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7月27日 政治を考える日 【SS】腐敗

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 政治を考える日

1976年(昭和51年)のこの日、ロッキード事件で当時の田中角栄前首相が逮捕された。

ロッキード事件とは、アメリカのロッキード社がジェット旅客機・トライスターの売り込みの際に、日本の政界に多額の賄賂を贈ったとされる疑獄事件で、その年のアメリカ上院外交委員会で発覚した。田中角栄前首相らは、トライスター導入の工作資金5億円の授受にからむ賄賂罪と外為法(外国為替及び外国貿易法)違反の疑いで逮捕された。


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【SS】腐敗

 日本の政治業界は過去と決別し、政党の中に潜む腐敗した政治家の一掃が始まった。ほぼ全員と言っていいほどの政治家が第一線を退き、新進気鋭の若い政治家が取って代わっていた。こうなるまでに十五年という長い時間を費やしたが、やっと一段落し、国民もこれからの政治に期待できるようになり、発足した新しい内閣もクリーンを売りとして活動を開始した。国内の景気回復を目指して新しい内閣は施策に取り組み始めた。総理大臣には、若葉史緒里という四十代女性が日本政界史上初の女性総理大臣になっている。国民から寄せられる期待は大きい。

 若葉は主婦でもあり大学生と高校生の母親でもある。少子化の対策にも力を入れるとともに、円安が進む中で円の地位回復のための施策を進める計画を進めなければと考えている首相だ。首相の貿易政策をサポートしているのは、民間のベンチャーで役員にもなっている四十代の若井翔という男性で、IT関連分野の貿易に知見を持っている。同様に子供達へのITを利用した教育の推進に強く力を入れて推進している小若育江も首相を懸命にサポートしている。

 若返った政治家で構成された新内閣の支持率は鰻登りで上昇し、九十パーセントを超える水準で推移している。それだけ国民の期待が感じられていた。そして国民からは、若葉マーク内閣として親しまれることにもなった。しかし、それほど簡単にいかないのが政治の世界である。若葉総理は、なかなか景気回復が感じられない日本経済に関して心なしか焦りを感じ始めていた。もっと円高を目指して貿易黒字化を進めたいところだったがなかなか進まない。日本銀行の介入もなかなか結果につながらない。そんな時、若井翔は関税に目をつけ始めていた。小若育江と相談して、海外から輸入するIT機器に例外なく関税をかけてしまおうという施策だ。ひと昔もふた昔も前の国内産業の保護政策のような案に誰しも疑問に思っていたのだが、首相が信頼するスタッフからの提案だったため、無碍にもできず首相判断ということになった。

 若葉総理は、関税をかけることで国内のIT機器メーカーが投資を推進し、内需に応じた開発を実現できれば、外国に対しても競争力が高くなり、IT機器関連で製造立国日本の地位を再び取り戻せる可能性もあるという進言に耳を傾けていたのだった。円安に陥っても優れた製品が日本で作られれば、海外からの購入が増え貿易黒字を維持することもできるかもしれないと考えてしまった。そもそも関税に頼る施策は、世界経済の歪みを生み出す可能性が高くなるということを考えずに、自国の架空の利益のみを考えてしまうことにもなりかねない。

 若井翔は国内のIT機器製造メーカーを行脚していた。海外メーカーにことごとく先陣を切られ利益を持っていかれていることを各メーカーから聞かされ、なんとか保護しなければ製造分野のリーダー日本としての地位が守れなくなるかもしれないと考え始めたのである。そして、若井は海外のITメーカーも秘密裏に訪問していた。そしてとんでもない施策を展開し始めていたのだった。

 若井は海外の大手ITメーカーに対し、当分の間、日本への輸出量を半減するようにお願いをして回ったのだ。つまり、日本政府はIT機器の輸入に対する関税を大幅に引き上げるから今のままの輸出量は維持できなくなることを伝え、早急に生産調整を実施するように依頼したのである。このことは海外メーカーからすれば損失の回避処理が事前にできることになり、後進国への輸出量を増加させることに切り替えて、全体の利益確保に舵を切るということを可能にしたのだ。そして、若井は日本のメーカーに対し、半年後から少なくなるIT機器の輸入量を国内補填する努力を促したのだ。価格的優位に立っていた海外IT機器も関税分を考慮すれば国内製造品と価格差は無くなると踏んだ結果の行動だった。したがって、若井としては何としてでも関税の引き上げを実施せざるを得ない状況を作ってしまった。裏では多額の現金も動いていた。若井が役員を務めるIT機器の貿易会社は時代の変化を読み間違えてしまい、会社が倒産の危機を迎えていたため、国内でのIT危機調達と販売に活路を見出そうとしていたのだった。

 若葉総理は自分の得意ではない分野に対し、懸命に説明する若井の言葉のマジックに納得していった。小若も子供たちに提供するIT機器が日本製になることは教育上も好ましいし、日本の会社に興味を持たせることができるようになるという後押しの言葉を発していたので、若葉総理は決断した。IT機器の輸入関税の大幅引き上げに同意したのだ。

 世界中のニュースがこのことを取り上げた。各国の新聞は日本政府の施策に対し、厳しいバッシングを浴びせた。そんな時、小さな綻びから悪事が表に出ることになる。海外のIT機器メーカーで勤務している日本人の一人が若井の行動を日本の警察にリークしたのだ。そのあとは、急転直下、若井の計画が白日の元にさらされると同時に、若葉総理の資質にも疑問の声が上がり始めた。クリーンなイメージを持って立ち上げた若い政治もやはり腐敗には勝てなかったという記事が日本国内を席巻したのだ。支持率は大きく下降線をたどり、新政府の信用は失墜してしまった。

 情報の流れを堰き止めることができなくなった現代では、ちょっとした悪事であっても、どこからか漏れ出すものである。そして、人の上に立つものはそのことを考慮して判断をし続けなければならない。性善説だけでは、人を動かして正しいことを行うことはできない時代に入っているのだということを認識する必要があるのだろう。この事件が発覚したあと、内閣は解散総選挙となり、若葉元総理は政界から姿を消してしまった。


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