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【ファンタジー】14歳になった僕

今年、僕は14歳になった。どうやら長生きの方らしい。
時々咳き込むようになったけど、まだ全然元気だよ。
ご飯を食べるスピードも遅くなったけど、まだ全然元気だよ。
前みたいに早く走れなくなったけど、まだ全然元気だよ。
おしっこの回数はだいぶ増えちゃったけど、まだ全然元気だよ。
毛の色も薄くなってお髭みたいになったけど、まだ全然元気だよ。

あれ、これってやっぱり歳をとったっていうことかなぁ?
でも、食欲はまだまだあるよ。だって、みんなが食べてたら欲しくなるもん。
だから、ワンワン、ワンワンって吠えてしまう。
家の中では、時々なら駆け回るし、散歩に行けるときはとっても嬉しい。

この家の子になってよかったなぁ。


出会い

14年前、僕はペットショップの「商品」だった。
ケージの外のちょっとだけ動ける場所で引き取ってくれる人を待つ身だ。
何匹か一緒にいたけど仲良しの子はいなかった。
なんだか、僕はトイ・プードルという種類らしい。
ある日、そこそこの年齢の夫婦がやってきた。

「お、チャンスかな」
「僕はここにいるよ !」  俄然アピールした。

「可愛い子犬がいっぱいいるね」
「飼いたくなっちゃうわね、こんなに可愛いと」
「飼っちゃう?」

僕を連れて帰って欲しいな。ワンワンワン !  吠えてみた。
大体、吠えてしまうと良い結果は出ないことを知っている。
でも、吠えてしまう。。。
案の定、その夫婦は帰っていった。

「あーあ、なんか良い感じだったのになぁ、また来てくれないかなぁ」

いつもお世話をしてくれるお姉さんや売れ残った仲間との時間だ。

「今日も、二匹いなくなったなぁ」
「このまま、誰も引き取ってくれなかったら僕はどうなるんだろう」
「僕は血統書だってあるのに」

一週間たった日。一週間前にきた夫婦がまたやって来た。

「おっ、これは運命かな」

その夫婦は、僕を見て笑った。

「見て見て、ねぇ、あの子まだいたよ」
「違う子じゃないのかな?」
「ううん、絶対、先週見た子よ、間違いない」

なんだか僕のことを話してるみたいだな。
ちょっと可愛い素振りを見せておかないとだめかな。

「クーン、クーン」どうだ、これで寄ってくるだろ。尻尾も振ってるし。

「わー、私たちをわかってるみたい。運命かも」
「ほんとだね。飼っちゃおうか」
「いいの?」
「店員さーん、この子をお願いしまーす」

画して、僕は、この夫婦の元に引き取られることとなった。血統書とともに。
小さな紙の箱に入れられ、僕はこの夫婦に渡された。良かった。
こうして僕に、新しいお父さんとお母さんができた。


なんだかゆらゆらしてる。初めてだな、なんだろう。
クーン、見えないから不安だよー。

「あれー、怖いのかな? 車に乗っているのが」
「そうかも知れないわよ、ゆっくり運転してね」
「了解」

「車」というものは止まった。
変な感じだったのは、「車」というものに乗っていたからなのかなぁ。
それからバタンバタンという音がして静かになった。

しばらくするとなんとなく変な感覚。ズーンという感じをお腹に感じる。
すごいスピードで上に上がっている感じがする。

「怖いよー、怖いよー」

ポーン、「15階です」 なんだか聞き慣れない声がする。変な声。

「さぁ、ここが新しいお家だよー」
「仲良く、一緒に暮らしましょうね」
「海も見えるぞー」

えっ、ここが新しいお家? 走っていいのかな? お水飲みたいなー?

