7月4日 パソコンお直しの日 【SS】PCは友達
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- パソコンお直しの日
東京都新宿区西新宿に本社を置き、中古パソコンの販売や、パソコンの修理などを行う株式会社松陰が制定。
日付は「な(7)お(0)し(4)」(直し)と読む語呂合わせから。「もったいない」という考え方や、壊れたものを直す「修理」という考え方を広めることが目的。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。この日を中心に子どもから大人までを対象にノートパソコンの修理教室などを行う。
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【SS】PCは友達
今ではパソコンはかなり進歩した。最初の頃の記憶媒体はフロッピィディスクと呼ばれたペラペラな紙のような媒体が主流だったのに、それがいつの間にか内臓ハードディスクに代わり、いまではSSDが一般的になっている。また、それを補完するかのようにUSBメモリもいろんな用途で利用されるようになった。そうは言っても常に新しいパソコンに交換し続けるのもコスト的に大変である。
リモートからできる仕事についた圭介という若者がいた。どうにも人と対面するのが苦手なようである。仕事の傍らにはエッセイや小説を書いていた。かなり長年愛用していたノートパソコンが少しずつ調子悪くなり、誤魔化しながら利用していたものの、遂に真っ暗い画面のまま立ち上がらなくなってしまったのだ。仕方なく、スマホを使って家から一番近い修理ができる店を調べてメール連絡をしてみた。すると、今日持ち込んでくれれば空いているから即対応ができるとのこと。圭介は急いでパソコンを持っていくことにした。自宅から歩いて二十分くらいの距離だ。
パソコンを修理してくれる店は、路地裏の目立たない場所にあった。グーグル・マップを見ながら来ても結構わかりにくい場所だった。歩きながら「こんなところにパソコン修理の店なんてあるのだろうか」と思っていたがなんとか辿り着くことができホッとした。しかし、看板も出ていないしパソコンを取り扱っているようには見えない、古い長屋のような家だった。おそるおそる玄関の引き戸の扉を開けて入った。
「ごめんください。こちらは『どんな状態でも必ず直るパソコン修理屋さん』でしょうか」
「いらっしゃいませ。はい、そうです。長い店名で申し訳ありません。先程メールにて問い合わせられた方でしょうか」
「はい、そうです。このノートパソコンなんですけど。電源すら入らなくなりました。なんとかなるものなのでしょうか」
「お任せください。私の手にかかれば、これまで以上のパソコンとして蘇ることを保証しますよ。これから作業にかかりますから、あちらの椅子にかけてお待ちください」
「あの、料金はどのくらいかかりますか。あんまり持ち合わせがないんですけど」
「それもご心配無用ですよ。一律三千円です。それ以上いただくことはありません」
「えっ、三千円のみ、ですか。助かりますが余計に心配になりました。部品代とかも入ってるんですよね」
「ははは、部品代もコミコミですよ。では修理が終わって、もし気に入らなかった場合は、申し出てください。修理前の状態に戻して差し上げますから、他のお店に持って行かれてもいいですよ」
こう言って対応した店員はノートパソコンを持って店の奥の方に消えていった。なんとなく手持ち無沙汰になったので、スマホで店の口コミをチェックしようと思い検索してみた。すると店名すら検索できない。圭介はますます不安になってきた。修理が始まってから十分くらい経っている。今ならまだ間に合うかもしれないと思い、椅子から立ち上がった。その時、ニコニコしながら店員さんがノートパソコンを抱えて戻ってきた。
「お待たせしました。お客様のノートパソコンは綺麗に直りましたよ」
「えっ、こんな短時間で直ったんですか」
「私が修理した中では、時間がかかった方ですよ。ハハハ。さあ、確認してみてください」
圭介は慌ててノートパソコンを開き、電源を入れてみた。すると懐かしいデスクトップの画面が現れ、書きかけだった文章も再表示されている。完全に復活したように見えた。圭介はこんなに早く修理ができるとは思わなかったので、原因を聞いてみた。
「あのー、結局どこが壊れていたのでしょうか」
「全体的に老朽化してましたね。でも丁寧に年を重ねられてきたので10年以上利用されているパソコンとしてはいい状態だったと思います。なので、全ての部品の細胞を活性化させ若返らせたんですよ。そうしたら、生まれ変わってこんなに元気になりました」
「え、細胞を活性化して生まれ変わって元気になった? なんか理解できませんが、とにかくありがとうございました。じゃあ、これ修理代です。本当に三千円でいいんでいすか」
「はい、その代わり、これからも大切に仲良く友達のように使ってやってくださいね」
こうして、調子を取り戻したノートパソコンを持って自宅に帰った。修理には、数日かかるだろうと思っていただけに、嬉しくて仕方なかった。家に帰り早速電源を接続して充電しようとしたら、電源コードを接続する前にノートパソコンは起動を始めた。圭介はまだバッテリー残量があったんだなと思い、立ち上がる画面を見ていた。その速度が以前よりはるかに早い。書きかけの文章をスクロールしてみると、読めないほどのスピードでスクロールする。動画を再生してみる。なんと4K動画がめちゃめちゃ綺麗に再生される。4K対応のディスブレーではないはずだがとても綺麗だ。どこからどう見ても、最新パソコンのような速さと美しさ、いやそれ以上の速さと美しさだった。しかもファイルの保存も今まではハードディスクに書き込むのに一呼吸置くくらいの時間がかかっていたのが、クリックした瞬間に終了するようにまでなっていた。しばらくすると音声が聞こえてきた。
「初めまして、圭介さん。私はコンタといいます。今日から圭介さんの一番の友達として私を使ってください。私はいろんなアドバイスで圭介さんを助けてあげられますよ。困ったことが起きたらいつでもコンタと言って呼び出してください。ファイル探しやネット検索だけでなく、文章チェックなどもできますから。それと話し相手にもなれます。これからどうぞよろしくお願いします」
こうして不思議な修理屋さんで蘇った、いや生まれ変わったノートパソコンのコンタと圭介は友達のような関係を築いていったそうだ。圭介の人生も大きく変わることは間違い無いだろう。
了
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