5月11日 おかあちゃん同盟の日 【SS】助け合いの日々
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-おかあちゃん同盟の日
岐阜県羽島市の「世界おかあちゃん同盟」が制定。
2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災で多くの人が「人とのつながり」「支え合い」の大切さを強く感じた。おかあちゃんが幸せだと家庭も子どもたちも幸せになる。そう信じて毎月この日におかあちゃんたちが集い、語らい、学び、交流を深め、支え合うコミュニティーを作ろうと記念日とした。日付は大震災を忘れないとの思いから同じ毎月11日に。
記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。その後、登録は終了したようで、2019年(令和元年)12月時点で同協会の認定記念日としては確認できない。
同団体は、3月11日を「世界おかあちゃん同盟の日」に制定している。
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【SS】助け合いの日々
「山下さん、今日の勉強会はどうしますか。みなさん家事で忙しそうですよね。少し、時間を短縮して実施しますか」
「そうですね。今日の勉強会の内容は、青色申告の方法でしたよね。どうせ一回では終わらないし、覚えられないと思いますので、今日は概要をお話しして、必要な人だけが再度集まって実践のプロセスの勉強会にするようにしましょうか。近藤さんのお宅も個人事業主さんでしたっけ」
「そうなんですよ、我が家も去年から個人事業主になったんですけど、白色で申告してしまったので次は青色にしてなんとか経費の枠を拡大して節税したいと思ってるんですよ。このおかあちゃん同盟の勉強会があるんで助かってます。本当に。この街に引っ越してきて本当に良かったと思ってます」
「この街は特殊ですからね。おかあちゃんの役割の人が集まって協力し助け合うことで街の秩序や安全も守られると思うんてすよ。だから、継続してやっていきましよう」
いつの頃からだろうか。家の仕事を担当する人のことを性別に関係なくおかあちゃんと呼ぶようになったのは。「お母ちゃん」ではなく、ひらがなで「おかあちゃん」と定義したところに意味があった。「母」の字を入れてしまうと、子供を育める女性を指すことになるからである。そうではなくて、役割としての名称にすべく「おかあちゃん」とひらがな表記にしたらしい。だったら、全く違った名称にしても良かったのではと思ってしまうが、家の仕事の多くは女性が実施しているイメージが色濃く残っているために、住民に分かりやすい言葉ということで「おかあちゃん」に統一されたようだった。
世の中の考え方も柔軟になって、主婦だったり主夫だったりと使い分けにも困るような単語が飛び交うようになっている。漢字での表記は異なるが担当する仕事の内容は同じだった。ただ男女平等を意識しすぎるが故に漢字での表記も工夫するようになって久しい。
そんな時代になり、新しい街が試験的に作られることになった。都市部周辺の再開発地域であり、新しい働き方を応援するという市の方針を開発会社が実現した街だ。昭和という時代では、女性が家にいて家事一般をこなし、子育てを担当することが当たり前だと言われていた。その後夫婦共働き時代へと突入し、共に子育ても担当するようになっていった。そして、平成、令和と駆け抜け、今の「等世」という年号の時代に入った。「等世」では完全に男女平等の制度が確立し、男女どちらかに偏ることは無くなった。とはいえ、もちろん肉体的構造の差からくるものに対しては残ってはいる。
そんな時代背景を受け、家の中の仕事を男性の方が担当する家庭も増加の一途をたどっていた。そんな折、新しい街づくりが始まり、大胆にも、男性が家事を担当する人たちのための街を作ったのだった。おかあちゃんの役割は男性が担当している。中には働いている人もいるが、ほとんどは専業主夫だ。したがって、幼稚園の送り迎えや小学校のPTA活動、自治会の集会などに集まった顔ぶれをみると全員が男性ということになる。住んでいる人たちにとってはすごく当たり前の光景ではあったが、隣町の住民からすれば普通ではなかった。そんな街でのおかあちゃん同盟の助け合いが日常の光景としてみられている。山下さんと近藤さんはこの街に引っ越してきたおかあちゃん同盟の一員だったのだ。
おかあちゃんの役割を全員男性が担うことにはいろんなメリットがあった。街の美観を維持するための活動には花壇を作り、集会所のメンテナンスや高い場所の電球交換、夜の安全維持のための見回りなど男性である方が効率が良いこともあるのだ。もっとも、細かいところを見落としてしまう傾向はあるが、集団行動でカバーしその後の懇親会と称した飲み会で活力を得ている。しかし、家事はしっかりとこなし、おかあちゃん同盟の中でお互いに苦手な分野を補い合い、勉強するサークルみたいなものまで誕生していた。その一つに、青色申告の方法の勉強会が催されていたのだった。
個人事業主も比較的多い街の住民のために節税の方法を含め、申告の仕方をみんなで共有しようという考えが広がった。その結果、複数の家庭で営んでいる事業を一つの株式会社としてまとめようという動きも出てきていたのだった。多くのパートナーつまり妻は、街の外の一般の会社に勤めに出てはいたのだが、家に残っている父親たちは、子育てをしながら自宅でできる仕事を少しだけ実施し家計の足しにしている状況だった。個々人では小さなことではあったが、それぞれの家庭の仕事に影響が出ない範囲で助け合うことにより、大きな会社組織にできそうだということを自治会の理事長は気付き、街全体で株式会社を作ることができれば、信頼し合える街づくりに発展できると考えたのだった。
その結果、いくつかの株式会社が誕生し、街の中のおかあちゃん連合に加入している男性たちがその社員となった。勤務時間はほぼパートタイム状態であり、多くの仕事は街の中の生活のための助け合いだった。たとえば、それは家庭教師だったり、ベビーシッターだったり、家電修理だっり、庭作りだったりといったことが主要な仕事だった。もちろん、専門的な仕事で街の外の仕事も担当したりすることはあるのだが、大半は街の維持に寄与する内容ばかりだった。
等世時代での街の生活もそろそろ二十年を経過しようとしていた。おかあちゃん同盟も当たり前となり、街で生活を始めた家族の子供たちが独立したり家庭を持ったりする時代へと移行が始まった。おかあちゃん同盟はこの街の存続をかけ、世代間を超えて継続していける街づくりに挑戦し始めている。独立していく子供達へのスキルトランスファーの挑戦が始まろうとしていた。そろそろ等世という年号も次へとバトンが渡されようとしている。次はどんな年号になり、どんな新しい試みが世の中に出てくるのだろうか。この街の次世代の子供達にも期待が高まる。
了
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