そこは、とっても明るいマンションだった。窓も大きくて素敵だ。
海も見えるらしいが、僕には見えない。でも青空は見える。

嬉しさのあまり、おしっこを漏らしてしまった。。。ごめんなさい。


新しい生活

全てがこれまでと違う。部屋中を走り回っていると怒られる場所と何にも言われない場所がある。何故かはわからないけど、怒られると怖いから怒られる部屋には行かない。でも、しばらくすると忘れてしまう。だから何回も怒られる。

おしっこすると褒められるときと怒られる時があるけどなんでかな?
白い紙みたいなところだと褒められてお菓子をもらえるんだよね。
だから、少しずつおしっこするんだ。
そうするとお菓子を何回ももらえることがわかったから。

僕の「家」が準備されているけど、狭いところは嫌い。いつも自由がいい。
夜になると「家」の入り口が閉じられてしまう。嫌だなぁ。僕は閉じ込められるのは嫌いなんだ。

朝になるとお父さんは、「仕事」というのに行っているみたい。いつも仕事に行ってくるよと言っていなくなる。お母さんと二人で夕方まで過ごす。時々、お母さんは、「買い物」というものに行っている。帰ってきた時は荷物が増えている。お父さんは帰って来ても荷物が増えないのに不思議だなぁと思う。

お父さんが帰ってくるときはなんとなく分かるんだ。だから玄関の前で待つんだ。お父さんも喜んでくれるから、僕も嬉しい。お母さんはなんで分かるのかなって顔してるね。


散歩は楽しい

毎日じゃないけど、散歩に行くのは楽しい。
ボール遊びも楽しいけどやっぱり散歩が一番。
家の中でも自由自在に走り回っているけど、やっぱり外がいい。
匂いが違うんだ。だから、クンクンクンクンしてしまう。
縄張りも作らないといけないから、おしっこもするよ。
丸い高い棒のようなコンクリートのところにもたくさんおしっこしてあるから、僕もしたいけどお母さんから叱られる。そこでおしっこはいけないんだって。

公園に行ったら、リードを長くしてくれるから走れるんだ。とっても楽しい。
芝生の匂いをかきながら駆け回るのは、生きてるって感じ。

お花見もいったよ。「桜」っていうんだって。
でも、僕はおやつの方がいい。みんなでお弁当を食べるときは繋がれるから嫌い。
僕にくれないから吠えてしまう。ワンワン、ワンワンワン。そして怒られる。

僕とおんなじような子がたくさん走ってるところも行ったよ。
「ドッグラン」っていうんだって。リードがないから楽しかったな。
いっぱい走れたし、怒られなかったから。また行きたいなぁ。


大人になったよ

1歳半を過ぎると大人なんだって。人間は、20年もかかるのに。
しかも、この後は、人間の4倍の速さで歳をとっていくんだって。やだなー。
でも、どこから大人になったかなんて関係ないよね。僕は僕。変わらない。
でも、お父さんの年を追い抜いてしまうのかなぁ。

そういえば、変わらないくらい嫌なことがある。
「病院」というところでは、勝手に口をぐりぐりされたりするし、「注射」とかっていう針をグサって刺されるやつは嫌い。だから病院に入ると震えが止まらない。
連れて行かないで欲しいんだけどなぁ。でもね、お薬は好きだよ。甘いから。

それから、時々、自慢の毛を切るところに連れて行かれるのも嫌い。なんだか、狭いお風呂に入れられて毛を切られる。そして、すごいあったかい風が出てくる筒みたいなものでブォーという音と共に、体全体に当てられるんだ。最後には濡れた毛が乾くんだけど、それまでが恐い。お父さんもお母さんもいないから。。。

あとね。散歩かなと思って、喜んで行くと車に乗る時が時々あるんだ。
すると、僕の嫌いなケージがいっぱい並んでいるところに連れて行かれる時があるんだ。そこに行くと、お父さんとお母さんは何日か来なくなってしまう。
捨てられたのかなーって心配になるけど、いつもちゃんと迎えに来てくれる。
僕が何か悪いことしたから怒ってたのかなぁ。会えなくなるととっても寂しいよ。

大人になっても、お父さんとお母さんと一緒にいたいんだよ。僕は。


引っ越しするの?

