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4月28日 シニアの日 【SS】成熟した国

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- シニアの日

作詞家・作曲家・プロデューサーの中村泰士(なかむら たいじ、1939~2020年)氏が2001年(平成13年)に制定。

日付は「シ(4)ニ(2)ア(8)」と読む語呂合わせから。

大人として自信を持ち、自分なりの価値観で生活を創造する人々を「シニア」と呼ぶ。40代後半から50代後半のシニア世代に共感される音楽やメッセージを発信する日。「シニアーズデイ」は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。



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【SS】成熟した国

 時間が進むのは早いもので、少子高齢化と叫ばれて危機感を煽っていた時代が懐かしく感じられるほどに月日は流れてしまいました。今では、歴史の電子教科書の片隅で何とか発見できる程度の単語となっています。令和と呼ばれていた時から五百年後の現代。すでに元号という考えも天皇制という制度も過去のものになってしまいました。地球は一つになったのです。

 現在の地球では、出産の国、教育の国、経済の国、成熟の国、祖先の国という五つの国に再分割されました。人の一生は国を一つずつ経験することで終焉を迎えることになります。最後の祖先の国というのはお墓だけの国であり、北極と南極に近いエリアにあるのです。人間が住むにはコストがかかる場所ということで決定されたエリアです。最も、墓参りに行く人々のために交通網は整備され、空飛ぶタクシーが主流となりました。道を作ってしまうと環境破壊を起こす可能性が高いので道はありません。空路か海路のみでつながっています。

 経済の国で活動するのは仕事についている人たちです。ここで愛する人を見つけ、妊娠すると奥様は出産の国に移動して三年以上は産前産後を過ごすことになります。誰も逆らうことはできません。夫は月に一度面会のために出産の国に入ることを許されていますので、その日を目標にして懸命に仕事をします。そして、生まれた子供が満四歳になると隣の国である教育の国に母親と共に移動します。ここで十六歳になるまで母親と一緒に生活をし、十七歳からは一人で寮に入り学問を習得して学び終わるまで過ごすことになります。教育の国では親との面会は自由にできますが、子供が経済の国に入ることは許されません。あくまでも親が教育の国に入り面会をするのです。

 学問の習得を終えたものは、経済の国に強制移動となります。その際、職種の希望調査と適性検査が実施され、AIによる判定に基づいた適切な仕事がアサインされます。その仕事で結果を出すと更に希望する道へと進路変更も可能になります。逆に結果が出ない場合、三年経過した時点で、教育の国に強制送還されてしまいます。人生のやり直しです。経済の国では最低でも六十歳までは労働を提供することになります。個々人の能力や生産性に応じて生涯利益目標を到達した人から希望に応じ、成熟の国への移動ができるようになり、人生の最後の時間を謳歌する国に住むことになります。

 成熟の国に入る時には、夫婦同時とは限りません。夫婦のどちらかが基準年齢に到達した場合、まだ基準年齢に達していないパートナーは、成熟の国へとついていく選択と経済の国に残る選択の両方が可能です。その時の年齢にもよるでしょうが、生涯利益目標を達成していることは前提なので、年が離れた夫婦の場合はしばらくは別れて住むことにもなりうるのです。そして、この期間が長いほど離婚の確率も高くなっています。この辺りの制度改革が現在は問題とされているところです。

 地球全体が変化してしまい物理的な貨幣は無くなってしまいました。それに加え、経済の国と成熟の国以外ではお金を使うことがありません。全ては税金で賄われているのです。税金は経済の国と成熟の国の住民が収めますが、成熟の国は全員が年金による生活者であるため、一定額が徴収されます。しかしながら経済の国では生み出した利益に応じた累進課税となっています。税金の天井はありません。この制度は経済の国での労働意欲に影響しており、残念ながら意欲は高くありません。

 人類は地球全体で一丸となって生き残る方法を考え、成長に合わせた国での維持へと変化しました。この政策により、疫病や犯罪は激減し人類には念願だった「平和」な時間が訪れたのです。しかし、人類は平和を手に入れたのですが進化をみずから手放してしまいました。進化の鍵はAIに委ねてしまったのです。次の百年をどう過ごしていくかというのは全てAIが計画し、そのために必要なものが経済の国で生み出されています。そしてその教訓が教科書となって教育の国で次の世代に教えられるのです。そのサイクルから抜け出した成熟の国では、知識の共有が推進され組み合わせの知識がAIによって吟味され、次の世代に繋げるべき応用知識なのかが判断され教科書に反映されるのです。

 果たして人々は生き生きと生活ができているのでしょうか。「欲」をある程度人間から取り除いた結果で得られた「平和」の中で、何となく面白味のない世界へとなっているのではないかということに気づいた成熟の国の住民がいました。その住民は、直接提案してもAIによって削除されてしまうだろうと考え、小説という形で人々に訴えることにしました。すると瞬く間にベストセラーとなり、国を超えて認知されるようになったのです。慌てたAIは速やかに情報を消し去ろうと試みましたが、クローンが多すぎてイタチごっこです。そのうちに、同調する人々が経済の国から多く立ち上がり、一触即発の状態にまでなってしまいました。

 こうして平和な日々を手に入れていた人間だったのに、それ自体を嫌って立ちあがったのです。この後は、人間対AIの戦争へと発展し、今もなお戦闘状態は継続しているようです。


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