船体を小さく頑丈に設計した宇宙船を使っている。長さは五メートル程度、幅と高さは二メートル程度と地球の車と同じくらいの大きさだ。そんな宇宙船がパトロール中に異変を発見した。
「おい、時空の裂け目がまた現れているぞ。今までとはちょっと違う様だな。少し近づいて、小さな爆発を起こして閉じてしまおう」
「了解しました。ゆっくりと近づいて、爆破します。ん、おかしいです、キャプテン」
「どうした。近づきすぎだぞ。これで爆破したら我々も巻き込まれてしまう。早く時空の裂け目から離れろ」
「そ、それが、コントロールできません。どんどん引き寄せられます。ダメです、抵抗できません。裂け目に入ります」
「緊急事態だ。全員ワープ体制に入れ。裂け目に吸い込まれたら、すぐに時空ワープするぞ」
「ウワーーー、制御不能。制御不能」
宇宙船は、九州の玄界灘に面した砂浜に近いところに着水していた。陸に向かって寄せる波で流され、砂浜の隣にある岩礁のところに乗り上げてしまった。陸を進むためのタイヤを出して乗り越えようと試みるがうまくいかない。船内ではクルー全員が無事を確認したあと、空気の濃度を確認し、船外に出てみることにした。
「キャプテン。なんとなく我々とよく似た生き物がいるようです」
「宇宙座標を確認して惑星を特定してみろ」
「はい。あっ、キャプテン、大変です。地球に来てしまったようです」
「何、それはまずい。地球では、我々によく似た海洋生物を好んで食べるそうではないか。我々も捕獲されないように武装して外に出よう」
クルー全員は船外に出て周りを確認することにした。しかし、地球の重力がかなり大きいため、クルーは移動すること自体がままならない。一歩一歩前進したいが進みにくい。仕方がないので全員横歩きで移動することにした。多少は移動スピードが上がった。そんな時、クルーメンバーによく似た地球の生物にであった。カニだ。その瞬間、大きな肌色をしている腕がいきなり現れ、目の前にいたカニをヒョイと掴み上げてしまった。驚いたクルーたちは、見上げた。人間の子供が仁王立ちしている。慌てて引き返そうとするが重力が大きいため動きが鈍い。上の方から見下ろしている子供は笑顔になって叫んだ。
「おにいちゃん、ここにいっぱいおるぞ。獲って帰ろう」
子供の兄らしい子もやって来て、あっというまにクルー全員が捕まってしまった。地球の生物カニと一緒にバケツに入れられたクルーは、一応カニに尋ねてはみたものの、当然のことながらカニは喋ることはできない。代わりに泡を吹くばかりだった。このままでは大変なことになってしまうと考えたキャプテンは、人間の子供とコンタクトを取る試みをした。体の大きさが違うのでキャプテンは直接子供の脳に電波を飛ばし会話を試みた。
『私の声が聞こえるかい。私たちは、君たちが捕まえたカニの仲間ではない。地球の外の惑星からやって来たものだ。今すぐ立ち止まって、我々を解放してくれ』
「誰、僕に話しかけているのは。変な冗談はやめてよ。今日はカニが大量に取れたから、みんなで茹でて食べるんだから」
『待て待て、茹でるのはやめてくれ。とりあえず、止まって話をしようではないか。こっちを向いてくれるか。手を振るから』
カニをいれたカゴを持っている男の子は、立ち止まり、不思議そうな顔をしてカゴを覗き込んだ。そして、そのカゴの中にいるカニが手を振っているのをみた。しかもよくみると、爪ではない。三本指が付いているようにも見える。それによく目を凝らしてみると、服を着ているようにも見える。男の子は驚いて兄を呼んだ。
「お兄ちゃん、カニが手を振ってしゃべっとる」
「あぁ、何をばかなこと言うとる。カニは手を振るに決まっとろーが。ん、うわぁ、なんだこのカニ、よくみたら服着とるぞ」
こうしてやっとカニではなく宇宙人かもしれないと認識してくれた子供たちは話し始めた。
「地球に何しに来たの。まさか侵略。でもよわっちぃから違うか」
『我々は、スペース・パトロールのチームで、宇宙をパトロールしているんだよ。ところが間違えてこの地球にワープして来てしまったと言うわけなんだ。地球には我々にそっくりな生物がいるから近づかないようにしていたんだが、今回間違えて来てしまった。そして君たちに捕まった。なんとかして我々は帰るからここから解放してくれ。決して侵略ではないから』
「ふーん。そうなんだ。じゃあさ、さっきの岩場のところで離してあげるから宇宙人だという証拠を見せてよ」
大人だったらもっと拗れていたかもしれないが、子供だったため割と素直に聞いてくれ、宇宙船のそばの岩場で解放してくれた。クルーは急いで宇宙船に戻り、故障していないかチェックした。幸いにも故障はなかった。しかも、ワープした航路の記録も残っていた。逆を辿れば戻れるはずだ。キャプテンは子供達にメッセージを送った。
『これから宇宙船を浮上させるからよく見てて。黒くて四角い乗り物だ。そして消える。我々を解放してくれてありがとう』
岩場から黒くて四角いものが空中に浮かび上がった。子供たちは不思議そうに眺めている。その瞬間、ピカッと光ったかと思うと黒い乗り物は姿を消した。子供他は一生懸命に手を振った。宇宙船の内部では、やっと安堵の空気が流れ始めた。
「まさか、地球にワープしてしまうとは、驚いたな。それに、カニは我々と瓜二つだったな。今回三匹ほど捕獲して来たから、基地に帰ったら研究してみよう。地球人は茹でて食べると言っていたから、もしかすると我々にとっても食料になるかもしれない。もしそうなら、なんとかして地球と友好条約を結び貿易を開始したいものだ。ただ、共食いしている気分になるから惑星のみんなにはカニの姿は隠した方がいいかもしれない」
宇宙船の中では、捉えられた地球のカニが泡を吹きまくっていた。
了
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