1月20日 玉の輿の日 【SS】無茶振り
【今日は何の日】- 玉の輿の日
1904年1月20日、アメリカのモルガン財閥創始者の甥であるジョージ・モルガンと祇園の芸妓だったお雪が結婚した。
当時のお雪には恋人がいたので、モルガンには見向きもせず、諦めさせるために身請け金は四万円だと言ったそうだ。現在の価値にして八億円相当になるらしい。
これで諦めるだろうと思っていたら、モルガンはその条件を承知してしまった。お雪にしてみれば無茶振りの要求と思っていたのだろうが、モルガンにしてみれば準備できる金額だったようだ。そして、この時のお雪の恋人だった京大生は付き合いが親にバレて会えなく身を引いてしまった。結果としてお雪はモルガンと結ばれるようになった。日本におけるシンデレラと呼ばれたそうだ。
【SS】無茶振り
昔、ヨーロッパの森の中に妖精の国があった。そしてそこにはとても美しい妖精のエリカという王女様がいた。どこからみても人間の美しい女性だった。ただ一つ、背中に美しく光り輝く羽根が生えていること以外は。
ある日、騎士として高みを目指すために一人で修行の旅を続けていた人間の若者が、この妖精の国に迷い込んでしまった。隣の国への近道をしようとして山に入ってしまい妖精の森に足を踏み入れてしまったのだった。妖精の森は入るのは簡単だが、出口は見つけられないようになっている迷いの森だったのだ。麓の人間たちはそのことを知っているので近づくものはいなかった。しかし若者は一人旅だったのでそんなこととは知らずに足を踏み入れてしまったのだ。
若者が森の中に入ってきたことは国の境の警備担当の木から木へ情報が伝達され、最後はリスに情報が託されて王様へと報告された。それをみていた王女は王様に願い出た。
「お父様、私は人間というものにまだ会ったことがありません。ぜひ、人間と会って話をしてみたいのですが、許していただけませんか」
「何、人間と話をしたいだと。うーん、誠実な人間であればエリカの願いを聞き入れてやってもいいが、そうでなければ懲らしめなければならない。エリカよ、誠実な人間かどうかお前から人間に対する誠実さを証明する課題を出してあげなさい。その結果で考えようではないか」
「お父様、ありがとうございます。では、早速課題を考えて、伝えさせます。ふふっ、楽しみが増えたわ」
王女エリカはどんな課題を出そうかなと考えあぐねていると、それを見ていた伝達係のちょっと意地悪なリスが声をかけた。
「王女様、この妖精の国では、反対側の悪魔の国との国境付近での争いが絶えません。悪魔たちもこちら側の森の中に来ると力が出せないので入ってくることはないと思いますが、国境付近の樹木や動物たちはいつも困っているようです。これをなんとかする課題を出してみてはいかがですか」
「まぁ、リスさん、あなたはすごいことを言い出すのね。この妖精の国ができないことを人間に解決させようというのね」
「へへ、物は試しというではありませんか。本物の人間の騎士かどうかを見極められると思います」
「わかったわ。まだ会ったこともない人間だけど、試してみる価値はあるわね。もしそんなことができたら、この国に残ってほしいものね。じゃあ、その課題を人間に伝えてちょうだい」
「かしこまりました」
こうして森の中で彷徨っている人間の若者にリスは課題を伝えた。
「無断でこの森に入ったからには、今から与える課題を解決しない限りは、人間界に戻ることはできない。もし、課題が解決した時には我が妖精の国の王女様にお目通りが叶うだろう」
「え、リスが喋っている。妖精の国だからか。それで、課題とはなんだ」
「反対側の悪魔の国との国境付近で起こっている争いを永久に鎮圧することだ」
「解った。やって見せよう」
若い騎士はキッパリと言い切り、悪魔の国との境を目指した。若い騎士にはある考えがあった。
国境に着いてみると、確かに悪魔の兵士と妖精の国の兵士である樹木が小競り合いをしていた。悪魔の兵士は火をつけようと必死になってはいるが、妖精の国では大量の氷で火を消す応戦をしていて、いずれも一歩も譲らない争いが繰り広げられていた。若い騎士は悪魔の兵士を恐れることもなくズンズンと悪魔の領地内に入っていった。驚いたのは悪魔の兵士たちだ。それまで妖精の国の樹木と戦っていた悪魔の兵士たちが一斉に若い騎士にめがけて襲いかかってきた。誰しもが、これで騎士は終わりだと確信した。
多くの悪魔の兵士に襲いかかられた騎士はその姿も見えなくなるほど悪魔の兵士の群れに埋もれていった。おそらく悪魔の兵士は騎士の精気を吸い取るつもりなのだろう。妖精の国側にいる誰しもが諦めた表情になっていた。
その時、悪魔の兵士だらけの山の真ん中から一線の光が天に届けとばかりに光り輝いたのだ。黒山のようになっていた悪魔の兵士たちは一瞬で光に飲み込まれ、初めからいなかったかのように草原だけが現れた。そこには天を貫くように剣をつき上げた若き騎士が仁王立ちしていた。騎士が持っていた剣は聖剣であり、悪魔を浄化することができる教会から賜った物だったのだ。若き騎士は自分の聖剣を国境の小高い丘に刺して、聖剣から放たれる光で悪魔の侵入を防ぐようにした。
「これで悪魔は妖精の国には入ってこれない」
この驚異的な対応はすぐに王様とともに王女エリカの耳にも入り、この若き騎士は宮殿に呼び寄せられた。
「若き騎士よ。素晴らしい働きである。そのほう、名は何という」
「私は、ブライトと申します。王様。お役に立てて光栄でございます」
「うむ。ブライトとやら。そちは人間であるが、この妖精の国の要として尽くしてはくれないだろうか」
「それは、どういうことでしょうか」
「うむ。異例ではあるが我が娘エリカ王女と一緒になって、この国を守ってもらいたいのじゃ。どうかな」
「ありがたき幸せです。王女様に異論がなければ是非」
騎士ブライトは王様の隣にいる王女の美しさにとうに心を奪われていた。同時に王女も凛々しい騎士の姿に惹かれていた。
「お父様、私はこの方と一緒になります」
こうして人間の国と妖精の国に新しい絆が生まれた。お互いに強い味方を得たことになり、その後も妖精の国は繁栄し続けた。ちなみにこの二人の間に授かった子供には羽はなかったそうだ。
了
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