【SS 1月5日】シンデレラの日
【今日は何の日ショートショート】- シンデレラの日
1956年(昭和31年)の今日、アメリカ合衆国の女優グレース・ケリーとモナコ公国のレーニエ3世が婚約を発表した。女優グレース・ケリーは人気絶頂の最中に、結婚式を挙げ引退。このシンデレラストーリーは世界中の話題になった。
【SS】縁の基金と玉の輿
「なぁ、お富、俺と夫婦になってくれないかい」
「清吉さん、私では、釣り合いがとれません。無理に決まってます」
お富は村で一番貧乏な家で育った今年十八になる娘だった。とても貧乏な家で育ったとは思えないくらい品があった。一方、清吉は、村で一番大金持ちの庄屋の跡取り息子だったが、お富とは逆でとても品のある振る舞いをできない、わがままな二十才の青年だった。
この二人には村人も知らない生い立ちが隠されていた。お富が育った村一番の貧乏な家というのは、実は人助けをすることを良しとする家訓を実直に守り抜いて生きている家だった。それゆえ、村人だろうが旅人だろうが困っている人がいたら自分たちの生活を守るよりも前に困っている人たちを何とかして助けてしまう家族だったのだ。当たり前だが、そんな生活をしていると財をなすことなど不可能だ。しかしその代わりに人からの信頼だけは村一番になっていた。相談事がある人は野菜や魚を持ってこの家にやってくる光景が後をたたなかった。おかげでお金はないが日々の食事に困ることはなかったほどだ。
そんな家庭で育ったお富は実の子供ではなく養子だった。隣村の庄屋で生まれた一番幼い子が女子だということで庄屋の家には必要がないと判断し貰い手を探していた。その時貧乏なこの家族の評判を聞きつけた隣村の庄屋の主人は、持参金と共にお富を養子として渡したのだった。だが、お富の義父となった貧乏な男は持参金は貰わなかった。ただ「この子が成長して嫁入りする際には援助してやってほしい」ということだけを書きつけにして残していたのである。
一方この村の庄屋の跡取り息子の清吉も、実の子ではなかった。なかなか男子に恵まれない庄屋の主人は、村で一番貧乏な家に男子が生まれたばかりだと聞きつけ、早速養子にすべく交渉に行き「ご主人、このままでは庄屋の跡取りがいなくなってしまう。村人のために生まれたての男子を私たちの養子にさせてくれないだろうか」とお願いした。人のいい貧乏な家の主人は、自分たちの息子が村の役に立つのならと喜んで養子に出してくれたのだった。
出自を考えるとお富のほうが由緒ある血筋であり、清吉は貧乏な家の息子に過ぎなかった。それが運命の悪戯で知り合った時には逆の立場になっていたのだ。もちろん、二人とも聞かされていないので知るはずもなかった。
清吉が自分の父親に恐る恐るお富との結婚を許してくれと頼みにいくと、意外にも父親は大いに喜んでくれたのだった。清吉はまずはこっぴどく怒られることを覚悟していただけに拍子抜けした。実は、清吉の父親は隣村の庄屋と仲が良くお富のことを聞かされていたのだった。庄屋はあの人のいい貧乏な家が縁を作ってくれたに違いないと考え、嬉しくなっていた。清吉は狐に摘まれた思い出はあったが喜んだ。
しばらくすると二人の結婚が村中の話題になった。その時、清吉を取り上げたお産婆さんが全ての経緯を知っていたため、嬉しさのあまり、二人の秘密を話してしまい村中が知ることとなった。不思議な縁が結びつけたけれど、実際にはどっちが本当の玉の輿なんだということで話題が話題をよび、お上の耳にまで入ることとなった。
村をあげての祝言の準備も整い始めていたが、貧乏な家には金がない。しかし、村人や隣の庄屋、これまで助けて来た人々、それにお上からも溢れんばかりのお祝い金が寄せられ、一瞬にしてお富は大金持ちになってしまった。
新しく夫婦となった清吉とお富は集まったお祝い金を使うことなく質素な祝言に徹して済ませると基金をつくり、村の内外を問わず困っている人を支援するために動き出した。それは「縁の基金」と名付けられ若い夫婦が始め、その後、二人の子から子へと代々受け継がれていくこととなった。もちろん、二人の生い立ちの話も同時に語り継がれ続けている。人を信頼し寄り添って生きていくことが人として一番重要なんだという教えがいつしか「縁の基金」のポリシーとなっている。
了
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