13歳になった。
なんだか、お家のなかが、いつもと違う空気が流れてる。
知らない人も入ってくる。あれ、小さい子供がいる家庭だな。
なぜ、僕の家に入ってくるのかな。背広を着ている人も一緒にいる。
でもお父さんは背広を着てないから、「仕事」の人ではなさそう。。。
なんだか嫌だなぁ。吠えちゃおうかな〜。
あっ、お父さんに抱っこされちゃった。仕方ないな。黙っていよう。

だいぶ寒くなってきた。冬かな?
お父さんとお母さんは、何やら大変そうだな。

「引っ越し業者、どうしようか」
「ここにくる時にパンダさんマークでしっかり仕事してくれたから同じでいいよ」
「そうだね。じゃあ、パンダさんにしよう」

「引っ越し」ってなんだろう。聞いたことないな。
もしかしたら何処かに行くのかな。僕はどうなるのかな? 心配だなぁ

なんだか、知らないお兄さんやお姉さんが来て、ものを運び出してる。
お父さん、お母さん、どうなっちゃうの? お家なくなっちゃうの?

僕は嫌だよー。

抵抗してやるぞー。おしっこかけてやる。立てられたソファーにジャー。
お母さんから、すごい怒られた。。。だって行きたくないんだもん。

結局、僕の抵抗は虚しく、終わった。その後、お父さんの車で移動。
どこに行くんだろう。お家あるのかなぁ。もう暗くなっちゃったよ。怖いよ。


新しいお家

あれ。着いたみたい。
あれ、今までとはちょっと違うね。
廊下もこれまでより長いぞ。走れるかなー。

でも、ズーンっていう感じでおうちに行くのは一緒だね。あんまり好きじゃないけど、お父さんとお母さんが気にしてないから、まぁいいや。

今度のお家も素敵だね。窓が大きいね。お空がよく見えるよ。
寝るときはお父さんと一緒だから安心、安心。

近くの公園も大きくて大好き。いっぱい走れるから。
でも体力的にはそんなに走れなくなっちゃったかな。

「誕生日おめでとう。14歳だね。頑張ったね」
「本当に、この子は元気よね。良かったー」
「この調子ならまだまだ長生きしそうだね」
「そうね。まだ大丈夫よ」

僕は、全然大丈夫だよ。なぜ心配してるの?


ずっと一緒にいてね

14歳になった。
人間で言えば、僕は70歳くらいらしい。
お父さんは、63歳。逆転しちゃった。
僕たちの平均寿命は、10歳から15歳なんだって。
僕はまだ元気なんだけどな。

そういえば、この前公園であったお友達は、足がヨタヨタしてたなー。
確か7歳だった。僕って特別なのかな? もしかしたら、ずーと元気なのかも。

あっ、そういえば、ちょっと前「病院」というところに行ったけど、記憶がない時間があるんだ。口の中がちょっと腫れてて、お父さんとお母さんは心配して連れて行ったみたい。なんだか、それを検査したみたいだけど、僕は眠っちゃったからわからない。でも元気だから大丈夫だったんだよね。

「検査の結果はどうだったのでしょうか」
「ご安心ください。良性の腫瘍でした。このままで問題ないでしょう」
「良かった。じゃあ、まだまだ元気で過ごせますね」
「もう、既に14歳ですが、元気だと思いますよ」

そのあと、お父さんもお母さんもちょっとだけ優しくなったみたいだ。嬉しい。
でも、僕には、いつものご飯しかくれない。本当は、お父さんとお母さんが食べているものを食べたいんだけどな。ワンワン

でも、それよりも、いつまでも一緒にいられる方がいいな。
明日、散歩に連れて行ってくれるかな。海の方までいけると嬉しいな。
そう言えば、新しいおうちになってから、お父さんは「仕事」というところに行かなくなったね。僕は嬉しいけど。

これからも、ずーっと一緒にいてね。
僕、頑張って長生きするから。


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